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愛の矢の正しい使い方 2 ・・・さくら書く

 ・・・その日、たまたま、浴室の前を通りかかった、ある意味被害者のレミレア。


 浴室内から漏れ聞こえる、艶声に、脳天かち割られた。


 しかもしかも、「やああん、にいさまあああ、だめえええ」である。


 鼻血で死ねそうな気が・・・した。

 しかもちょっびっとだけ、お花畑も垣間見た。満開の花の中で、微笑みながら手をふっているエイミールに羽が生えていた。


 ・・・いや待て、オレッ!!!


 レミレアは、すぐさま踵を返すと、羽を広げ、魔城の最上階へ飛び立った。


 窓の外から大声で叫ぶ。


 「アマレッティ様!リアナージャ様!ねえさんが襲われてる!!!」


 それも、魔王に。



 *******



 白濁した液体に塗れたエイミールが、浴室から助け出され、麗しの魔王様が、兄弟に渾身の一撃を喰らっている様を、天界、凪国の水鏡の前で、ふてくされた表情で眺めている萩波。・・・と、朱詩。

 大きく安堵している、宰相と茨戯。

 じつに対照的だ。


 「・・・よ・・・良かった・・・。突っ込まれる前で・・・」

 と、涙ながらに崩れ落ちる、宰相・明睡。

 よかったね、理性の人。

 「この危険物、燃やして良いよね?いつ誰に使われるか、怖いったらないわっ!(・・・特に自分の王が)」

 茨戯がそう言って、束になっている愛の矢を、まとめて燃やそうとして振り返る。

 「ちぇー。もう少しで大人の階段昇れるところだったのになー」

 と、水鏡をまじまじと見詰める、朱詩。

 単に、楽しければ何でも良いと、ありありの模様。

 「・・・ふん。悪運の高さがここに出るのでしょうね!!!」

 水鏡を見たまま、高笑いを上げる、萩波。

 悪運?悪運なのか? 幸運の間違いだろうっ!!!と、萩波を涙目で見上げる宰相。

 これって、ものすごーく人為的で操作的で、神という立場にありながら、なんて悪魔的な行いなんだよおおお!!!

 よほど、「がっついてる」発言が気に入らなかったんだな。(あったりまえでしょおおおお!!!)

 ・・・もうこれ以上、刺激してくれるな、魔界の王よ・・・と、黄昏も酷くなっていく。

 うちの王様の方が、どす黒くて救いようがないって思ってしまうから・・・。

 腐っても王。爛れてても王。

 ここ一番って時は、本当に頼れる凄い男なのに・・・。


 「まあ、でもこれで、もう、「がっついてる」なんて言わせませんよ!!!自分こそ、幼い妹にがつがつして、襲い掛かっているじゃありませんか!!!でもこれで、もう、エイミール嬢とのお風呂タイムはなくなりましたね!!!」

 ・・・この私ですら、果堅とお風呂に入ったのなんて、数えるほどなのに!生意気なんですよ、あの魔王!!!自分が相手に好かれているとアピールしたいのでしょうがねっ!!!


 「・・・王・・・それぐらいにしておいたほうが・・・」

 茨戯がどことなく震える声で、萩波に言った。

 だが、萩波は後ろを振り返ることなく、茨戯の言葉をスルーした。・・・振り返っておけばよかったのに・・・。

 

 「ふふ。ちょっと、ほとぼりが冷めた頃に、またまとめて撃ち込んで上げますからね!!!」

 だから、愛の矢、燃やすなんて許しませんよ、茨戯!・・・と。後ろも振り返らず茨戯に命令する萩波。


 「・・・まとめて?」


 「ええ。もちろん!あなた方が止めても私は必ずやり遂げますからね!今度は、百本と言わず、二百、三百、まとめて・・・」

 水鏡の前で上機嫌だった、萩波の顔色が、だんだんと悪くなっていった。

 ・・・いや、むしろ急降下、だ。

 知らず、汗が噴出した。


 「・・・百本、打ち込んだんだ・・・」

 へぇ。

 と、低く響く声。

 けして声高に叫んでいるでもなければ、糾弾しているわけでもない。

 ただ、事実を確認している、だけ。

 なのに、その場に居合わせた者たちの顔色が格段に悪くなっている。


 筆頭は、萩波。


 だらだらと汗。振り返るのが怖い。

 でも。

 萩波は振り返った。


 茨戯が泣きそうな顔で、「だから、そこら辺で止めとけって言ったのにぃっ」と、呟いていたが、視界の隅に追いやられていた。

 萩波が目に写すのは、最愛にして最良の妻。

 ・・・果堅だった。


 「あ、あのですね、果堅!」


 「・・・アルファーレン閣下に百本、打ち込んだから、エミーはあんな姿なのね?」


 怖い。


 あまねく魔物、魔王でさえも余裕で戦える、余裕で返り討ちにできる萩波が。


 果堅の静かな怒りに鳥肌を立てていた。・・・全身に。


 ・・・と。

 果堅が、ゆらりと踵を返し、愛の矢(・・・むしろ、欲望の矢)の束をひとつ、鷲掴みにした。


 「か・・・果堅?そそそれは、危険物だから、触らないほうが・・・」

 宰相が、勇気を振り絞り進言するが、果堅は答えない。





 「よっ」と。愛の矢の束を手に取った果堅。


 大きく振りかぶって。


 上段の構えから。


 ピッチャー(果堅)投げたああああああぁっ!!!!!


 キャッチャー(萩波)すかさずかわそうとした!が!!!


 「萩波! 私の愛がうけとれないのっ!!!」


 ああっ!


 キャッチャー、動けなあああああああいいいっ!!!

 

 およそ、三百本の愛の矢が、萩波の胸に突き刺さり、消えていった・・・。


 ふ。と不敵に笑って。


 「あ、わたし、エミーの看病に行ってくるわね。エミーが良くなるまで、帰らないから」


 にこにこと、宣言、した。



 ********



 それって・・・。


 この状態で禁欲しろと・・・?


 悲嘆にくれた眼差しで、萩波は最後の望みとばかりに、溢れる色気で、果堅に手を差し伸べる。

 愛の矢なんぞ、なくたって。

 毎日、毎晩、寝ても覚めても、果堅ばかりの彼。

 

 果堅禁断症状?


 それこそ冗談じゃない。


 「か、果堅!」


 「がっつかないのよね? アルファーレン閣下は、ケダモノになったけど、「私の」萩波なら、・・・だいじょうぶよ!ねえ?」

 

 伸ばされた手の先で、果堅がニコヤカに微笑んで。


 「いってきます」


 魔界へ向けて転移した。


 ・・・余談だが、悲嘆にくれる萩波の顔を、誰もまともに見ることはできなかったと言う。


 ・・・もっと余談だけど、欲望に身悶えしながら、萩波は、地獄のオアズケを生き抜いた。


 ・・・果堅の名を呼ぶその哀れさは、筆舌にしがたいものだったと言う・・・。


 えー・・・。

 あー・・・。

 自業自得・・・?ぁ、怖い、怖い。


 おしまい!

 ・・・えー・・・。

 私が書くと、どんなに色男で、頭が良くて、鬼畜男子でも。

 ヘタレになることが判明いたしました!!!

 萩波好きの皆様。

 ・・・ごめんなさい・・・。

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