愛と正義のひーろー 2 ・・・さくら書く
・・・人生、ノリと勢いって大事だと思うのよ。うん。
「愛と正義の大根! うーまん!」
華麗に滑るように例の決めポーズを取った、ある意味モロばれな、自称正義の味方。
そのつややかな髪の流れと、にっこり笑顔の白い歯の煌き。
マスクを脱ぎさり片手に抱えると、すちゃっとマイクを手に取った。
それを、遠巻きに見ている一般人。
中でも。
感極まってふるふるしている美貌の少女。七宮の雪那。・・・腕を組んで祈りのポーズで見るべきではないような気がする。
大きな黒い瞳をきらっきらさせて見つめる、橘の恵美。・・・その顔には大きく書かれた尊敬の文字が見えた気がする。帰って来い。
そして、月色の瞳に、やってみたい、とでか書きさせた、大月の千尋の姿があった。・・・いいのか、それで。
そんな三人のそばで、どう突っ込もうかと頭を抱える、理性の人。橘の理恵の姿。
「・・・と、言うわけで、大根の大根における大根のための正義の味方を、募集しまーす!」
何が「・・・と、言うわけ」なのか分からんが、大根ウーマンもとい、果堅が宣言した。
マイクを持つ手に力がこもっているのがよく分かった。
・・・てか、小指が立ってるよ、果堅・・・。
「「「はいっ!」」」
すかさず三人の少女が挙手をした。なんか、アレだ。ノリは限定品残り一個だ、どうだい嬢ちゃんってな感じだ。
「ちょ、まってえええっ!!!何、大根のための正義の味方って!」
八百屋買収か? はたまた農家攻略か?
それとも、おでん? おでん作るのか? そもそも大根に正義ってあるのか!?
理恵がすかさず待ったをかけるが、誰も聞いちゃいねえ。
「果堅ちゃん、私ね、お米が大好きなの! 大根のふくよかな味わいを抱きしめられるのはお米しかないわ! ご飯ぶらぼーなのよ、ご飯があれば生きていける!」
「じゃ、ライスパンマンね」
「ーーーそっち!?」
いいの? 本当に好いの、雪那! しかもなんか色かぶってるんですけど! ・・・と、理恵がすかさず突っ込んだ。・・・しかし、雪那のいい笑顔に撃沈した。
「あ、じゃあ、私は何が良いかな? 大根をがっちり支えて良い味を引き出せる食材って・・・」
恵美が小首をかしげて考え込む。・・・戻って来い! 違う世界に引き込まれちゃいけない!と、理恵が恵美を確保するより前に。
「おでんって、意外とトマト合うのよね・・・」
ぽつりと千尋が言った。湯剥きしたトマトを出汁で煮ると、おいしいのだ!
「じゃ、トマトレッド、ちいちゃんね!」
さわやかな笑顔で果堅が言い切った。
「わあい!」
千尋がいい笑顔で飛び上がる。
「ーーー某パンマンまるで関係なしっ!」
飛び上がって喜ぶ千尋に、すかさず突っ込む理恵。しかし誰も聞いていないのは間違いなし。
「はい! 私は、卵が大好きです!」
そこで恵美がびしっと手を上げて答えた。
とてもいい生徒の見本だ。手を上げる角度もすばらしい。
突っ込もうとした理恵だったが・・・。
「・・・つるりとした肌の麗しさ。中身の濃厚さ加減、だしを含んで蕩けるあたり、恵美のためにある食材よねっ!」
すかさず恵美のフォローに向かってしまう馬鹿だった。
「理恵ちゃんも卵大好きだもんね!」
さわやかな笑顔を向ける恵美に、理恵は骨抜き状態で微笑んだ。
「「「突っ込みはないのっ!?」」」
そんな理恵に、突っ込んでみた果堅、雪那、千尋だった。・・・が。
理恵はいい笑顔で返すばかり。妹良ければすべて良いのだろう・・・。
「えー・・・と・・・。じゃあ、恵美はたまごパンマンで」
「わあ!」
「三者三様結局白い・・・」
どこか疲れたように呟いた理恵、影が薄い。そして、果堅が止めを刺した。
「・・・と、言うわけで、理恵ちゃんはこんぶブラックで」
なぜ、昆布ー!!!
*********
「では、正義の味方会議を始めます」
議長の席に座った果堅が、伊達めがねをくいっと、指で持ち上げた。結構似合う・・・。
「なぜめがね・・・。しかもなんで、誰も突っ込まないの」
一人さびしく理恵が突っ込むも、わくわくしているのを隠しきれない雪那、恵美、千尋。
「おでんの主役は?」
「大根!」「たまご!」「がんも!」「こんにゃくは外せない」「締めのご飯」
「・・・そもそも、おでんに締めのご飯は無いわ、雪那・・・」
ふっとシニカルに笑った果堅が、やれやれとばかりに首を振った。
「おでんイズミラクル! おでんの具材って大根を食べるための出汁でしかないと思わなくて? 大根を称えるための群衆のようなモノよ!」
如何に大根に具材それぞれの味を染み込ませるかで、味が決まるといっても過言ではないわ!
「大根、ああ、大根。煮て良し、焼いて良し、生もいける、しかも、おろしたら最高なんて・・・魅惑の食材よね・・・世界中の人々に大根のあふれる愛をもたらすには、どうしたらいいかしら?」
・・・議題ってそれかよ。
「やっぱり、魅惑のブロマイド? ああ、DVDって手があるわね。あふれる色気を振りまくアイドル(大根)の、あんなポーズやこんなポーズ。ああ、いいわ。魅惑の腰つき、滑らかな足のライン・・・!」
・・・果堅が目くるめく大根の世界に行ってしまったので、残された四人で大根談義を始めた。
「今年の作付け大根の苗を増やしたの。果堅ちゃんのおかげで良い苗が手に入ったのよねー」
「雪那が手がけると、すばらしく美味しくなるものねー」
「私も手伝ったよ」
「わたしもー」
恵美と千尋がにこやかに笑う。
それを幸せそうに見つめる理恵だが・・・なんか眼がやばい。美少女観察が大好きなのが丸分かり。
「あのね、今バイトに行ってる幼稚園の子供たちに食育かねて寸劇見せてあげたいんだけど」
恵美がそう切り出した。
「朝、パン一枚とかおにぎりだけって子供が結構いるのよね・・・」
その言葉に三人がふんふんと頷きあった。
「朝って忙しいからねー・・・。ご飯作るお母さんも大変なのよね」
「そうだね。お母さんの代わりに何品か作ろうと思っても大変で」
「しかも毎朝だもん」
「その点おでんは万能っっ!」
「「「果堅、ちゃん・・・」」」
戻ってきたのか!
「前日ことこと煮込んで翌朝のおでん! お出汁の良くしみた大根! がんも! こんにゃく! 魅惑のたまご! はんぺんは白と黒、諸説あるけど私は黒が良い! 朝ごはんのお供に!」
「は・・・はんぺんは白だよ!」
すかさず千尋が突っ込んだ。が。
「黒はんぺん! ここは譲れない! そして牛筋に、鰹節!」
果堅が反論する。
小魚ミンチの黒いはんぺんは庶民の味方なの!
しかも良い出汁が出る上に、美容にも頭脳にも良いと、良いとこ尽くめなのよ!
「うう、反論できなあい・・・」
プルプルする千尋の肩をそっと抱き、理恵は呟いた。
「・・・大根絡みで果堅に張り合っちゃダメだよ、ちいちゃん・・・」
「りーえーちゃああん」
がしっと抱き合う二人。
えぐえぐしている千尋を慰めつつ、理恵の頭にはお花が咲いていた。美少女の涙! 悶える!
抱きしめたこの体、しなやかさがたまらん!・・・でも、やはり、恵美一番。
恵美の抱き心地の良さったら、言葉に言い表せないくらいなのよー!
柔らかさといい、弾力と言い、くすぐれば華がほころぶように身悶えて・・・ああ。
と、どっか違う世界に片足入り込んだ理恵の耳に、果堅の悲鳴が!
「果堅!?」
渦中の果堅は、黒のボンデージの美女にふん縛られていた・・・。
その右手に拘束の鞭。締め上げ絶妙。
高笑いする美女。その姿はまさしく女王様!
「あ、あれ・・・明燐さん?」
清楚な中に禁断の華の匂いを隠し持つ、絶世の美女。・・・でも、理恵の瞳には恵美の次。
その美女の傍らで、芋虫状態になった果堅を幸せそうに見つめる、清楚な美貌の少女。指をわきわきさせながら、迫る相手は・・・果堅。
「「「「え」」」」
あの果堅が引いていた。
「ナキ顔も、なきゴエモ、ヤッパリソソル・・・」
じゅる。
気のせいではなかったら、確かによだれをすすり上げる音を耳にした。気のせいで無かったら!!!激しく気のせいだと思いたいんだ、誰か気のせいだって言ってええっ!!!
「・・・今のこの子・・・?」
なぜに獲物を品定めするまなざしで、果堅を見て、よだれをたらすのだ! 獲物?獲物なの?
ものすごく大好物を前にした、肉食獣の魂の煌きに感じるのは気のせいだよね!
で、で、でも吐息が限りなくピンクだ。
まなざしも、指先も、なめずる舌のほのかな赤さも。
悶える腰つきは、どこか違う対象物件に施行すべき、最終兵器だろう! 年端も行かない少女に向けるべきまなざしではない!
とんでもなく、淫靡だった。
それはまさしく、淫華。
滴るような淫猥の微笑みを向け、玉英は微笑んだ。
「オニイサマダケ、ズルイ・・・。ワタシモ、かじゅト、イイコトシタイ」
「エミいいいっ!!!聞いちゃダメエエっ!!!」
理恵が慌てて愛しい妹の耳をふさいだ。
「ぁ、じゃあ・・・真っ白でウサギさんみたいに可愛いから、こんにゃくホワイトで」
「ホヘ?」
雪那・・・恐ろしい子!
理恵が固まり、千尋が大きなはてなマークを製造し、恵美が理恵に確保された中。
ニコニコ笑う雪那と、ぐるぐる巻きの果堅を抱きしめて微笑む玉英の姿があった。
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・・・えーと・・・。
大雪さん・・・果堅が絡むと、どこまでも白っぽい美少女戦隊になるようだよ・・・。
次回!
美少女戦隊に忍び寄る、黒い罠!
萩波は愛しの果堅を奪えるのか! 閣下は恵美を理恵から奪えるのか! ボケをかます美少女達に、正論は効かないぞ!
果堅奪還を目指す、鬼畜王に対抗するボケレンジャーの活躍や如何に!
・・・いや、ない。ない。