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【幼児化王妃の危機②】・・・大雪様著


 自分の不手際から二歳児になってしまった果竪。

 本来ならすぐにでも元に戻す為の薬品作りをしなければならないが、不幸にも必用な材料は切れておりストックもなし。


 ならばすぐにでも材料集めに出かけたいが――


「そうれい~~」


 泣きながら自分に抱きついてくる果竪はいまだに小さいまま。

 これが時間が経てば元に戻る類の若返り薬ならまだしも、果竪が被ったのは対となる薬以外では元に戻らないものだった。


 このままでは果竪は永遠に子供のまま


 それはとんでもなく恐ろしい事だが、小さな果竪はそれはそれは愛らしく


「果竪さんおいで~」

「こっちに美味しいお菓子があるよ~」

「美味しい料理も沢山あるからね!」

「さあおいで~」


 恵美と理恵、雪那とチヒロが可愛らしく果竪の気を引くのはまだ良い。


 しかし、だ。


「果竪、こっちに来て下さい。果竪の大好きな大根が沢山ありますらかね」


 誰よりも麗しく艶やかな笑みを浮かべながら、捕獲用の網を隠し持つ凪国国王はとんでもなく危ない。

 しかも、その妹に至ってはこちらに投げ縄まで行ってくる始末。


 賢君ですよね?!


 凪国の偉大なる国王様ですよね?!


 蒼麗は凪国国王の妻に対する執着の深さに恐れおののいた


 妻が小さくなろうが問題なし


 彼にとって果竪がどんな姿になろうと果竪であって、寧ろ姿形は関係ないのだ


 それだけならば感動的ですむが、問題は萩波が幼児化した果竪すらも許容範囲という事だ。


 何を?


 そんなのは言うまでもない。

 魔界の某魔王様なんて当時五歳児だった実妹に欲情し夜も眠れぬほどだったらしい。

 しかも待つと言いながら好きあれば少しずつ手を出していたとか。


 果竪を一人きりに出来ない


 したが最後喰われる


 蒼麗は本気で果竪を萩波達が手を出せない世界に送ろうかと考えた。


「確か、近頃は動物の世界に沢山落人さんが落ちてるらしいし」


 いや、いっそのこと大根の世界にでも送り込むか――帰ってこなくなるけど


 そうして色々と考えた蒼麗だったが、とりあえず自分が側から離れないようにしようという事で決着がついた。





「それで、必用な材料とはどんなものなのですか?」


 薬学にも精通しているレイ・テッドの言葉に、蒼麗はメモ用紙を取り出した。


「えっと~、聖なる薬草に神木の朝露、龍の秘薬、精霊の涙、天使の蜜、七色の果実、青色のハーブ、魔法の果実、仙豆、魔物の酒、呪華花、晶石の破片ですね」


「天使の蜜だったら、修殿に頼めば宜しいかと」


 必用なものを書き留めていた明燐がにこやかに言う。


「明燐さん! 危険ですっ! あの修兄ちゃんに頼み事なんてしようものならどんな目にあわされるかっ!」


 必死に止める理恵に明燐は同性すらも堕とす妖艶な笑みを向けた。


「実際にやるのは理恵殿ですわ」

「はい?」

「さあ、これとこれを持って下さいな」


 そうして理恵に手渡したのはロープと鞭。


「これで修殿をまずは縛って下さい。縛り方はこれに載ってますから」


それは【日本古来の拷問縛り全集】


「それでこの吊るし縛りというものを行って下さい。後は鞭でしばいてこの蝋燭で――あら嫌ですわ! 私ときたら大切な蝋燭を渡し忘れてしまって……あら? 理恵殿、どうしたのです?」


 ガタガタと怯える理恵は既に蓮璋の後ろに隠れていた。

 その姿ににこやかに微笑みながらズンズンと歩いてくる明燐。


「明燐……無理強いはやめた方がいい」

「何を言うのです蓮璋! こんな事では立派な女王様にはなれませんわっ!」

「女王様になんてなりたくないですっ!」


 いつの間にか、きわどすぎるデザインの黒皮ボンテージスーツまで手にしている明燐に理恵は叫ぶ。


 まさかあれを着せられる?着せられてしまうのか?!


 かろうじて胸と股は隠されているが、その股の部分は食い込み激しいTバック。

 胸だって本当に隠す気があるのかと疑いたくなるような布の少なさ。

 お腹と背中は丸出しで、太ももも殆ど隠すものがない。


 嫌です


 絶対に嫌です


 それが似合う人に着せて下さい!!


 因みに、今ここで一番それが似合うとすれば明燐の他には居ないだろう。

 あのたわわに実った白い胸は、きっと零れんばかりに胸を覆う黒皮からはみ出し、その白く眩しい太股はもはや見る者全てを悩殺する事だろう。


「蓮璋」

「明燐……」


 蓮璋は笑顔で脅してくる明燐に溜息をつくと、背後に居た理恵をトンっと手で後ろへと押す。


 へ?と思った次の瞬間、理恵はレミレアの腕の中に居た。


「レミレア?!」

「理恵、逃げるぞっ!」

「お待ちなさいっ!」


 魔界のメドゥーサも顔負けの明燐から、レミレアは理恵を腕に抱きかかえて飛び立つ。


「逃がしませんわっ!」

「明燐」


 レミレアに向けて炎の鞭を放とうとした明燐の前に蓮璋が立ちふさがる。

 そして彼女を抱き留め、術を強制的に消去する。


「蓮璋!」

「無理強いは駄目です」

「何を言うの! 理恵殿ならば立派な女王様になれるというのにっ!」


 そう、誰よりも気高く麗しい女王様に、下僕達を華麗に鞭打ちし見下せる女王様になれるというのにそれを邪魔するというのか?!


「します。理恵さんは女王様ではなくお姫様になってもらいたいので」

「下僕を見下すお姫様ですの?」

「違いますって……そうだな……共に戦うけれど、時には愛する王子に守られてもらうお姫様の方を希望しますよ。勿論、明燐にもそうなってもらいたいのですがね」


 そう言うと、自分の頬に軽く口づけする蓮璋に明燐はようやく年相応の少女らしい反応を見せた。

 すなわち、顔を真っ赤にしてうろたえるという可愛らしいものだった。





「レミレア、どうして……」

「蓮璋さんから連絡が来たんだ。理恵がピンチだから早く来てくれって」


 それは、小さな水人形。

 レミレアの前に現れたかと思うと、理恵の危機的状況を伝えてきた。

 そうしてすぐに駆けつければ、理恵が泣いていて、明燐が恐くて、蓮璋が必死に理恵を守りながら自分にサインを送っていた。


 すぐに此処から離れなさい


 気配を隠して近づいて、理恵を攫って逃げた


 勿論、それだけではすぐにあの侍女長に掴まってしまうから、蓮璋が足止めをしてくれて、ようやく此処まで逃げてこれた。


「レミレア……ありがとう」


 もし彼が助けてくれなければ、自分はあのきわどすぎる衣装を着せられていただろう。


 というか、もしもう少し遅ければ、あれを着た自分をレミレアが見てしまって――


「理恵、どうした?!」


 その場に座り込んだ理恵にレミレアは慌てる。


「どこか痛いのか?! それとももう既に明燐さんに何かされてっ」

「されてません何もされてません何処もされてませんから気にしないでっ!」

「気にするなって心配なんだよっ!」


 明燐さんはあれでいて侮れない人だと、仲の良い蓮璋から教えられているレミレアは本気で理恵を心配した。


 もし理恵が嫌がることを既にされていたとすれば、いくら明燐でも自分は――


 あれ?


 レミレアはキョトンとした。


 自分は何を言おうとしたのだろうか?


 なんだか、もやもやとしたものが自分の中にある。

 けれど、その気持ちが何かは分からなかった。


 とりあえず、今度この事について蓮璋に相談しに行こう。

 思いの外蓮璋と気があい仲良くしているレミレアにとって、蓮璋はある意味兄代わりでもある。

 因みに、将来の義理の兄達ももちろん慕っているが、一番自分に優しくしてくれるのは蓮璋だったりする。


『弟妹達の代りではないけど、なんだかレミレアが弟みたいに思えるからね』


 愚かな前領主によって家族を皆殺しにされた蓮璋にとっても、レミレアが弟代わりとなっているのは、魔王軍側にとっても周知の事実だが、知らぬは本人ばかり。


「理恵……本当に大丈夫か?」

「え、ええ」


 しかし、安心しきったのかその場に座り込んだまま。

 レミレアは理恵を抱き上げた。


「っ!」

「明燐さんが追って来ないとも限らないし、安全な場所まで行こう」

「あ、うん」


 そうしてレミレアによって連れられていった理恵だったが、連れられた先が彼の私室という事でまた大騒ぎした事は彼らだけの秘密となったりする。




「それで、材料集めはどのようにすればいいのだ?」


 アルファーレンの質問に蒼麗は考え込んだ。


「とりあえず……それぞれの材料は魔界、人間界、天界、あとチヒロさんの居る世界にあるのでそちらを順番に回るという事で」

「手分けをした方が早いと思いますが」


 榊の言葉はもっともだった。


「いいですけど……採取方法が厄介なんですよ、それぞれの材料の」

「厄介……とは?」

「それが取れる場所が……妙な怪奇現象が起きる場所に変異してしまってるんですよ――特に人間界が一番厄介なんですが」


 人間界にあるのは、神木の朝露、呪華花、晶石の破片の三つ。


 先は長そうだった。




――続く

・・・なんか、もうこのまま理恵とレミレア、カップルでいいよね?by、さくら

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