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【幼児化王妃の危機 雪那編 忘れられた約束②】・・・大雪様著

今回もありがとうございます!


 警察署を出発してから三十分。

 塗装された道路に沿って歩き続けた蒼麗達は、これといった問題も起きずに常葉町の町中に入った。

 近代的な町並みが広がっており、幾つもの大きな建物が見えた。


 道路脇に停まった車はあるが、走っている車は一台もない。

 ただ虚しく横断歩道や道路の信号が変わるだけだった。

 また、歩道には人影はなく、かといって建物からも人気が感じられない。


 一体どうしたのか?


 ここに住む人達はどうしてしまったのか?


 幾つもの疑問を抱えながら、蒼麗は雪那を背負いなおすと、蒼花と共に七宮家の別荘に向って歩き出した。





 暗闇の中何度も絶叫した。


 榊


 榊


 榊


 愛しい人の名を呼び叫んで走り続けた。



 助けて


 助けて


 けれど、榊は来てくれない


 どうして?


 泣きながらうずくまる雪那は、ふと自分をなでる優しい手に気づいた。


「あ……」


 目覚めた雪那が起き上がると、蒼麗のホッとした顔が見えた。


「良かった……目が覚めたんだね」

「あ……蒼麗……ちゃん」


 呟いた途端、ぶわっと涙が零れた。

 そんな自分を蒼麗が優しく抱きしめてくれる。


「大丈夫?」


 その言葉に、雪那の中であの暗闇での出来事が蘇る。

 思わず悲鳴をあげた自分に、蒼麗が優しく背中をなでてくれた。


「気を失う前の事を思い出したみたいですね」

「私……私……」

「とりあえず、何があったのか聞かせてくれますか?」


 蒼麗の言葉に、雪那はようやく安心したように微笑んだ。


 三十分後――


 自分の身に起きた事を話した雪那は、蒼麗の言葉に愕然とした。


「いや、暗いって……確かに薄暗かったですけど、地図とか本とか読めるぐらいの暗さでしたよ」


 そんな馬鹿なと雪那は思う。

 一階に居た時は、自動販売機ぐらいしか光はなく、他はようやく人影が見えるぐらいの暗さだった。


「二階は最初から明かりなんてついてなかったし……照明も壊れてなかったですよ」

「嘘……」

「それに、警察官どころか人一人居なかったですし」


 そんな事ない!!


 だって自分は警察官に襲われて、警棒で殴りかかられて……


 その時の事を思い出し、恐怖に震える雪那に蒼麗は再び背中をなでる。


「大丈夫ですよ。もし仮にその警察官がもう一度襲って来たら私が追い払いますから」

「蒼麗ちゃん……」


 ふわりと微笑む蒼麗に、雪那はようやく笑うことが出来た。


「あの……今更なんですけど、ここは……」

「あ、ここですか?雪那さん家の別荘です」

「え?!」

「あれ?違いました?七宮と表札に書いてあったんで入っちゃったんですけど」


 因みに、雪那が持っていた鍵もピッタリとあったので、ここだと思い込んだのだが、もしかしたら違うのだろうか?


「……いえ、ここです」

「雪那さん?」


 突然頭を抱えだした雪那に蒼麗が慌てて声をかける。


「どうしたんですか?」

「……いえ……大丈夫」


 本当に大丈夫?


 雪那の中でもう一人の自分が問いかける。


 蒼麗から此処が目的の別荘だと聞かされるまで、自分は此処に全く見覚えがなかった。

 なのに、ここが別荘だと聞かされた後、まるで洪水のように一気に押し寄せてきた昔の記憶。

 その記憶の中では、確かに幼い自分が家族と一緒にここに滞在していた。

 まだ母が元気だった頃の大切な記憶。


 自分が産まれた時から、毎年のように来ていた


 筈なのに――


「ああ、でもおかしな事と言えば、町全体がおかしいんですよね」

「え?何かあったんですか?」

「実は……」


 今度は蒼麗が今までのことについて説明した。


「そんな……」

「何か知りませんか?」

「わからないです……」


 知っているかと聞かれても全く分からない。

 それどころか、自分の身に起きた事だけでも理解出来ないのだ。

 黙ってしまった雪那に、蒼麗は話題を変える。


「そういえば、電気も水もガスも普通に使えたんですけど、雪那さんが連絡してくれたんですね」


 長年使っていなかった別荘。

 管理人も居ない此処は、月一での掃除を頼んでいる以外には人の出入りはなく、当然電気類は止めている。


「あ……そう……だっけ」


 頭が痛い


 そう言われればそんな事をしたような……


『わかりました、使え――』


 ああ、確かに電話をかけた……


「ただ問題は、生活に必要なものがなにもないんです」


 着替えも食料品も日用雑貨も何もない。

 かろうじて、テレビに冷蔵庫に洗濯機に暖房器具、そしてガスコンロなどがあるが、それだけだ。


「で、買い出しに行くんですけど……雪那さんも行きますか?」

「もちろんです!」


 一人で居たくないという恐怖から思いのほか強い声が出るが、蒼麗はクスクスと笑うだけだった。


「じゃあ妹にも伝えてきますから、ちょっと待ってて下さい」

「あ」


 思わず掴んだ蒼麗の腕。

 その腕を放したら、もう二度と会えないような気がしたのだ。


「……一緒に行きますか?」


 蒼麗の言葉に、雪那はコクコクと頷いた。




「お姉様とお買い物~」

「蒼花、そこまでひっつかれると歩けないし」


 三人で来たのは、郊外型のショッピングセンターだった。

 別荘からそう離れていない場所にあり、交通の便も良さそうだった。

 沢山の車が停まっているのが見える。


 しかし――


「ここにも人気がないね」


 車は沢山ある。

 しかし、人気はなく、店も電気がついていないのか薄暗かった。


「今日はお店のお休みの日でもないのに」


 雪那がギュッと蒼麗の手を握りしめる。


「どうしたんですか?」

「な、何か居た気がして……」


 蒼麗が辺りを伺うように周囲に視線を向けるが、何の気配も感じられなかった。


「何も居ないですけど」

「そ、そうかな……」


 雪那は震えながら呟く。

 別荘を出てからずっと感じていた。

 冷たく重たい空気を。


 しんと静まりかえった町


 動物の声も虫の鳴声も聞こえない、まるで遙か昔に滅びたような雰囲気を感じさせる



 死の町



 それが、この町に対する雪那のイメージだった


 本当にこんな町に自分は毎年来ていたのか?


 いや、それ以前にこの町の人達はどうしたのか?


 どうして誰も居ないのか?


 滅んだわけでもない


 だって、ここに来ると話した時に父も兄も何も言わなかった


 ただ気をつけて行きなさいと優しく言ってくれた


 もしこの町がこんな風になっていると知っていれば絶対に止めただろう


 それに、常葉町が既に廃村になっているなんていう話も聞いてない


「そう……聞いてない」


 聞いてない


 どころか、廃村になったとしてもだ


 まるでつい先ほどまで生活していたようなこの町並みは一体どうだ?


 車だってこんなにある筈がない


 何時ものように買い出しに来た、そんな感じで沢山停まっている車


 動いている信号機


 そう……まるで突然人だけが居なくなったような……そんな感じである


 町の人達は何処に行ってしまったのだろうか?


 雪那は自分の中で膨れあがる死の町というイメージに震えが止らなかった。


「――ひっ!」


 自分達の足下のすぐ側から、黒い何かがにゅぅうと出てくるのが見えた。


 あれは……何?!


 と、その時


 蒼麗がその黒い何かをぐにゃりと踏みつぶす。


「蒼麗さん?!」

「ど、どうしたんですか?」


 黒い何かは蒼麗に踏みつぶされると、悲鳴をあげながら霧散する。

 しかし、蒼麗にはその声が聞こえていないようだった。

 いや、黒いもの自体が見えていないらしい。


「あ……えっと」

「買うものが沢山あるので早くと思ったんですけど……大丈夫ですか?」

「う、うん」

「じゃあ買い出ししちゃいますか。荷物運びもありますからちゃっちゃとやっちゃいましょう」


 そうして後ろを振り返った蒼麗は、大型トラックを見上げた。

 荷物運びの足として、蒼花がどこからか持ってきたものだった。

 因みにこれを運転したのも蒼花である。

 年齢については、もはやつっこまない方が良いだろう。


「とりあえず、最初は雑貨品から買いますか」


 滞在に必要な買い出しが始まった。





 ――雪那さんが側から離れない。


(う~ん、こんなところを榊さんに見られたら怒られるな~)


 蒼麗は苦笑しながら目当ての品物をカゴの中へと入れていく。


 確かにこの町は色々とおかしい。

 町に誰も居ない。

 それも、ついさっきまで普通に暮らしていて突然消えてしまったように居ないのだ。


 もし何かあって遙か昔に放置された町であれば、既に無くなってる筈のものが多々あるのもおかしい


 そう――ライフライン


(水も電気もガスも全部生きてる)


 水道をひねれば水が出て、電化製品は全て使用可能となっている。

 ガスコンロだってきちんと火がつく。


 ただ、そこに暮らしているはずの人だけが居ないのだ


(う~ん……よく考えれば考えるほど、普通だったら恐くなるな)


 ある日突然消えてしまった町の人達。

 それも、ついさっきまで生活していたような形跡を残したまま、無人となった町。


(うん、ホラーだ)


 それを良くある事と考え怖がらない自分は、既に普通ではないのかもしれない。


「師匠の教育の賜だな~」

「師匠……」

「ええ、師匠です」


 母が懇意にしていた人。

 そして自分が家出をした後、唯一娘の意思をくみ取り庇ってくれた母。

 その母と師匠の御陰で、自分は今もこうして自由を満喫出来ている。


 って違うし!


 この外にいられる間に自分はやらなければならない事があるのだ


(青輝ちゃんとの婚約解消!)


 それを目標に自分は頑張って来たのだ。

 何が何でも、許嫁との婚約は解消する。


(偽りの婚姻が結ばれてはならない)


 そう……自分を通して愛しい人を見ても、いつかはそれが偽物だと気づく。

 たとえ顔だけは一緒でも、いつかは違うと分かってしまう。


 愛した人と似ても似つかない相手なのだと


 そうなる前に解消しなければ


(うん、こんな風に女の子らしくなくなっていく事も当然必要だよね)


 姫らしくない姫


 女の子らしくない婚約者


 しかも力無しで落ちこぼれ


 地味で野暮ったく色気の「い」の字もなく、更には寸胴なこの体型なら誰もが相応しくないと思うだろう


 よし、軌道修正はなし


 蒼麗の中で改めて決意が下される。


(あ、でも普通は恐いんだよね)


 雪那が怖がっている


 そう、普通は恐い


 だから慰めなければ


 蒼麗はこの状況に対する普通の女の子的思考について思案した。


 それを離れた場所から見守っていた蒼花は、不満げに頬を膨らませる。


「お姉様ってば甘すぎますわ」


その顔には嫉妬がありありと浮かんでいる。

そう――雪那は姉にくっつきすぎだ、妹でもないくせに。


『仕方ないよ』

「お前もお姉様の神獣ならば、主を奪い返すぐらいの気概をみせなさい」

『無理』


 そう言うと、蒼花の頭の上でくつろいでいた來は更にだらけきった。

 姿を消す術をかけて雪那から見えない事もあり、更に調子に乗っているらしい。

 姉の神獣でなければ丸焦げにしてやるのに。


「少し離れて」


 苛立たしげに命じれば、目の前にプラカードが出される。


『妹の側から離れないで』

「は?」

『蒼麗の言葉。だから駄目』

「私がお前如きに守られろと?」


 嘲笑しながらも、心は喜びに躍っている。

 姉が自分を心配して來を側につけてくれている。

 それだけで幸せだった。


『この先どうする?』

「さあね」

『雪那、此処から逃がす?』

「無理よ、もう」


 來がプラカードを出すのを止めたのを見計らい、蒼花は溜息をつく。


「ここに来ようと来なかろうと」


 そう――


「元々のあの子の死ぬ運命は変わらない」


 でも


「此処が全ての始まりの場所であるならば、もしかしたら」


 ここに来ないという選択肢はあった


 だが、その先に待ち受けていたのは死だ


 一方、ここに来るという選択肢の先に待ち受けているのも死である


 しかも、一度ここに入ればもう二度と外には出られない


『どうして?』

「外に出れたら死ぬからよ。そう……狭間から現実世界に……この町に降り立った瞬間、呪が形成されたわ」


 どうあっても、雪那を殺すように


 雪那が死ぬように強引に道筋を書き換えた呪は、今も完成へと向けて走り続けている


「雪那が死ねば、真っ先に影響を受けるのは果竪」


 雪那が死んで間髪入れずに果竪は死ぬ


 そして、果竪という堤防を失った恵美と理恵も死ぬ


 一番呪いの影響が少なかったチヒロにもその余波は及ぶだろう


 どうやら呪は、異世界に逃げてもどうにもならないものらしいから


 それに、護衛役の一人の調査では、今まではチヒロに向う分まで果竪が受けていたから大丈夫だったという


 それがなくなれば当然……


「チヒロが最も酷い死に方をするわね」


 一気に余波を受けた者の末路はさぞや無残なものとなる筈だ


 雪那、恵美、理恵、チヒロ


 四人の聖女が消えれば、聖女の伴侶は狂うだろう


 いや、その前に凪国国王が狂うか


『蒼花は物知り』

「物知り?私はただ見ただけよ」


 最初は予想しなかったものが果竪にかけられていた事だった。

 それが呪だと気づいた時、どうせ凪国国王に懸想する誰かがかけたものだと思った。

 ただ、もう呪はほぼ完成しそうで、完成すれば確実に死んで、そうすると面倒だから手が滑ったと称して薬品をかけてやったのだ。

 そうして何気なく細い細い糸をたぐり寄せて、予想しなかった事態に気づいた。

 結果的に、果竪が突破口となり、隠されていたものが見えた。

 この自分でさえ見ようとしなければ気づかなかった複雑で酷く残酷な呪。

 酷く根深く、酷く恨みの積もったそれ。


 まあ、それもこの場所だからか……


「でも、私はただそれを知っただけの存在にしか過ぎない」


 その待ち受ける運命を変えるには、強い意志が必要だ


「私は見届ける者。それを変えるものではないわ」

『では、どうしてここにいるの?』

「お姉様が居るから」


 何時だって自分が動くのは姉に関してである


 そして、自分を動かすのも姉だけである


 自分の意思も何もかも放り投げてでも姉のために戦う


「たとえ今は見てくれなくても」


 いつかは姉のために


「ふふ……私も狂ってるわね」


 それでも、それは自分が望んだ道だった。




 買い出しが終り別荘に戻った頃には、完全に夜も更けていた。


「今からでもご飯食べますか」


 全ての荷物を運び終えた後、蒼麗の提案に雪那と蒼花は頷いた。


「食べたいです」

「賛成~」


 七宮家の別荘は、純和風――立派な日本家屋の造りをしていた。

 しかも敷地自体がかなり広い上に、家屋自体が広く大きかった。

 何せ、部屋は二十近くあるのだ。

 しかも敷地内には、倉庫が三つもあり、あれほどあった荷物の殆どを収納してもまだ余裕がある。


 また、七宮家の別荘の敷地は高い塀で囲まれており、入り口はお寺のような立派な門まで設置されていた。


「あれ?蒼花さんは?」


 台所で料理を手伝っていた雪那が気づけば、先ほどまで居た筈の蒼花の姿がなかった。


「あ、何か用があるみたいだって出て行ったよ」

「……私がいるからですか?」

「へ?」

「だって……私が蒼麗ちゃんと一緒に居ると、イライラしてるみたいだから……」


 天然と友人達に突っ込まれる雪那だが、そんな彼女でも蒼花の態度には気づいていた。

 はっきりと邪魔だという態度を隠しもしない。

 あまりにも堂々としていて、それが余計に雪那を萎縮させる。


「いや、そんな事ないですよ」

「でも……」

「本当に嫌いならあの子、口も聞かないですから」

「それって……無視って事ですか?」

「う~ん……まあ、そうですね~。視界にも入れないし、とにかく無いものとして扱うんです。好き嫌いがはっきりしてるのも原因だと思いますが」


 でも――


「雪那さんの事、気に入ってると思いますよ」


 でなければ、わざわざあんな事はしないだろう。

 この別荘を最初に訪れた際、蒼花は今のように姿を消した。


 蒼麗は蒼花が行った事の内容を知っていた。


「嫌われてないかな?」

「当たり前です」


 蒼麗の微笑みに、ようやく雪那はホッとした笑顔を見せたのだった。


 寧ろ、あの子に嫌われて当然なのは私の方だ――


「さて――さっさとご飯を食べて今日は休みましょう」


 蒼麗の言葉に雪那が頷く。


 確かに今日はかなり疲れた。

 

 けれど――眠れるだろうか?


 また目覚めた時、見知らぬ場所に居るのではないか?


 不安に震えた雪那だったが、ふとあるものを思い出す。


「あ、そうだ!」

「雪那さん?」

「あの、御願いがあるんですけど!!」

「何ですか?」

「これで私を――して欲しいんです」


 雪那が取り出したそれ。

 その使用方法と御願いを聞かされた蒼麗は、笑顔のまま凍り付いたという。




「さてと」


 たらふく食べてたらふく飲んで。

 先に眠った姉と雪那の眠る部屋の扉を閉めた蒼花は、一人廊下を通り屋敷の外へと出る。

 そのまま、敷地内にある庭に向い、大きな池の前に佇んだ。

 水面には蓮の花が浮かんでいるだけでなく、夜空に浮かぶ満月を映し込む。


「時は満ちた――」


 チャンスは一度きり――


「やはり、お前が来るのね――」


 狭間と現実の分厚い層の中を潜り抜けながら


 本来であれば神の寵愛を受けた者であるにも関わらず


 忌むべきものとして押し出されてくるそれ


 けれど……それでもこちらに落ちてくることは出来ない


「このまま見捨てれば、あれは一生時空の囚われ人」


 最後の最後で超えられない薄い薄い膜を破るべく、蒼花は持っていたナイフを天に向けて放つ


 キィィンと何かを絶つ音と共に、空から降ってくる


 バシャァァァァァンっ!


 目の前の池に見事落ちてきたそれに、蒼花はくすくすと笑った。

 中庭には防音結界を張ってあるから幾ら騒いでも姉達には聞こえないし、中で何が起きているのかも分からない。


 けれど、これほど見事なまでに落下してくるとは……


「翼はどうしたのよ翼は」

「う、煩い!飛ぶ暇もなかったんだっ」


 天使のくせして池に落下した相手に蒼花はお腹を抱えて爆笑した。


「その様子ではだいぶ苦労したみたいね――スルーシ」

「ふん!あんたは悠々自適だったみたいだな――公主」


 霧の中で行方知れずになっていた修の皮肉たっぷりな返答に、蒼花が冷たい笑みを浮かべた。



――続く

・・・・・・何、差し出したの? 雪那・・・。あれかな? あれなのかな?

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