『バレンタインデー戦線 女神の祝福は誰の手に?!』
大雪様からありがたくも、企画をいただきました。
『バレンタインデー戦線 女神の祝福は誰の手に?!』
バレンタインデーは女の子にとって意中の男性を射止めるイベントデー
しかし、既に意中の男性とラブラブな女の子にとっては、二人の仲を深める日
間違っても
「蒼麗!天界ではバレンタインデーは彼氏を毒殺する日なのか?!」
なんて言う日ではない筈だ。
蒼麗は自分に縋り付くアルファーレンと、居間に広がる惨状を見た。
「はい、あ~ん」
「ひいぃぃぃっ! リア兄上助けてえぇぇぇっ!」
「アマレッティ! 潔く逝くのじゃ!」
「榊、しっかりしてえぇぇ!」
「レミレア、レミレアしっかり!」
「くくくくくく」
「オウランがおかしくなっちゃった!」
屍累々。
既に手遅れなのが、榊に修にオウランと魔王軍の半分の方達。
現在災難に遭いかけているのが、アマレッティにレイ・テッド。
難を逃れているが、被災すること確実なのが、凪国の面々とリアナージャ。
ポリポリと大根チョコレートを囓る果竪はほっておき、蒼麗は元凶を止めに向った。
「蒼花、いい加減にしなさい!」
アマレッティの口の中に異物を押し込む双子の妹の手が止った。
テーブルの上に載っているチョコレート。
しかし、それはもはやチョコレートと言っていいのか疑問である。
「これは何?」
「マグロの目玉をチョコでコーティングしたマグロチョコですわ!」
ご丁寧に、ギョロリとした目玉が上に向くように並べられているそれは、周囲がチョコレートに包まれていた。
「これは?」
「ただのチョコレートです」
嘘だ!目と鼻と口があるだろ!人面チョコか?!
『ギョギョギギギギギギギョオオオオ!』
しかも鳴いている。
「煩いですわ」
その口に押し込められたのは、チョコフォンデュ用の苺。
それで止らなければ、棍棒で殴られる謎の物体――いや、もはや生命体だ、それは。
「で、その紅いドロドロとした物体は?」
まるで火山のマグマを思わせる泡立つ液体。
チョコフォンデュ用の鍋に入っているが、まさか。
「チョコフォンデュ用のチョコレートですわ。隠し味としてハバネロが投入されてます」
蒼麗は当たってしまった嫌な予感に両手で顔を覆った。
というか、ちょっと待って。
「どうして蒼花に料理をさせたんですか!」
あれだけ蒼花に料理をさせるなと厳しく御願いした筈だ。
蒼花の料理はある意味兵器だ。
それも、最終兵器である。
料理と兵器がイコールで結ばさる。
武器がなければ料理をすればいい。
「蒼花の手料理を食べてどれだけの神がICU送りになったと思ってるんですか!」
因みに、最初の犠牲者は父だった。
蒼麗の形相に恐れをなした最強の男達。
しかし彼等にも言い分はあった。
「いや、気づいたらもう料理をしてて」
「止めようとしたが、爆発が何度も起きてて近寄れず」
「恵美達に止めてもらおうと思ったが、なんて刺激的な料理なの!! と一緒に料理する始末で」
「とりあえず身の危険を感じて逃げた」
気持ちはよく分かった。
「蒼花もどうして料理しちゃったの!」
「したかったんだもん!」
単純明快な答えが返ってきた。
「天界では絶対料理出来ないし、しようとしたら煩い護衛達が止めにかかるし」
当たり前だ。天界が消滅する。
蒼花の料理は時に核融合すら引き起こす。
「だから、人間界なら良いかなって」
「御願いだからやめて、本気でやめて」
人間界が消し飛ぶ。
「蒼麗ちゃん!」
「雪那さん?」
「レミレア君が痙攣起こしました!」
……解毒剤カモン!!
蒼麗は慌てて解毒剤を取りに家に帰る羽目になった。
「で、どうしましょうか」
雪那の問いかけに、悩む美少女達とオマケ一人。
勿論、美少女達は恵美と理恵とチヒロで、オマケは果竪だった。
明日はバレンタインデー
改めてチョコレートを用意しようとした途端、涙ながらに愛する人に止められた彼女達は来るべきイベントをどうしようかと悩んだ。
「今更チョコレートは無理だものね」
蒼花によってチョコレート恐怖症にされたアルファーレン達は、今でも夢で魘されるという。
「じゃあ大根贈ろう!」
果竪の提案に、一同は思わず頷きかけたが、すぐに我に返る。
「それならお米がいいわ」
とは、雪那姫のお言葉。
「わたし、トマトがいいな」
チヒロ姫の提案。
「じゃあ卵!」
笑顔の恵美姫。
「……それ、おでんの材料じゃ……」
疲れ切った理恵が痛々しかった。
「あらら、悩んでるわね~」
「「「「「蒼花ちゃん(様)?!」」」」」
声が聞こえたかと思えば、美少女の集いに舞い降りる絶世の美少女。
正に麗しき天女の様に現れた蒼花は、にこやかに言った。
「いつもは甘いバレンタインデー。だけど、毎年甘いのも胸焼けするってものよ」
確かに
「恋は甘いだけじゃ駄目。時にはピリリとしたスパイスも必要であれば、ビターのように苦さも必要」
なるほど
「そう、恋はスリルとサスペンスとホラー! って事で、今回はそれをテーマにするのよ!!」
何か最後が余計だった気がする
ってか、もはや決定?
戸惑う雪那達を余所に、蒼花は勝手にバレンタインデーの催し物を決めた。
「で、これか?」
アルファーレンは頭が痛かった。
というか、此処に集められた全ての者達が同じ心境だろう。
オウランと榊は呆れ、魔王軍は青ざめ、修すらも溜息をつく。
凪国メンバーに至っては苦笑の一言。
「恋に障害はつきものよ!」
にこやかに言い放つ蒼花が計画した催し物。
それは
『開催! 恋の障害物競走! 愛する人の為に命を捨てましょう、寧ろ捨てろ! 勿論、ホラー要素もばっちりです』
という天幕が掲げられたそれに全てが集約されていた。
「まずは、この森からスタートでしょう」
「いやいや待て待て」
「私達に何をさせる気ですか!」
制止するアルファーレン
問い詰める榊
見事な連携プレーだった
「簡単な事よ。愛する恋人への愛を競い合うの」
は?
「だから、何をさせるつもりなんだ」
「戦い」
蒼花は顔に似合わず闘争心が強かった。
「女は強くて頼もしい相手に恋するものよ」
蒼花の言葉に男達が力強く納得した。
「だから、その強さと頼もしさを判定するの」
最初は頼もしさ
「第一の試験内容は、くじ引きで決まった相手と共に最後までゴールしよう!」
「そのままだな」
「少しはひねりを聞かせた方がいいぞ」
「なんか言ったかこの小童」
オウランの胸ぐらを掴む蒼花。
見た目も実年齢も十二才だが、成長の遅い神である事から、実年齢は数百才。
ああ、だから態度もでかいのかとオウランは思った。
「それで、ゴールって、何処か走ったりするのか?」
「レミレア、いい質問だわ。但し、走るだけじゃないわよ。私達がこの日の為に用意した障害物ありまくりのエリア内を巡って、それぞれに設置されたスタンプを押してくるの」
「ああ、スタンプラリーみたいなものか」
「スタンプの場所は全部で七カ所ね。但し、それぞれにボスがいるから、簡単には取れないわよ~」
「ふっ……この私に敵う者がいればの話だな」
「ボスの一人はお姉様だから」
空気が文字通り凍り付いた。
「き、き、ききききき貴様! それは不公平だ!」
魔王が不公平を責める様に、何か違う気がする魔王軍の皆様
「でね」
「無視をするな!」
「そのスタンプラリーを突破した人が、第二試験に進めるのよ。そう、第二試験は強さ。純粋に強さを競い合う武道会を設定してます!」
戦う相手は、スタンプラリーを制覇した他の相手。
「ルールは簡単。相手を倒す事。但し、相手を殺したり、一生残る後遺症を残した場合は強制排除しますのでご注意を」
「お前にしては優しい提案だな」
「私としては死のうが構わないんだけど、お姉様が言うんだもん」
その場に居た全員が納得した。
「で、戦ってどうするんだ」
「勿論勝ち残ってもらいます。勝者五人までに商品がありますから」
「商品だと?」
「聖女四人と大根王妃」
男達の目が鋭さを増した。
「因みに順位の上から自由に相手を選べるから。思い人と違った相手を選んでも良いし」
蒼花の言葉に男達が笑う。
違う相手を選ぶなど有り得ない。
たとえどれほどの美少女がそこに居ようとも、自分はただ一人を――
「あ、これには他の魔族や神々、異世界やレイ・テッドさんの学校の生徒など大勢の方々も強制参加させるから」
「「「「「鬼だろ!!」」」」」
余計な事してんじゃねぇ!!と怒鳴れば、蒼花はフッと笑った。
「恋に障害はつきものよ。愛しい相手を奪われないようせいぜい頑張る事ね」
「公主……」
「ああ、最初の試験では恵美達も参加する事になってるから」
「わ、私達も良いんですか?!」
勝手に賞品にされて不安がっていた恵美達が目を輝かせる。
「ええ。但し、くじ引きだから、誰と組むか分からないけど。貴方達にあたる相手の分だけは、特別なクジにしてあるから」
頑張って引け
聖女の様な美貌が悪魔に見える
「萩波、お前からも何か言え」
「無理ですよ、アルファーレン。蒼花様はああなったらもう止りません」
「ってか、そんなに大量の参加者が居たら一日で終らないんじゃ」
「だから一週間かけて行うつもりよ」
「はあ?!」
「スタンプラリーの会場が馬鹿みたいに広いから、確実に二日はかかるでしょう? で、お姉様が休養日を中にいれろって言うから一日いれて、その後に武道会を始めたらその位かかるわよ」
「宿泊場所はどうするんだ」
「人間界の神々に御願いして用意してもらったから大丈夫」
「……人間界で行うのか?」
「勿論よ。一番中立で良いでしょう?」
天界では魔族が、魔界では神々がその空気に拒まれ、本来の実力をふるえない。
しかし、人間界は成長途中だが、魔と神、邪と聖が共存しまじわる無限の可能性を持った世界である。どんな世界にも変貌出来る特性を持つ。
「って事だから、会場としては問題はない筈よ」
「しかし、人間達の目が」
突然魔族や神々や異世界の者達が大挙してやって来れば驚くだろう。
「そこは、人間界の霊能力一族とか力ある一族に協力してもらうから大丈夫。それに、そもそも会場自体が人里から遠く離れた場所だし」
そこにあった町はもうない。
「まあ、実はそこが邪と聖のバランスが崩れた怪奇現象盛りだくさん、悪霊も魑魅魍魎も怨霊もたっぷりと出現する心霊場所だから、スタンプラリーのついでに除霊してもらおうなんて考えてないわよ」
いや、考えてるだろう
「因みに、審判役や、スタンプラリーの際の係は誰が行うんだ?」
「勿論、私達よ」
「私達?」
「私とお姉様、あとはお姉様のクラスの人達に、十二王家の子供達が数人」
それに加えて、お姉様の学校の教師陣。
「が、中心になってはいるけど、その他に公平を期して、今現在愛する恋人、妻、夫とラブラブで他の女性に一切目が向かない安全地帯の方達を魔界、異世界、人間界の力在る一族から抜粋して取り入れてるわ」
確かに、恵美達にいかがわしい思いを抱く相手ならば公平にはならないだろう。
その点で言えば、蒼花達も適正があると言える。
「あとは、どんな暴力にも屈指ない相手ね。こういう時って、根回しとか色々起こるからね」
「なるほど」
「ってかさ、蒼麗ちゃんがボスの一人ってひどすぎないか?」
修が不満げに言う。
これがどこぞの男であれば容赦なく攻撃出来るが、全世界の美女、美少女、美幼女の味方である自分には到底出来ない。
「大丈夫ですよ、修さん。私美人じゃないんで攻撃できます」
蒼麗の言葉に、アルファーレンを始めとした男達から蔑んだ眼差しで見下された。
「って違うだろ!」
「最低だわ修兄ちゃん」
「理恵酷い!」
理恵に泣きつく修だが、すぐに他の男達に引き離される。
「しかし修の言うことももっともだ。変えられないのか?」
「あら? 恐怖の魔王様ともあろう方が、戦う前から怖じ気づくの?」
「貴様……」
「ああ、言っておくけど、お姉様は力無し。術の一切は使えない事を考慮する事。そしてここが一番重要」
蒼花を中心に、ブラックホールが出来た。
「お姉様にかすり傷一つでもつけようものなら、即失格だから」
もはや横暴以外の何ものでもない。
そうして、『天界の華』こと蒼花によって、大会は開催された。
――続く




