表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/42

【魔界×天界=被害倍増?】・・・大雪様著

【魔界×天界=被害倍増?】



その日、魔界の魔王城には思いがけない珍客が来ていた。



それは魔族にとっては天敵とも言える存在――天界の神々である。




双方長い間戦い続けた仲であり、永遠のライバルとも言えるその珍客に魔族達は緊張感に包まれる。

現在天界は偉大なる統率者のもと繁栄と栄華を誇り最強と名高い。


勿論自分達も唯で負けるつもりはないが、前面衝突ともなれば双方に甚大なる被害を及ぼすだろう。



魔王城の上部達は半ばハラハラしながら自分の主であるアルファーレンと相手の主との対談を見守った。



「貴方を見込んでお話があるんです」



先に口を開いたのは、天界が十三世界が一つ、炎水界の大国――凪国の王。

魔族ですら抗いがたい白髮と紅玉のごとき瞳を持った優美な美貌の持ち主は艶麗に微笑んだ。



「私に話だと?」


一目見た瞬間意識が飛ぶような麗しい絶世の美貌を持つ麗しき美貌の魔王陛下――アルファーレン・カルバーン。


その昔は魔将軍閣下として


紅の貴公子。

冷徹の魔軍師。

冷酷の代名詞。


と沢山の二つ名を持った実力者として君臨し、今は魔王としてこの魔界に君臨する気高き存在。

数多の魔族の中で、最も美しく、もっとも残酷で、最も力のある孤高――というには周囲に恵まれすぎている魔王は不機嫌そうに眉を顰めた。


その冷厳なる視線は向けられただけで死んでしまうほどに鋭くて冷たい。

しかし、凪国国王――萩波はそれをにこりと笑ってかわした。



「はい――偉大なる魔王陛下でありながら実は若干五歳の義妹にあろうことか欲情を抱き下半身を熱くする魔王陛下にお話があります」




ぶはぁぁぁぁっ!!




その場に居た魔王軍上層部が全力でむせた。

むせすぎて死ぬ所だった。



流石は天界でも猛者と名高い凪国国王。

言葉だけで自分達を瀕死に追いやるとは流石である――と、魔王軍上層部が思ったとか思わなかったとか。いや、たぶん全力で思っただろう。



「大丈夫ですか?」

「だ、だい、大丈夫……なわけないだろうがっ!」


そう叫んだのは、麗しくも凛々しい魔界の元皇子兼現魔王側近であるアマレッティだった。

さっ、と凪国国王の後ろにいた茨戯が申し訳なさそうに差し出したタオルで口を拭きながら国王を睨付ける。



「そりゃあ確かにアルファーレン兄上はエミーに欲情ゴフっ!」

「黙れ馬鹿」



アルファーレンの踵落としが炸裂しアマレッティが撃沈する。



「というか、貴様この私に対して良い度胸だな」

「そうですか?ただ事実を言ったまでですが」

「誰から聞いた?」

「内緒です。それでは早速本題に入らせて頂きますが、その流石に私でも無理なレベルに近い、五歳のいたいけな少女に性的欲求を抱く貴方に相談があるんです」

「貴様……私の事を馬鹿にしてるのか?」

「馬鹿になどしていません。寧ろ尊敬しています。そう――幾ら美しいとはいえ自分よりも遥かに幼い少女の体に下半身を熱く高ぶらせる事が出来る魔王陛下に」



こいつ殺る――そうアルファレーンは全力で心に決めた。

とびっきりの術を解放してやる。



「あ、これ報酬のエミール嬢のベストショット五枚組です」

「何でも相談してくれ」



そこに写っていたのは、満面の笑みを浮かべながら着換えをする愛しい妹の姿だった。



賄賂――そんな言葉がその場に居た全員に思い浮かぶ。



「で、相談というのは私の妻の事です」

「妻?」

「そうです。その妻との夜の生活についてどうすれば妻を良くしてあげられるかと」



今度吹き出したのは、凪国側の上層部だった。



「ちょっと待ちなさいよアンタっ!」

「一体何を言い出すんだっ」



茨戯と宰相がそれぞれ叫ぶ。

他の者達に至っては叫ぶ事すら出来ないようだった。



「煩いですね、何ですか」

「余所様の所で一体何を言い出すのよっ!」

「これは大切な事なんです。どんなに努力しても果竪は痛がって泣いてしまう。それをどうにかしないと私達の平穏な夜の生活はやってきません」

「だからとって人様に余所の家庭事情を持ち込むなっ」

「何を言うんですか!五歳の妹という発達的にも未熟な体付きの少女に性的欲求を抱く魔王陛下ならばきっと何か良い案がある筈ですっ」



そうでしょう?!と魔王に同意を求める萩波に凪国上層部は魔王軍の上層部に謝罪する。

一方、魔王軍の上層部側も主と同じく五歳の少女の愛らしさに悩殺されているという後ろ暗いところがあるせいか、その謝罪を冷や汗をかきつつ受け入れた。



「それは……お前の性技に問題があるんじゃないか?数をこなせばいい」

「妻と結婚する前には老若男女問わず一年間に1000人以上の単位でこなしていましたが」

「なら問題ないな。だが……ただ数をこなせばいいだけではない」

「SMなどの変態的プレイも大丈夫です。あらゆる性の技術を学びましたから。というか、妻以外の相手だと性的不能に陥ったかと誤解するぐらいに快感を覚えないんですよ」


寧ろどれだけ奉仕されても自分の下肢は反応しない。

仕事と割り切り、相手をよがり狂わせる時は頑張るが、それも一時的な高ぶりでしかなかった。そう、自己暗示だ自己暗示。


「それは難しい問題だな」

「ええ。どうしたらいいでしょうか?」



どうしたら良いって……



魔王軍は女性の様に優美で神秘的な美貌を有する萩波に口元を引きつらせた。



「ふむ……良いアドバイスをしたいが……私はエミーとはそういう関係にはなってないし」

「即なって下さい」

「「「「「「待てぇぇぇぇぇっ!」」」」」


「魔族の王らしく愛する人を奪って快楽に叩き落して下さい、私達の夫婦生活の平和と平穏のためにも」

「おぬしのとこの夫婦生活の為にわらわのエミーを犠牲にするでないっ!」



麗しく妖艶なる龍族の女王――リアナージャが叫ぶ。

その悩ましい曲線美に形作られた悩殺もののナイスバディ――特に大きく揺れる乳房は普通の男ならば思わず飛びかかりたくなるほどだ。

だが、凪国上層部に飛び込むような馬鹿はいない。

傍目は絶世の美貌に相応しい美女のリアナージャだが、その本性は冷酷にして非道。

ほいほい美貌に引き寄せられた相手の全てを貪り尽くす美しく気高き魔の女王。


それが分かっていて飛び込む馬鹿はいない。

それに、確かに美しいが自分達の王をいつも見ているせいかその美しさは認めていても虜になる事はない。


それは、魔族側も同じらしく、自分達の美貌に魅入っても決して虜にはならない。



因みに、謁見の間に勢揃いする魔王軍もそれはそれは美しい者が多かった。



「ふっ……蛇淫の女王が生ぬるいことを。そのような事では好きな人に逃げられますよ?」

「な、何っ?!」

「それこそ枷でもつけて縛り付けておかなければ奪われると言っているのです」

「枷……ってお前本当に神か?!しかも魔族に夫婦生活なんて相談するなよっ」



復活したアマレッティが叫ぶ。



「何を生ぬるいことを。私は妻のためなら悪魔とだって契約します」



神失格だこいつっ!!



魔王軍上層部は凪国上層部に同情の眼差しを向けた。



「それは……問題ないのか?」

「大丈夫ですよ。基本的にうちの天帝陛下及び十二王家は皆悪魔よりも悪魔らしく、魔王よりも冷酷非道、唯我独尊な方達ですから。それこそムカツク奴はぶっ殺す、邪魔する奴も張り倒す、自分の邪魔をする者の存在価値など一片たりとも認めない。人間界の守護だとて自分達が溺愛する白き調律師こと天帝の義妹が望んでいるから頑張っているという感じですからね。寧ろアルファーレン魔王陛下の方がよほど倫理と法律を重んじる素晴らしい方だと思います」



魔王の方が倫理や法律を重んじるって……



もはや魔王軍側に言葉はなかった。



「でも……困りましたね……これでは妻の苦痛を取り除けません」

「……………その、なんだ。お前の妻も幼いのか?」

「幼くはありませんよ。十七歳ですし」

「ならば私に聞かずともいいだろう。体的には成熟してる」



その時だった。




「萩波、まだお話中?」

「お兄様、もういいですか?」



室内に入ってきた二人の少女。

一人はおよそ五歳とは思えぬ愛らしさを持った金髪の超絶美少女。

一瞬にして魔王軍の心に春が訪れた。

可愛い、愛らしい、もはやその魅力は犯罪レベルだった。

と同時に彼らは気付く。

ここには自分達以外の男達(神々)が居る。

その愛らしい姿を一秒でも目にしたら速攻でかっさらわれてしまう!!

即座にアマレッティとリアナージャが少女を隠すように立ちふさがった。



「お、お兄様達?」

「だめじゃエミー隠れるのじゃっ!」

「そうだっ!ここには怖い奴らがいるんだっ」


特に、凪国国王という天使の皮をかぶった大悪魔が。



「怖い人ですか?」

「え?ここってエミー姫のお兄さん達が居るって聞いたけど……ってか謁見の間じゃ……」

「ん?おぬしは誰じゃ」



そこでようやくリアナージャ達は愛しのエミーと一緒にいる少女に気付いた。

何処にでも埋没出来るほどの十人並の容姿。

青みがかった黒髮と勿忘草色の瞳を持った少女は自分達に気がつくと優しく微笑んだ。



その笑顔に、リアナージャ達は言葉を詰まらせる。



はっきりいってエミーには勝てない。

自分達の愛しい愛する少女の足下にも及ばない。

だが、それでもこの少女からは嫌な気配どころか心地よい気に包まれている。



「私は……」



だが、そんな果竪の言葉を遮るようにアルファーレンが叫んだ。


「エミー!!……と、あれは」


エミーの隣にいる少女。

醜いわけではないが、何処にでもいる普通の少女にアルファーレンは目を見張る。

エミーほどではないが、あの少女もとても綺麗な魂の色をしていた。

それは極上の部類に入るほどに。



あの黒髮の少女は



「私の妻です」

「嘘だろうっ!」


アルファーレンは目を見張る。


妻?妻?今妻だとか抜かしたかお前はっ!!


「お前みたいな魔族すら足下にも及ばないどす黒い魂を持つお前の妻があんなに美しく綺麗な魂の色をしている筈がないっ!」

「それを言うなら、貴方のような美しく聡明で才知溢れてはいるけれど妹以外はどうでもいいを全身で表わす冷酷非道な方には言われたくはありません」


「お兄様、どうされたんですか?」

「萩波、なんか怖いけど何かあったの?」



それぞれの女神(笑)が首を傾げる。



「何でもない、エミーは向こうで待ってなさい」

「果竪も向こうに居て下さいね」

「ここに居ちゃダメなの?」

「すいません、大切な話なんですよ」



心底馬鹿らしい話だった――とは誰も言えなかった。

かわりに、誰もが果竪を見て「あぁ、なるほど」と思った。

質素な服に身を包む凪国王妃。

確かにあの体では痛がるだろう。

それほどに未成熟で子供のような体付きだった。

胸は断崖絶壁、腰も小さい。あれでは男を受け入れるのは無理である。



ってか――



「お前はあんないたいけな子供に手を出すのかっ!」

「五歳の少女に性的欲求を抱く貴方には言われたくありません」

「私もお前には言われたくないっ!というかあれは絶対十七歳じゃないだろっ」

「十七ですよ。初めて手を出した十二歳の時よりもずっと成長してます」

「十二っ?!」



アルファーレンは凄まじい衝撃を受けた。

勿論、魔王軍も衝撃を受けた。



こいつ、魔族すら裸足で逃げ出すほどの鬼畜男だ!!



「くっ!お前はっ!この私でさえエミーが十六になるまで待とうと思っているというのにっ」

「凡そ魔王陛下とは思えないお言葉ですね」

「お前の方が神らしくないだろうがっ」



そうして始まるとっくみあい。

術を放つなど高度なものではなく単純な殴り合い。

世界レベルで地位の高い者同士の極めて低レベルな争いだった。




「ってかエミー、何で凪国王妃と一緒にいるんだ?」

「お庭で一緒になったんです」

「果竪と言います。この度は突然お邪魔してすいません」



ペコリと頭を下げる果竪にアマレッティは思う。


なんて礼儀正しい女神なんだろう――と。

間違ってもあの鬼畜国王とは違う。



「それで、一緒に大根のお話をしたんですよ。果竪様、凄く大根にお詳しくて」

「は?大根?」

「ええ、大根は素晴らしいんですっ!あのすべやかな美肌を持つ大根の魅力についてエミー姫と楽しく話合いました!」

「大根……凪国の名産品とか?」

「いえ、凪国の名産品は【海耀石】です」

「じゃあなんで大根が?」

「……聞きたいですか?私と愛する大根の出会いについて」



キランと目が光る果竪にアマレッティは獣並の本能で首を横に振ろうとした。

何かが自分に警告している。まずい、この話題はまずい。



しかし――




「アマレッティお兄様、果竪様の大根話は本当に為になるんですよ!私、大根料理も沢山学びましたから今度皆様に作って差し上げますね!!」



目を輝かせながら手料理を振舞うと言うエイミール。

アマレッティは話題を拒絶する機会を失った。




「はっ!そんな事だから隠れへたれと呼ばれるんですよっ」

「黙れこの公開鬼畜がっ!」




どっちもどっち……と、双方の上層部は思ったのは言うまでもない

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ