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愛の矢の正しい使い方・・・大雪様著

その日、萩波はまた魔界に行こうとしたところを果竪に咎められた。


「萩波、あんまり魔界に行くと向こうに迷惑だよ」


そう言うので、取り敢えず行くのは止めた。

代わりに、使者と謁見していると、使者からこんなものを貰った



「その昔、下界で人の縁を司る神々が使っていた矢です」


それは愛の矢と呼ばれるもので、これに刺さったものは相手に好意を抱くという。

他にも色々と矢を貰った萩波はしばし考えた。


「明睡、貴方倦怠期に入っていません?」

「人の恋愛事情に口出しするな」


笑顔だが青筋を浮かべる明睡に、萩波はちっと舌打ちする。


「俺が倦怠期に入っていたらどうするつもりだと?」

「とりあえず、試しに打ってみたいと思いまして」


明睡が無言で萩波の胸倉を掴む。


「大丈夫ですよ。一時的にムラムラっとくるぐらいですから」

「愛の矢だろう、それは!!」

「全ての愛の基本は肉欲から来ますので。そもそも愛の営みは子孫を育む為のものですから」


言葉を囁くだけでは子供はできませんよ――確かに正論だが、こいつが言うとイラっとするのは何故だろう?


簡単だ。他人に愛の矢を使おうとするからだ。


「他人で試すな!!」

「では他の方に使います」

「だから使うなって言ってるだろうがぁ!!」


宰相が怒り狂ったので、とりあえず仕舞っておくことにした。



それから数日後の事である。


果竪がエイミールに贈り物をしたいと言った。

しかし、送り先は魔界なので届けても大丈夫かどうか確認が必要である。

とりあえず、アルファーレン達が何をしているのか確認するべく水鏡で見る事にした。


「普通に通信しろよ」

「着拒否されるので」


その言葉に宰相が黄昏れようと、茨戯がプライバシーはどうしたのかと問いかけても総無視。

横で楽しそうに同意する朱詩の応援を背に受け、萩波は術を放った。


「さて、またエイミール姫を思って下半身を疼かせているのやら」


が、水鏡にはなんとアルファーレンとエイミールが湯船に浸かっている姿が見えた。

嬉しそうに微笑むエイミールとは反対に、愛する少女の裸に身もだえしながらも必死に冷静さを保とうとする麗しき魔王様。

互いに白い裸体を密着させ、きっと魔王様の股間の一物は爆発寸前。

白濁した湯だから幸いだが、それが天に向かってそそり立っているのはもはや考えるまでもない。


キャッキャッと喜ぶエイミールを抱き締めながら、必死に自分を保とうとするアルファーレン。


「ああいう顔するぐらいなのにどうして一緒に入るんだか」

「アタシ、あの魔王は絶対ドMだと思うのよ、好きな人限定で」


手が出せないくせに、自ら欲望の箍が外れそうになるような場所に身を置く。

あれをドMと言わずして何というのか。



「おや?知らなかったんですか?魔王陛下は隠れヘタレだという事を」


偉大なる魔界の王をヘタレと呼べるのは世界広しといえど萩波ぐらいだろう。

そんな萩波はアルファーレンから公開鬼畜と呼ばれている。


「しかし、なんという事でしょうねえ」

「何がだよ」

「愛しい少女と裸になりつつ何もしないなんてあり得ない事ではないですか」

「裸になる度に何かあったら困るだろ。なら、お前は性欲過多の貴族の夫人に押し倒された時――」


ドスっと、宰相の横に突き刺さる水の刃。

宰相は悟った。これ以上言えば確実に殺られる――と。


「裸にも関わらず、愛の営みイベントがないのは痛ましい事ですよね?」


愛の営みイベント?!


「い、いや、あのね、萩波。アタシ達、愛とか縁とか司る神じゃないしぃ~」

「能力に国境はありません」


いやいやあるだろう!!

自分達は炎水家に仕える国の中でも主に水を司る一族だろう!!

国名が凪なんだから、絶対水関係だろう!!後は風もそうだけど。


いつもは萩波並にどす黒い宰相と茨戯。

しかしそれでも微かな良心の訴えを聞き入れなんとか萩波を止めようとした。


しかし――


「あんまり煩いと――恋人寝取って後宮に放り込みますよ?」


その瞬間、宰相と茨戯は堕ちた。


宰相はおのが妻を守る為に、茨戯はようやく訪れた春の象徴たるおのが恋人を守る為にアルファーレンを犠牲にする事を決めた。

そうして萩波心底ありがた迷惑の行動をする。


「で、詳しくは何をする気?」

「実はこの前、愛の矢というもの貰ったんですよ」


手近なところで宰相に使おうとして全力拒否されたが。


「ちょっと!!いくら何でも愛の矢を使うのはやめなさいよ!!それって人の心を弄ぶ最悪なものよ」

「そうだぞ!あんな幼い少女に使うなんて」

「いえ、使うのは魔王閣下にですよ。ああ、この特にムラムラッと来るのを使って差し上げましょうか」


と呟いた瞬間、萩波はその矢を水鏡にエースのピッチャー顔負けの時速250㌔の速さで投げつける。それは水鏡を通り、アルファーレンへと突き刺さった。


「ひぃぃぃぃっ!!」

「人様になんてご迷惑をっ!!」


宰相達も十分に鬼畜で唯我独尊だが、萩波に比べればまだ常識がある。

彼らは主の暴挙に目をむき悲鳴をあげる。


その間にも、水鏡の中ではアルファーレンがエイミールに迫りその白い肌に舌を這わせる。



だが――



『はっ!エイミール、すまんっ!!私はなんて事を!!』

『お、お兄様、エミーはそんな』


全力で理性を取り戻したアルファーレンに宰相達は心の中で感動の涙を流した。

一方、萩波が鋭く舌打ちする。


「愛の矢がささりながらも理性を取り戻すとは素晴らしい」


いや、あれは愛とかのレベルじゃないだろう。

どう考えても欲望の矢だろう。


「けれど私は負けませんよ。これを私への挑戦と受け取り打ち勝ってくれましょう」


いや、これ以上人様への迷惑は止めてくれ。

しかし、そんな宰相達の絶叫も萩波には届かない。


これは、以前にアルファーレンにがっついていると言われた恨みも入っているのかもしれない。


「ふっ……獣のようにがっつきなさい!!」

「馬鹿!!それ以上矢を使ったら目も当てられないことにっ」

「愛の営みじゃなくて野獣のように相手に襲いかかるわよ!!」


そもそも、一人に使うべく矢は一本。

一本あればそれだけで十分過ぎるほどだ。

なのに、それ以上使うとなれば相手の愛レベルもとい欲望レベルは凄まじい事になる。

下手をすればあの小さなエイミール姫の体は壊れてしまう。


「考えなおせ、萩波!!」

「まだ戻れるわよ!!」


アルファーレン獣計画の阻止に尽力する宰相と茨戯。

そんな二人に萩波は花のように微笑んだ。


「万事オーケーです」


萩波は愛?の矢を百本束にしてアルファーレンへとぶちこんだ。


そして――


『私のものになれ即座に子を孕めぇぇ!!』

『兄様だめぇぇぇんっ!!』


水鏡に映し出されるは、野獣のようにエイミールに襲いかかるアルファーレンの姿だった。


「萩波ぁぁぁぁぁぁっ!!」

「運命です」


いや、どう考えても人為的だろうがっ!!


「運命なら仕方ないよ、二人とも~」

「朱詩、アンタも止めなさいよっ!!」


しかし、朱詩は完全に楽しむ気でいる。



『やぁぁん!!』

『私の激情を受け入れろぉぉ!!』



激しくまぐわる魔王とその妹。

妹姫の裸体に次々と咲かされる赤い華が、肌の白さとあいまって恐ろしいまでの扇情的な色香を漂わせる。


一方、まだ未成熟の体にかぶりつく魔王の色香はその数百倍に膨れあがり、妹姫を酔わせる。



息も絶え絶えに兄に嬲られるエイミール姫。



きっと彼女は何故こんな事になっているのか全く分からないだろう。

魔族なのに眩しいほどに輝く美しい魂の持ち主の乱れ狂う姿に宰相と茨戯は涙する。



鬼だ


うちの陛下は悪魔だ



「これでもう、がっつくなんてアルファーレンには言わせませんよ」


にこやかな笑顔がどす黒く見える。

一方、鏡に映し出される激しいまぐわりは最高潮を迎える。



そして――




エイミール姫の絶叫が辺りに響き渡り、鏡は沈黙……



『きゃ、きゃあん!』

『まだ休めると思うな。私の愛はこの程度ではないぞ!!』



第二ラウンドを開始した。



「魔王閣下……よっぽど溜まってたんですね」

「我慢は体によくないよ~」


良いことしたな~と呟く萩波と朱詩に、今度こそ宰相達は言葉を失ったのだった。




終わり




きちんと復讐した萩波様(笑)

好意より悪意の方が強い気がしますね……でも、萩波なりの愛情なんですよ。

その為には愛の矢さえ活用します。

さくらの感想。

・・・萩波・・・萩波・・・(言葉にならない)

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