第7話:残された違和感
はじめまして、Orrochi_Zです。
インドネシア出身の新人作家です。
本作は、私にとって初めての小説作品となります。
まだ至らない点もあるかと思いますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
駅のアトリウムは、やっと静かになった。
ぶつかる音もない。
モンスターの足音も消えた。
ただ、細かいデータのかけらが
ゆっくり空中に漂っているだけ。
アーランはその場に立ったまま。
呼吸はまだ重い。
剣も、まだ下ろしていない。
本能が落ち着かない。
何かが、おかしい。
さっき倒したボスの残骸。
その粒子が少しずつ消えていく。
でも—
遅い。
まるで、ここがまだ
「処理されてない」みたいだった。
「…変だな」
動こうとした、その時。
「そんなに構えなくていいよ」
声。
アーランはすぐ振り向く。
反射。
体が自然に構えに入る。
剣はまだ発動中。
先端に小さな炎が揺れている。
割れた柱の近く。
そこに—
誰かいる。
女。
影の中から、音もなく出てくる。
足取りが軽い。
歩いてるのかどうかも分からないくらい。
【リナ — レベル22】
【クラス:アサシン】
アーランはすぐには話さない。
視線だけ向ける。
「さっきから見てたのか?」
リナは少し笑う。
「外でグール倒してたとこからね」
柱にもたれかかる。
「どうせすぐ死ぬと思ってた」
少し間を置く。
「…でも、勝ったね」
アーランは特に反応しない。
「で?」
「安心して。あんたのアイテムに興味はないよ」
リナの視線が少し下がる。
首元。
「…でも、それは気になる」
アーランはすぐに手をやる。
反射。
リナが軽く笑う。
「大丈夫。後ろから取るタイプじゃない」
少し静かになる。
リナがまた口を開く。
「この世界さ…まだシステム信じてる?」
アーランの目が細くなる。
「どういう意味だ」
リナはすぐには答えない。
周りを見る。
レール。壁。ボスの残り。
「気づいてる?」
声が少し低くなる。
「さっき…システム、遅れてた」
アーランは黙る。
思い出す。
警告表示。
「…ああ」
リナは続ける。
「データが読めない時がある」
「登録されてないやつも出てくる」
アーランを見る。
「それに…」
「システム自体が、分かってない時もある」
空気が少し重くなる。
アーランが口を開く。
「つまり…壊れてるってことか?」
リナは肩をすくめる。
「壊れてる、っていうより」
少し笑う。
「書き換えられてる感じかな」
アーランは黙る。
頭に浮かぶ。
母親。
NPCの表示。
「…」
リナが一歩下がる。
ゆっくり。
「まあいいや。通りすがり」
軽く跳ぶ。
レールの上。
音はしない。
「ステータスの数字、信じすぎないほうがいいよ」
体が少しずつ薄くなる。
「それと…」
一瞬止まる。
「人間でいたいなら」
目が少し変わる。
「ルールに飲まれるな」
次の瞬間—
消えた。
アーランはすぐに感知を使う。
反応なし。
完全に消えてる。
最初からいなかったみたいに。
「…なんだあいつ」
小さく息を吐く。
やっと剣を下ろす。
その瞬間。
一気に体が重くなる。
疲れが来る。
遅れて。
アーランはゆっくり動く。
ドロップを回収する。
急がない。
ゴールド。
素材。
細かいアイテム。
そして—
鍵。
【アクセスキー:メンテナンスルーム】
少しだけ見る。
「メンテナンス…」
インベントリへ。
そのまま座る。
柱にもたれる。
やっと休める。
システムを開く。
軽く確認するだけのつもりだった。
でも—
目が止まる。
【安全区域外の時間:10日13時間】
「…は?」
瞬きをする。
「十日?」
そんなにいたか?
体感と合わない。
全部が早すぎる。
アーランは上を見る。
壊れた天井。
その向こう。
ジャカルタの空。
でも—
知ってる空じゃない。
暗い。
動かない。
たまに紫の光。
でも音はない。
静かすぎる。
アーランはしばらく動かない。
ふと—
母親の顔が浮かぶ。
「…くそ」
立ち上がる。
「長すぎた」
ここにいる理由はない。
リナの話も—
後でいい。
今は—
戻る。
アーランは出口へ向かう。
歩く速度が上がる。
外の空気はさらに冷たい。
インベントリから石を取り出す。
迷わない。
「戻る」
光が出る。
体が消える。
その後—
誰もいない駅。
壊れたモニターが一瞬だけ光る。
赤い文字。
【Integration Progress: 75%】
【Reality Deletion: Ongoing】
すぐに消える。
何もなかったみたいに。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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