愛と正義のひーろー :さくら書く
お久しぶりです、さてさて、大雪様の許可も頂きましたのでお送りいたします。
オモテ読者様には、なんじゃこれ、誰?ってかんじでしょうか。ただ今裏で萌え中の、辣腕執事×天然農ギャルお嬢様です。えちぃなことに至るまでは結構普通の二人なので、オモテでも良いでしょ、と。
そして、「愛と正義のヒーロー、大根・ウーマン!」・・・このせりふは是非とも、某コマーシャル、大○うーまんのノリとポーズで、脳内製作お願いいたします。
・・・ある日、榊は積もりに積もっていた言葉をぶつける事にした。
彼の魅惑のお嬢様に。
「お嬢様・・・今日という今日は白黒つけて頂きます」
「なぁに?」
雪那の華のような笑顔に、一瞬、榊原 亮がひるんだ。
しかしだ!
榊は意を決して指を指した。びしっと。
「あれです! あれは一体なんですか!」
「大根の妖精さんです」
きっぱりと雪那は言い切った。そりゃもう完膚無きほどにきっぱりと。
雪那の畑では、緑のマントを羽織った、青みがかった黒髮と勿忘草色の瞳の少女が、ちょこまか走り回っていた。
「発芽の時期になるとどこからとも無くやって来て、愛と正義と肥料を撒いて行ってくれるの。なんて農家思いの妖精さん・・・」
頬に手を当てうっとりと畑を眺める雪那嬢。
ダメだ。
お嬢様ダメだ。
どっか遠い所に行ってしまった、彼の愛しのお嬢様を取り戻すべく、榊は雪那を抱きしめようとした。
「あ。雪那ちゃーん!」
「果堅ちゃん、こんにちはー」
榊は盛大にこけた。
美形のずっこけた姿はなかなか見られない代物だ。
それが、栄華を誇る榊原の影の統帥と呼ばれる亮なら、なおの事。
「・・・お嬢様、お知り合いなので・・・?」
苦虫噛んでもここまで苦い顔はすまい。
「果堅ちゃんって言う名前なの。でもあの格好をしているときは、愛と正義の大根ウーマンで、大根の妖精さんなの」
「大根・・・うーまん・・・」
ねー、っとお互いに小首を傾げつつ確認しあう二人の少女。榊は気が遠くなりそうだった。
少し丈の短めの白いワンピースドレスに緑の太目のベルトを付け、むき出しの太腿を緑のロングブーツに包み込んだ小柄な少女。艶やかな髪を背中に流し、煌く瞳は生命に溢れている。
小さい顔、小さい手足、なのに、大地にドンと根を張るたくましさ!
(なるほど、トモダチか)
榊にとって未来の嫁(決定)である雪那の友人関係は把握しておいて損は無い。
だから、にこやかに裏の無い笑顔を心がけ、子供に接してみたものの・・・。
「・・・雪那ちゃん、困った事されてない?」
榊の笑顔をじーっと見た後に、果堅と呼ばれた少女は雪那に近寄り、そう聞いたのだ。
(・・・ほぅ。人の表ではなく裏をも見れるという逸材か)
十六になったばかりの雪那を案じて助言を買って出た少女に、榊は目を見張った。
人は見かけによらないと言うが、初対面の笑顔をうさんくさいものと感じられたのは雪那に続き、二人目だ。
この子供、侮れない。
侮れないのだが・・・なんだろう、この脱力感を呼ぶその格好は・・・。
その格好は如何なものかと思うのだ。
胸の大きな「大根」の文字とか、さりげなく翻るマントに、大根マークが刺繍されてる事とか。
・・・ってか、誰が縫ったんだ。いや、間違いなくこの子が作ったんだろうけど、完成度、異様に高くないか・・・?
某パンマンでこの衣装使ったら、しっくりなじむ事請け合い。某パンマンですら霞むくらいの強烈さだ。
それを見たよい子の皆さんが、大うけする事も請合っちゃおう。
それほどの力作。
すばらしい衣装だった。
「お嬢様を心配してくださってありがとうございます。ですが、ご心配なきよう。この榊、命に代えてもお嬢様をお守りいたしますから」
この娘は、お嬢様のお友達!
ならば最上級の礼をもって接するのが執事の役目!
榊原の亮が、誠心誠意を込めて接待して見せます!たとえ、某パンマンの着ぐるみ着てたって、魅惑の笑顔で勤めましょう!
慎ましやかな笑顔を心がけ、微笑んだ男をじっと見ていた少女は。
「・・・ん。まあ、雪那ちゃんが良いなら良いか・・・」
そう言ってため息をついた。
達観したような物の見方は老成した人のもの。
榊原 亮は眉を寄せた。
「果堅さま、あなたは一体・・・?」
底が見えない少女だった。
覗き込んでも深すぎて底がまったく見えない。かと言って、深遠の淵に立つような危うさも無く、何処か風のようで。
温かい風のような少女だった。
他者をいたわる風を持つ、稀有な少女。
だが。
榊の問いかけに雪那が言い切った。
「大根ウーマンで、大根の妖精さんよね?」
そして渦中の果堅も。
「愛と正義の味方、大根・ウーマン!(某大○ウーマンのポーズ望む)・・・ちなみに大根は永遠のヒーローで、創世記の神様よ! 大根があったから、この世界は存在するの!」
「・・・いや、そんな話はありません」
榊は痛む頭を我慢して呟いたが、誰も聞いてくれない。
そしてそして、・・・榊は聞き捨てならない言葉を耳にする。
「なんてこと!私の夫みたいに、あなたも大根のすばらしいパワーを信じないというのね!」
・・・・・・。
何と言った。この子供。
・・・今、何と言った?
「・・・おっと・・・? ってちょっと待ったあっっ!!!・・・いや、いや、聞き間違いだろう、俺! はは、は、落ち着け俺!」
榊原の亮のあせった顔は早々拝めるもんじゃない。魔界の某魔王閣下並みのレア物だ。
だらだら流れる汗。
驚愕の顔のまま渦中の大根ウーマンを見つめる榊。・・・ヘンな図だ。
「榊、果堅ちゃんは結婚してますよ?」
そんな榊の心も知らず、あっさりと雪那が呟いた衝撃の事実に、再度、榊は固まった。
「はい。結婚して、浮気されて、逃げ回ってましたけど、夫に捕まって監禁されてました。ちなみに助けてくれたのは大根マンです!」
もっと悲惨な境遇をそう言い切った果堅は強かった。
「・・・・・・助けてくれたはずの大根マンは?」
「最近あってません!」
(・・・夫に粛清されたな!)
端的な言葉の裏に隠された真実を、覗いてしまった榊だった。
頭抱えて唸る。
「・・・助けてくれた大根マンさんが帰ってくるまで、この私が大根ウーマンとして、困ってる農家さんを助けてあげようかなって・・・」
「果堅ちゃん!」
「雪那ちゃん!」
少女二人が固い抱擁を酌み交わしている間、榊原の亮さんは、遠い目で何処か遠くを見つめていた。
果堅と雪那が某パンマンのテーマソングを歌いながら畑を整えていく。その側で、なまあたたかい目で眺める榊の姿があったとか。
残された榊の前を風が一つ、巻き起こり、小柄な少女の後を追っていく。
風に乗って響いた声は。
・・・果堅。
・・・果堅。見つけたら今度こそ逃がさない。
との声に、亮が反応した。
きっと今も何処かで少女の夫が、少女を探しているのだろう。
黒髪を右手でざっとかきあげると、榊原 亮は空中に毒づいた。
「・・・あほなこと言ってる前に、きりきり仕事して迎えに来い!そうでなかったら、そのうち恋人は大根マンとか言い出すぞ!」
「あら、榊、果堅の口癖よく知ってますね?」
「・・・ま、さか、本当に大根が恋人・・・?」
魅惑の愛しいお嬢様の一言に、秀麗な榊が固まった。
がちょーんっで、よろよろってな感じだ。(どんなだ)
「はい。果堅ちゃんはそう言ってますけど?寝るときも一緒なんですって」
榊原 亮のお嬢様は可愛らしく麗しく、美しい。
その笑顔を見て、はじめて頭が痛くなった榊原の亮さんだった。
・・・とりあえず、家のお嬢様は野菜と同衾する趣味が無くてよかった、と榊が思った事は内緒である。
おしまい!
あー。楽しかった。さて許可を下さった大雪様に感謝いたします。
また悪い虫が疼きましたら、お送りいたします・・・。
・・・さ、変態の本編書かなきゃー。
べ、別に、魔王様が恵美の想像上の魔王像、聞かされて落ち込んでいるわけじゃないんだ!
恵美が望むなら、いめちぇんしようかなんて考えてないからあ!
閣下ああああっ!!!
脳内で蹲ってのの字描くのやめてよおおおお。