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ゲテモノ食い:愛と正義のひーろーバージョン・・・さくら書く

大雪様の活動報告を読んで、さくら、間違った方向に燃え上がりました。


 わくわくした顔でチヒロと雪那が扉を凝視していた。


 ここは、愛と正義のひーろー本部。・・・学校の理事長室だ。(提供したのか、閣下・・・)


 青銀の魔王閣下は、恵美の新しい一面を見ることが出来てご満悦のようだ。・・・顔面一ミリたりとて動いていないが、楽しそうだし、嬉しそうなのは間違いない。


 仕事そっちのけで(・・・)じっくりと恵美特性のネルドリップコーヒーを堪能している。(ブランデー入り)


 天は高く澄んでいて、風はあおく煌いている。


 時折、耳に届くは天使の声(恵美おんりー)、鼻腔を揺らすは薫り高いコーヒーの香り。


 カップから顔を上げれば、やわらかく微笑む最愛の女性。


 天国しあわせだ。(閣下の生きる場所って魔界だったんじゃ・・・げふげふ)


 至福の意味を正しく噛み締めながら、コーヒーを楽しむ魔王だった。


 睫揺らせば、恵美がすかさずお代わりを入れてくれる。コーヒーのお供は、甘さ控えめの木苺のパイだった。


 「ねーねーまだかなー、新しい先生・・・」

 チヒロが、ばかップルを横目で観察しつつ、隣の雪那に声をかけた。手持ち無沙汰だ。

 今日は果堅が新しい先生を連れてやってくると言っていたから、彼女たちはこうして待っているのだが・・・。目のやり場に困る。


 始終チヒロと雪那そっちのけで、魔王閣下は恵美しか見てない。


 「あ、理恵ちゃんの声!・・・と、果堅ちゃんの声だよー」


 その恵美が顔を上げた。双子の姉の声は、離れていても耳に届くらしい。

 そのぱっと輝いた笑顔を見て、青銀の魔王の眉が一ミリ動いた。・・・少し妬いているらしい。


 いつもなら、恵美をひざ上抱っこして、至福のコーヒータイム。


 その後は可愛い恵美のしどけない姿を堪能し、心行くまで喘がせる筈だったが、恵美のたっての願いならば、聞かねばならぬ。・・・理事長室などいつでも解放してやるとも!(ただし恵美限定でな)


 でも、こうして生き生きとした笑顔を見せてくれるのならば、この時間すら愛しいと、そう思うのだ。


 「・・・恵美」

 「はい。にいさま?」

 「行っておいで、皆が待っている」

 「はい!」

 幸せにすると誓った。

 お前が、こうして笑っていてくれるなら、多少のオアズケくらい、乗り越える。


 

 *******



 「遠いところ、ご足労いただき、ありがとうございます。さあ、どうぞ」


 先導する理恵の後に女性が続く。一見、儚げな、たおやかな風情の女性だった。


 「紹介するね、涼雪って言うの」

 にこにこする果堅が、その女性を前に押し出した。


 恥ずかしそうに女性が笑う。

 「はじめまして、みなさま、涼雪です。今日は、講義などというには、おこがましい特技ですが、皆様に教授できれば幸いだと思ってまいりました」


 微笑は柔らかく、そこにいるだけで、場を和らげることの出来る雰囲気を持った女性だった。


 和む。


 なんて素晴らしい癒し系!


 「・・・そこからは私が、一通り説明しますわ、ひーろーの皆様」

 「め、めめ明燐!」

 果堅が焦って立ち上がった。

 どうやら、明燐に黙って王宮を抜けてきたらしい。


 「・・・あ、あの、ね、これはね」

 慌てて、明燐に言い訳している姿は可憐。いじらしいその姿に、誰もがノックダウンするだろう。


 ふ、と明燐が笑った。

 女王様の微笑に、果堅が固まった。側にいたチヒロも恵美も理恵も同じだ。

 ・・・どこ吹く風なのは雪那だけだった。


 「解ってますわ。果堅・・・。涼雪が心配だったのでしょう? 私も、そうですわ(これ以上いらんオトメン増やされちゃ困りますから! お兄様のためにも!)」


 ・・・果堅いるところにこの人あり。


 果堅妃の懐刀の呼び声高い明燐が、怪しく微笑み、胸を張リ、・・・となりで玉英が縄を握りしめた(←あ)


 「うわあああん!」

 「・・・シんパイシタ、かジュ・・・」

 メヲハナシタライナインダもノ。

 ・・・ついでに果堅は逃げそこなって、玉英にぐるぐるにされていた。いつのまに・・・。


 ぎゅっと縄を引っ張って、片足を果堅の背中に乗っけた玉英の姿は、それはまさしく、獲ったどー!のポーズ!

 しかも、ぐいぐい引き寄せた果堅を、当たり前のように玉英は抱きしめ、撫でくりまわし始めた。

 なでなで、もみもみ、さわさわさわ。

 「あ、やん。きゃあ、あふ」

 

 ・・・絶世の美女なのにー・・・。

 ・・・美の女神が恥じらい目を伏せる程の美貌の少女なのにー・・・。

 ・・・しかも、その気がなくても勝手に戦利品にしては争う男のせいで傾国の美女と名高いのにー・・・。


 眼中に入るのは、果堅だけってあんた・・・。


 「きゃ、あんっ!」

 美の女神に言い寄られる、果堅は、見るからに平平凡凡だった。見ているこっちがうらやましい限りだ。でも。美の女神をここまで惹きつける何かが果堅にはあるんだ。

 

 ・・・そう。理知的な勿忘草の瞳の美しさとか、魂の気高さとか、踏まれても立ち上がる不屈の精神力とか、究極の癒し系マスコット的愛らしさ、対ロリコンの最終兵器的何かが(萩波限定)!


 ・・・しかし、つるんぺたんな胸をこれでもかと揉みしだかれている果堅にとって、そんな危険物は自分の中から消し去りたいだろう。

 「玉、英。も、あ、だめぇ・・・」

 しかも玉英、すげえテクニシャンらしいよ!

 あの果堅が、喘いでいる事実を目にしたら、萩波はきっと悔しがるだろう。

 しかし果堅も、悔しかった。

 なぜって? 自分のまな板を見下ろして、何度思っただろう・・・!


 「・・・男だったら、男だったら良かったのにぃぃぃ!」


 そしたら、心置きなく、この目の前で揺れる美乳を揉みしだくのにぃ!

 ぽよんぽよんとたわわに実った美味しそうな果実。先端のピンクも甘そうな、ふにゅっと揉みやすそうな・・・いいえ!!! 

 「・・・う、うらやましくなんか・・・うらやましくなんかぁっ!」


 「なんて不毛な・・・」

 理恵は果堅のためにそっと涙をこぼした。

 貧乳の苦しみを知るものは、貧乳を持つものにしか解らない。


 「ふええええん、あたしが、あたしが男に生まれなかったばっかりにぃっ!玉英が変態になっちゃったよおおおお!」


 イヤ、男に生まれてたらあの独占欲の塊が黙ってないだろー・・・。


 「ウフ。ウフふ。イケナイヒト・・・ニゲる、ユルサなイ」

 「に、逃げるなんて滅相もない! に、にーげーてーなーいー!」

 プルプルプルと、果堅が首を振る。

 そんな果堅に、怪しい微笑をみせて、玉英さんは言いきった!

 「アサモヒるモ、ヨルも、トイれモ、おフロモ、モチロン、ニイサマトのエッチノトキモ、フタリハハナレチャイケなイノ」

 「プライベートは!?」

 「ナイ」(きっぱり)

 「んのおおおおおおおっっっ」


 果堅の切ない悲鳴が、理事長室に響き渡った。


 ・・・ねぇ、誰か、止めてやろうよ・・・。



 ******



 「・・・で、その後は、実地もかねて実践し、午後はその獲物を囲んで、親睦会といたしましょう」


 えぐえぐ泣いている果堅を尻目に、涼雪は美少女ひーろーに説明をしていた。

 (無視ですか!)(玉英サマとの触れあいは、何よりも優先させております!それがたとえ、王との一夜であっても!)(それって、玉英サマが邪魔してるって言うんじゃ・・・)(姉妹愛ですわ!)


 「ええ、と、質問・・・。その、退治するときに使用する獲物は?」

 チヒロがおずおずと手を上げた。

 その質問に涼雪は、我が意を得たりと微笑み、言いきった!

 「素手です!」


 ・・・しばらくお待ちください・・・。


 「す・・・「「「「「素手ぇぇっっ!?」」」」」


 素っ頓狂な声が響いた。


 「そうです! 凪国後宮に勤める女官たちは皆、素手で羆を倒せます!(どどーん!)」


 美少女ヒーローたちの間を、何か熱い熱風が通り過ぎて行った・・・。


 チヒロと恵美と雪那の涼雪を見つめる目線に「尊敬」の二文字が加わった瞬間だった。


 「「「す・・・すてき・・・おねえさま・・・」」」


 口々に涼雪を絶賛する少女たち。心なしか、頬が高潮し、まるで事後のような色っぽさをかもし出していた。


 「・・・恵美。わたしだって、素手で熊くらい仕留められるぞ」


 「にいさまもすごい!」


 涼雪と張ってどうするんですか、閣下・・・。



 *********



 そ ん で 。


 風光明媚な山間に、爆音が鳴り響いた。南無南無。


 「・・・うりゃあああああっっ!」

 向かってきた羆を、涼雪はその細い腰からは考えられないくらいの踏ん張りを見せ、見事投げ飛ばした。

 すかさず、明燐が仰向けに転がった羆の腹部に、こぶしを叩き込む。

 さらに、ゆらりと立ち上がった涼雪が・・・。

 「・・・どっせええええええいいっっ!」

 羆の首を脇で抱え、脳天から地面にたたき付けた。

 「ナイスフォローでしたわ、明燐さま!」

 「涼雪の技は、いつみても素晴らしいわね!」

 良い笑顔で両手を打ち付けあい、お互いの健闘を讃えつつ、笑いあう美女たちが、額に浮かんだ汗をぬぐった。

 「熊の肝はお薬として取っておきましょうね」

 「熊の手のひら食べるの、久しぶりですわねー♪」

 

 ・・・実に良いシーンだ。


 実に良いシーンなんだけど、現実から目を逸らしたくなるのは何故だろう・・・? と、アルファーレンは思った。

 あのふたりを敵に回すことだけはすまいと、こっそり胸に誓った閣下だった。


 「ふうちゃん!」

 チヒロが風の精霊にお願いして獲物を追い込んでいく。

 草原のあちこちで、野太い声が木霊する。

 「風の障壁!」

 恵美が黄金の魔方陣を構築し、展開する。風がみるみる壁を築きあげ、袋小路を作っていった。


 ・・・その袋小路の真ん中で、理恵が金縛りにあっていた。


 「む、むむ、無理、です・・・」

 でかいガマと巨大な蛇と理恵で出来上がった、三竦みの図。

 理恵は迫り来る恐怖と戦いながら、やっとやっと、それだけを呟いた。

 ガマが理恵を見上げる。

 蛇が鎌首を持ち上げた。

 「無理です!これを素手で捕まえるなんて! 絶対、無理!」

 ・・・仕舞いに泣きが入った模様だ。


 「あらあら」

 雪那がさくさくと三竦みの中に入っていった。

 赤い縄で輪を作り、かるーく振り回して・・・あら、不思議。

 きゅっと締められた大ガマ蛙と、とぐろを巻いて応戦している蛇を捕まえた。

 シャーっと開かれた蛇の顎をぎゅっと握って、にっこり。

 「もう、大丈夫ですよ?」

 ・・・助太刀は、可憐なお嬢様。

 しかもなんか手馴れている、この事実。


 「サスガ、ししょー」

 玉英さんが、果堅を抱いたまま呟いた。

 「獲物は現地調達。これは当たり前ですわ。働かざるもの食うべからず! 労働の対価として美味しい食卓があるのですから!」

 「そ・・・そうですよね! 後は獲物を如何に美味しく料理するかにかかってますよね!」

 「そのとおりです!」


 エー、本部ー、本部ー、涼雪さんと、雪那嬢が意気投合した模様ー。ふたりして頬を染め上げながら、なにやら話し込んでおりますがー・・・止めなくて良いのかー本部長おおゆきさんー!!!


 「雪那さん、罠なんかいかがです?」

 「罠! 得意です。裏山で鹿を取ったことがあります! 後、裏の川でなまずにどじょうに・・・」

 「まああ、すごい!」

 うなぎもどじょうも、美味しいのよねー。ああ、なつかしい・・・。

 捕りに行きましょうか?

 大なまずが、かかった日は手放しで喜びました!

 白身のお魚なんで、から揚げがこれまた美味しくて・・・!


 本部ー! 少女ふたりが川に罠かついで向かったぞー!


 

 *********



 「・・・ウシガエルって、おいしいんだね・・・」

 あれだけ怖がって泣いた相手が、綺麗に裁かれて串刺し。複雑だ。

 「でも、これ、おいしいねー」

 恵美がにこにこ笑ってかぶりついている。

 もっしゃもっしゃ食べながら、瞳は次の串焼きを選んでいる。程よく焼きあがった串を、アルファーレンが恵美に差し出した。

 「あ、にいさま、ありがとー!」

 きらっきらした笑顔を向けられ、孤高の魔王閣下は淡く微笑んだ。

 水かきが口の端から出てようとも構わないのは、萩波の果堅に対する行動とおんなじだ。

 「恵美、ついてる」

 アルファーレンは恵美の頬に唇を落とした。

 「・・・蛙食べててもひるまないのか、さすが、魔王様・・・!」

 理恵はしみじみと呟いた。


 「熊なべが出来たわよー!」


 涼雪の声が空に響く。

 ふと空を見上げるアルファーレンにつられて、みんなが空を見上げた。

 「・・・来た、か」


 果堅あるところに、この神人あり。


 萩波の訪れを、狭い胸の片隅で、もしかして喜んでいるのか、わたしは?


 アルファーレンは口の端で、笑った。


 「・・・萩波。土産はなんだ」

 女神たちが身体を張って収穫した珍味ばかりだ。

 相応のものをよこさん限りは、宴に混ぜんぞ。(偉そうだな、閣下・・・)

 傲岸不遜にふんぞり返ってアルファーレンが、にやりと笑う。


 ふふん、と笑って萩波が差し出したものは・・・。


 恵美の生着替え写真(スクール水着含む)


 「座れ。上座はこっちだ」





 

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