第6話:剣と魔法の舞踏 ― 駅にて
はじめまして、Orrochi_Zです。
インドネシア出身の新人作家です。
本作は、私にとって初めての小説作品となります。
まだ至らない点もあるかと思いますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
回想)
街を出る直前。
アーランは、少しだけ立ち止まった。
革袋をテーブルに置く。
中のコインがぶつかる音が響く。
食料も入っている。
「母さん、聞いてくれ…」
肩に手を置く。
反応は薄い。
疲れている。
目もどこか遠い。
まだ、この世界を理解できていない顔だった。
「ここに金がある。家賃と食料分だ」
「キッチンのストレージも埋めてある。食べ物は腐らない…このシステムならな」
少し間が空く。
伝わっているかは分からない。
それでも続ける。
「このままここにいても…意味がない」
言葉が一度止まる。
「NPCのままだと…時間の問題だ」
視線は逸らさない。
「システムに消されるか…他のプレイヤーに潰される」
静かになる。
「俺は外に出る」
拳が少しだけ強くなる。
「なんで世界がこうなったのか…調べる」
「ジャカルタが、なんでこんな風になったのか」
小さく息を吐く。
「…できれば、帰る方法も探す」
もし無理でも—
生き残る。
短く抱きしめる。
ぎこちない。
でも、それでいい。
ドアが閉まる。
その瞬間—
アーランの表情が変わる。
冷たい。
迷いがない。
廊下を歩く。
インベントリを開く。
中は満タンだ。
ポーション。
スクロール。
素材。
全部、準備済み。
元ハードコアプレイヤーとして、ひとつだけ分かっている。
強さを決めるのはレベルじゃない。
情報だ。
「レアスポーン…」
小さく呟く。
ゲーム時代。
普通には出ないアイテムがあった。
特定の座標。
特定のタイミング。
大体は—
グリッチ。
そして今。
この世界は“同期”している。
なら—
存在する。
「ステーション…」
目が細くなる。
「絶対、何かある」
なければ—
ボス。
それで十分だ。
アーランはすぐに動いた。
スキルを発動する。
「フラッシュステップ!!」
北門を越える。
迷いはない。
街の光が後ろに消える。
空気が変わる。
重い。
冷たい。
旧市街は違う。
静かすぎる。
生気がない。
錆びた線路。
紫のマナ結晶が突き出ている。
微かに脈打っている。
アーランはすぐには奥に入らない。
分かっている。
「準備なしでボスに行くな」
(1日目)
外周を回る。
グール。
遅い。
だが硬い。
【レベルアップ】12 → 13
多くはない。
でも十分だ。
(2日目)
少し奥へ。
数が増える。
攻撃も重い。
一度、爪がかすめる。
服が裂ける。
【レベルアップ】13 → 14
【レベルアップ】14 → 15
夜。
限界に近い。
スタミナが空になる。
(3日目)
体が慣れてくる。
動きが軽い。
反応も速い。
「エレメンタル・インフュージョン:フロスト」
剣に霜が走る。
敵が遅くなる。
そこを叩く。
「マジックミサイル」
無駄が減る。
【レベルアップ】15 → 16
(4日目)
無理をする。
さらに奥へ。
危険が増える。
二回、死にかけた。
【レベルアップ】16 → 17
【レベルアップ】17 → 18
(5日目)
ほとんど休まない。
ただ狩る。
動きが自動になる。
【レベルアップ】18 → 19
(6日目)
体が限界。
動ける。
でも重い。
それでも止まらない。
【レベルアップ】19 → 20
「…十分だ」
レベル20。
強いからじゃない。
止まらなかったからだ。
(ボスエリア)
駅の内部へ入る。
天井が高い。
暗い。
中央—
赤い亀裂。
鼓動のように動く。
そして—
現れる。
【忘却の車掌 ― レベル25】
破れた制服。
ガスマスク。
鉄のハンマー。
「プレイヤー…検出…」
声が壊れている。
「チケット…提示…」
アーランは剣を構える。
「そんなもん、いらねえ」
次の瞬間—
爆音。
床が砕ける。
後ろへ跳ぶ。
心臓が跳ねる。
違う。
風を感じる。
焼けた金属の匂い。
圧が重い。
「エレメンタル・インフュージョン:ファイア」
剣が燃える。
フラッシュステップ。
背後へ。
斬る。
手応え。
だが—
反撃が速い。
蹴り。
吹き飛ぶ。
【HP:65%】
「…痛ぇな」
これはゲームじゃない。
ポーションを飲む。
立ち上がる。
「パターンが違う…」
読めない。
なら—
崩す。
手を上げる。
石を投げる。
五つ。
空中。
斬る。
爆発。
ボスが揺れる。
チャンス。
マナを集める。
無理やり。
「スペルブレード・ノヴァ」
突き刺す。
光が爆発する。
建物が揺れる。
そして—
静寂。
崩壊。
コインが落ちる。
箱も一つ。
【レベルアップ】20 → 21
【レベルアップ】21 → 22
アーランは座り込む。
呼吸が荒い。
箱を開ける。
青い光。
【古代魔力回路】
消費マナ -30%
詠唱速度 +20%
「…やっとか」
装備する。
体が軽い。
「これで…」
少しだけ笑う。
「エクリプスの基準なんて…どうでもいい」
その時。
拍手。
ゆっくり。
振り向く。
女がいる。
影から出てくる。
音がしない。
【リナ ― レベル22】
【アサシン】
「面白いね」
首を傾ける。
「ソロでボス討伐?それもソードマジシャンで?」
視線が鋭い。
「アンタ…何者?」
アーランは答えない。
ただ—
見ている。
そして初めて—
理解する。
ここはもう—
一人じゃない。
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