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愛と正義のひーろー! 勝手に後日談・・・大雪様著

今回贈るお話は、愛と正義のひーろーの後日談? 果竪は出て来ません。蒼麗と蒼花が出てきます。


双子の妹が一本のビデオを持ってきた。


「お姉様、これ凄く楽しいって噂よ」

「大根マン……って、何?」

「愛と勇気だけが友達のパン擬人化ストーリーに似た話じゃありません?」


 愛と勇気だけが友達の主人公


 その主人公は、優しい笑顔でどんな手段を用いてでも自分の顔を食べさせるその自虐的趣味から、世界のドMの名を勝ち取っている


「……いや、なんか心温まる素晴らしいストーリーじゃなかったっけ?」

「お姉様ってばお茶目さん! パンを戦闘用に擬人化させた生物兵器のお話に決まってるじゃありませんか」


 何故だろう?


 妹の笑顔を見ると、違うと否定出来ない


「生物兵器……」

「それも顔が命の生物兵器ですわ。何せ雨で顔が汚れただけでアウトですから」

「……で、この大根マンも同じなの?」


 やはり顔が濡れたら駄目なのだろうか?


 あれ?こう考えると、やっぱり顔が命なんだろうか?


「何でも大根マンはそれとは違うものらしいですわ」

「ふ~ん」


 面白そうと、ビデオデッキに妹の借りてきたビデオを入れて再生ボタンを押す。






 舞台は変わって、ここは七宮家。

 その縁側で、雪那は榊の入れてくれたお茶を飲んでいた。


「そういえば榊」

「何でしょう?」

「果竪ちゃんと一緒に演じた大根マンのビデオってどうしたの?」

「ああ、あれは勿論私の大切な宝物として金庫に入れております」


 何せ、お嬢様の素晴らしい縄ドレス姿をあちこちにちりばめ、散々快楽に酔わせまくった姿が映し出されているビデオ。

 数本はアルファーレンやオウランに奪い取られたが、残りはきちんと確保している。

 ビデオには、アルファーレンやオウランがそれぞれ愛する少女と、あ~んな事や、こ~んな事をしている姿も映っている。

 しかし自分が見たいのはお嬢様の艶姿。

 紅い縄に包まれ激しく乱れる姿以外目に入らない。


 おっと!お嬢様の縄姿を思い出していたら下半身が――


「お嬢様」

「なあに?榊」

「縁側で乱れるのも一興ですね」

「榊――」


 頬を赤らめる雪那に、榊がすっと赤縄を取り出す。

 さあ、その白い裸体を美しく縛り愛らしく鳴かせるのだ。


「さ~か~き~」


 まるで地獄の底の悪鬼の如き声音に、榊は雪那を庇いながら振り返る。

 そして、ぽとりと赤縄を取り落とした。


「こ、これは、蒼花様、突然どうなされました」


 戸惑ったのも一瞬。


 すぐに完璧な執事モードで出迎えるが――


「なんつ~~もん作ってるのよこの馬鹿あぁぁ!」


 そうして繰り出された拳に榊が吹っ飛ぶ。


「榊いぃぃぃ!」

「この馬鹿執事! よくも私のお姉様にこんなビデオを見せたわね!」

「っ……い、一体何を」


 神に殴られても五秒で復活。

 既に人間の限界を超えた榊は、蒼花が突き出すように差し出したビデオに目を向けた。


 それは、蒼花に渡したビデオだった。


「大根マンのビデオではないですか」


 それは編集に編集を重ねて作り上げた、正真正銘の普通の戦隊物。

 十八禁的なシーンは全て取り払い、子供が見ても大丈夫なものに作り上げた。


「これのどこがよ!」


 そう叫ぶと、蒼花は部屋の奥にあるビデオデッキめがけて走り出す。

 そして優雅とすら思える動きでビデオを投入し、再生ボタンを押した。


 途端に流れ出す、雪那の甘い声。

 赤縄に彩られた白い裸体が乱れ狂う様は、扇情的かつ背徳的だった。

 一人の男に狂わされていく美少女の艶姿は、正しく極楽浄土の天女を思わせた。


「さ、榊っ!」

「っ!これは編集前の!」


 そう――それは編集前の大切な大切なお嬢様のビデオ。

 何故蒼花が持っているのだ。

 しかも、それにはやはり編集前で最初から最後まで撮った、アルファーレンやオウランが愛する少女にあんな事やこんな事をする映像も入っている。


「蒼花様、それは危険です、すぐに私に下さい!」


 どうやら、間違えて蒼花に渡してしまったらしい。


「この馬鹿執事! こんなものを私に渡すなんて信じられないわ! あんたのせいでお姉様が倒れちゃったじゃないのよ!」

「そ、蒼麗ちゃんに私のあんな姿が……って、どうしましょう……見られた筈なのに、体が熱くなって……榊、私なんてはしたない」

「お嬢様、そんな事はありませんよ! ああ、流石は私のお嬢様! 人に見られて高ぶるという第二段階にいつの間にか進まれていたのですね! 大丈夫、この榊が優しくお嬢様を導いて差し上げます」


 こいつら殺す


 蒼花は本気で思った。

 幾ら唯我独尊な蒼花であっても、ある程度の礼儀や常識は弁えている。

 間違っても、姉に十八禁指定ビデオ、しかも縄や鞭を使うようなマニアックなビデオなんぞ見せない。


 姉は大人への階段を一歩上らされてしまった。


「この馬鹿執事いぃぃぃ!」

「蒼花様、そうやって人は大人になっていくものです」


 開き直った榊に恐い物はなかった。

 寧ろ早く蒼花に帰ってもらい、すぐさま愛するお嬢様を快楽の世界へと導きたかった。


「ふふ……この私を怒らせた事を後悔するがいいわ!」

「何を!」


 蒼花は怒っていた。

 本気で怒っていた。

 勿論、報復するのはこの執事だけではない。

 某魔王と某異世界の王と、某国の公開鬼畜王とその妹にもきっちりと報復する。

 まあ、公開鬼畜王の妹は、しばらく果竪と引き離せばそれですむだろう。


 蒼花の中で華麗なる報復計画が組み立てられた。


「って事で、えいっ!」

「きゃっ!」


 雪那が光に包まれる。

 慌てたのは榊だった。


「お嬢様!」

「ふんっ!地獄の一週間を過ごすが良いわ!」


 そう叫ぶと、あっという間に姿を消した蒼花。

 しかし榊は気にせず雪那を抱きしめる。

 既に光は消え、見たところなんともない。


「お嬢様、大丈夫ですか?!」

「え、ええ」

「怪我はしていないようですね……」


 良かった


 しかし、榊はこの後に待ち受けている地獄に気づかなかった。

 無事にビデオテープを回収し、何の傷もついていない事を確かめると、すかさず赤縄を取り出した。


「お嬢様……」

「榊……」


 そっと頬に触れ、その体を優しく縛ろうとした時だった。


「うっ!」

「お嬢様?」

「き、気持ち悪い!」


 そう言うと、雪那は榊を突き飛ばしてトイレへと走る。

 慌てて榊が追いかければ、雪那が嘔吐しているのが分かった。

 しばらくして出て来た雪那に榊が触れるが、その途端またトイレに逆戻りする。


 まさか――


 その時、はらりと榊めがけて一枚の紙が舞い降りてくる。


『馬鹿執事へ

お姉様にとんでもないものを見せた報いとして、一週間雪那に触れられない術をかけました。触れる事は出来るけど、触れたら雪那が吐き気をもよおすようにしました。お嬢様命の貴方なら、苦しむ雪那を見てそれ以上触れられないはずよね? 本当はボコボコにしたいけど、お姉様が泣いて止めるからやめておくわ。一週間地獄の苦しみを味わえばいいのよ。じゃあね~。 蒼花より』


「くっ!蒼花あぁぁぁぁあ!」


 叫びも虚しく、本当に一週間雪那に触れられなかった榊は、真っ白に燃え尽きていたという。


 榊の中で、蒼花は怒らせてはいけない人物のトップに躍り出ることとなったのだった(合掌)



終わり

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