episode5 推理型カードゲーム
~24年前~
謙吾「兄ちゃん、このデッキで本当に大丈夫なの?」
無月「何を言っている、各文明のパワーカードを分割して作った俺の自信作だぞ」
その当時、クロスゴマから離れて暫くして、兄さんはTCG『ナイトファイターズ』を遊び始めていた。
元々、カードゲームは『戦略王』が地元では流行っていたが、日本向けの新規TCGということで当時は話題性があり、小学生を中心に流行り始めていた。
デッキ構築は兄さんに任せて、僕はプレイ専門のカジュアルプレイヤーという感じだった。
その日、渡されたデッキは5文明8枚ずつの超ハイブリットデッキ、流石にと思いつつそのデッキを使うことになってしまった。
犬星母「今日行くカードショップさんはちょっと遠いから早く向かうわよ」
無月・謙吾「了解!!」
某カードショップ
ガヤガヤ。
無月「へぇ~近場じゃこういうショップないから羨ましいなぁ」
謙吾「知らない人がいっぱいだ~」
モブA「この変じゃ見ない奴がいるな」
モブB「まぁ最近始まったばかりのカードゲームだから、近場で大会ないんでしょ」
ショップ店員「それでは、今から大会を始めますので、参加者の皆さんは準備をお願いします」
卓に座るプレイヤー達。
無月「よ~し、勝つぞー」
謙吾「(このデッキで勝てるのかなぁ…)」
~それから数時間後~
無月「くっそ~、負けちまった」
犬星母「修行が足りない」
無月「面目ない」
犬星母「謙吾は勝ってるみたいよ」
無月「え、マジで(;´▽`A``」
謙吾「(僕、なんでこのデッキで勝っているんだろうか…)」
モブA「なんだあのデッキは…何文明デッキなんだよ」
謙吾「(5文明なんだよなぁ(;´▽`A``」
モブA「あ~負けた」
無月「あいつ、準決勝まで上がっちまったよ…」
犬星母「流石は謙吾♪」
自慢するわけじゃないけど、僕は兄さんよりもスタート時の才能は秀でていた。
ショップ店員「(あの子、とんでもないデッキで勝ちあがってるなぁ、どこかのショップの強豪?)」
ショップ店員「それでは、準決勝を始めてください」
大きいお兄さん「(こんな初心者っぽい奴なら楽に決勝いけそうだな)」
謙吾「(なんか態度悪いなこの人)」
両者「よろしくお願いします」
対戦が始まり終盤。
ギャラリーA「おい、あの5文明使い勝っちゃうんじゃないのか」
ギャラリーB「手札の除去スペルとダイヤモンドカッターを使えばまぁ勝ちだろうね」
大きいお兄さん「ちょっと待て、確かルールでスペルは1ターンに1枚までしか使えないぞ」
謙吾「えっ(・・?」
この一言で状況は一変する。
その当時の僕らはそれほどカードゲームに詳しくなく、そのお兄さんに何も言い返せなかった。
不本意ではあったがお兄さんの意見が通ってしまい、正当なジャッジが下ることがなく、僕はその試合を敗北してしまった。
その後の3位決定戦は難なく突破し、無事3位入賞を果たした。
※筆者調べでは、同名カードは1枚発動制限はあるが、別のカードをプレイする際はそんなルールはないと出てきました※
父に迎えに来てもらい、車内で話す一行。
無月「このデッキで3位入賞って凄いな」
謙吾「兄ちゃん、このデッキ作ったのあなたですよ(;´▽`A``」
無月「いや、使いこなせると思わんやん」
犬星母「今日は、遠くまで出向いたから、焼肉でも行きましょう♪」
無月・謙吾「焼肉だー!(^^)!」
~それから1年後~
無月「ハイドロハリケーン発動!!」
無月「君の場のクリーチャーをすべてバウンスだ」
モブA「くっそー負けた~」
モブB「盤面にモンスターを並べまくって、盾を全く殴らないって漫画みたいなプレイだな」
謙吾「(この地域であのプレイをするのは兄ちゃんだけだろうなぁ)」
兄さんは初期環境で強かった青文明のデッキ系統を使用するようになり、優勝経験を積んでいった。
後に環境で大流行する、青単色デッキも愛用するようになり、以前とは違って兄さんの方が結果を残すようになった。
好きなゲームの知識と経験を積む、これが兄さんの強みであり、僕に欠けている才能だ。
兄さんの趣味に没頭する才能は、月日が流れるにつれ、研鑽されていく。
~現代~
無月「さぁ京ヒムも2日目、夜の部でいよいよ佳境だな」
陽月「2日目夜の部は最近リリースされたCGDETECTIVE CONAN…えっと」
無月「タイトルが難解だから『DCCG』って略せばいいよ」
陽月「それでも呼び難いですね…」
無月「それはユーザー皆さんが感じています」
俺もこのイベントに向けてリサーチし、赤と黄の構築済みを購入して、何度か地元のイベントに参加していた。
この前、『赤井家』カード一式を注文して、ガチめの赤デッキも完成している。
元々のカードゲーム経験値ですぐに順応して、それなりにプレイできる程度には上達している。
葉瑠「兄さま、またカードゲーム始めたのですか?」
無月「うーん、DCGだけに留めようと心に決めていたんだけど、コナンと戦略王が結構アレな状況に陥ってたから、まぁ成り行きで…」
葉瑠「なるほど」
無月「まぁ、都話さんと那虎さん含めた、葉瑠の先輩方が企画で取り扱ってくれて、デジタルが盛り上がった影響が大きいかな」
都話・那虎「❀(*´▽`*)❀」
陽月「(コイツ、生粋の女たらしやな)」
場内放送「えー、それでは、夜の部メインイベント「ディテクティブカードゲームコナン」の体験型対戦イベントを開始致します、参加希望の方は整理券抽選ステージへお越しください」
無月「お、いよいよ始まるな」
葉瑠「兄さま、抽選ステージに行きますよ♪」
無月「え、ちょ…」
葉瑠に連れられ、ステージへ向かう無月。
都話「折角ですから、私たちも向かいますしょう♪」
那虎「そうだね、行こう」
陽月「(はぁー、仕方ない、私も行くか)」
変装した謙吾「相変わらず葉瑠は強引だなぁ、さて僕もバレないようにステージに向かうとしますか」
猫山「この三兄弟、なんやかんやでこのイベント満喫し過ぎやな」
優野「お、無月君、コナンのステージに向かってるな、これは隠れて観戦せねば」
~コナンステージ~
司会「さぁ、それではコナンカードゲーム初となる、体験型対戦イベント、名付けて『SHERLOCK Deduction』、まったく新しいカードゲーム対戦大会ショーだ!!」
館内の照明が落とされ、スポットライトが一転に集中する。
「ボンッ!?」
煙が上がり、ステージからキザな怪盗が登場する。
キザな怪盗「今宵は京ヒム2日目、夜の部メインイベント、『SHERLOCK Deduction』ステージにお越しくださいまして、誠にありがとうございます」
キザな怪盗「イベントに際しまして、私より推理ショーの予告状を皆様のパンフレットに忍ばせていただきました、どうぞご確認ください」
女性ファン「キャー、ノブ君ー✧◝(⁰▿⁰)◜✧」
コナンの登場人物である『怪盗キッド』に扮した、男性声優さんは勝豪信己、京ヒムメインMCの一人であり、その昔、声優アワードで『新人男優賞』を受賞されている、超人気声優さんだ。
無月「流石、凄い人気だなぁ」
都話・那虎・葉瑠・陽月「(あんたも相当なんやけどなぁ╮(´-ω-`)╭ヤレヤレ)」
イベント来場の際に渡されたパンフレット一式を確認する一同。
パンフレットの中に黒く染まった部分が、開くと同時に白へと変色し、予告状が露になる。
予告状
「京の都にて開催される、アニメの祭典が闇夜に転じる時、推理力が試される新規カードゲームのイベントにて、優勝賞品であるジュエルカードを頂きに参上いたします。」
~怪盗キッド~
無月「ほぉ~、暗がりで色が変わる仕組みか、凝ってるな~」
陽月「(この人はまた演技をして…本当に楽しめているのか心配になるよぉ)」
陽月は知っていた、無月が地元のイベントに参加し、コナンカードゲームの練習を重ねていたこと。
忙しい中、トレーディングカードゲームを再開し、カードゲーム界を再建しようと決意したことを。
変装した謙吾「(兄さんの適応能力なら既に中級者程度の実力はあるはず、ただ、あの眼を用いた兄さんがどこまでの速度で成長しているか、楽しみだ)」
勝豪「それでは、ここからは僕が進行を務めさせていただきます」
勝豪「まず、パンフレットに添付されている予告状をステージに上がり、担当スタッフにQRコードを読み込んでもらい、チェックインという形式で抽選参加が完了いたします」
無月「なるほど、QRそれぞれにシリアル番号が添付されている感じか」
葉瑠「現代風って感じですね」
無月「TCGはどうしてもユーザー側にアプリDLを強要する形式か、ショップで参加者リストに記入かの二択だからね、こういった試みは凄く良いと思うよ」
那虎「アプリだと気軽にドタキャンできちゃうし、キャンセルするとロックかかって再予約できなかったり、不便な点が多くて困っちゃうよね」
都話「お子様とか、イライラしちゃいそうですわよねぇ」
陽月「(本当、イベントに参加しながら色々と考えてるんだなぁ)」
イベントスタッフ「勝豪さん、予想以上の参加者で収集がつかなくなっています(;´▽`A``」
グッと親指を立てる勝豪。
勝豪「ORコードを読み取った方は同じブース内にあるコラボカフェやフードメニューでも注文して、抽選会が始まるまでお腹を満たしてね♪」
女性ファン「なら『愛されバーガー』注文しに行ってくるー♪」
読み取りが完了した来場者はフードコートやコラボカフェへと一旦移動する。
勝豪「(ふぅ、とりあえずはこれで大丈夫か、それにしてもこれだけ盛り上がるとは、やはり彼が考えた企画なだけあるな)」
~数カ月前~
某事務所デスク。
無月「これが今のコナンカードゲームの現状か、某カードショップがイメージダウンを加速させ、環境は白に支配されてしまっている…テストプレイに参加できなかったのが悔やまれる」
無月は他コンテンツや葉瑠を含めたアイドル達の応援など、一般人であるものの忙しい日々を送っていた。
その影響もあり、サービス開始直後には遊ぶことができなかった。
無月「とりあえず、ルール解説動画とネットに溢れている対戦動画を漁ってみるか」
コナンカードゲーム調査を開始した無月。
まずは開封対戦イベントである『8パック開封戦』、その後『ファンミーティング交流会』に参加した。
無月「調査の結果、参加層としては『競技者』よりもコナンが好きな夫婦、カップル層や女性プレイヤーが多い印象だな」
無月「r(-◎ω◎-) 考え中.....」
考え込む無月。
無月「競技者が少ないということは、TCGが抱えているマナーの悪いユーザーが少なくなる可能性が高い。つまりは、他TCGでは形成が厳しい『年齢、性別を問わず』気軽に参加できるコミュニティが構築できる可能性があるということか」
猫山「(無月さん、さっきからPC眺めながら、なんか独り言いってるな)」
無月「□_ヾ(・_・ )カタカタ (メール作成中)」
無月「よし、これでよし♪」
猫山「で、結局何してたんスか」
無月「へへへ、内緒( *¯ ꒳¯*)」
猫山「え~、教えてくださいよ~」
次回、対戦型推理ショーが始まる…。
~数カ月前~
都内某所。
謙吾「ん、兄さんがメールを送信してる」
内容を確認する謙吾。
謙吾「こ、これは…兄さん、またトレカ界に加担するのか、最近色々と勉強するって言ってたのに、全くもう」
謙吾「仕方ない、当日は僕も様子を見に行くとするか」
兄が心配で仕方ない弟であった。