③ 剣に宿る力・その秘密
訓練の途中、自信を喪失した私たちだったけれど、ラウルの厳しくも心優しい指導のおかげで、少しずつ成長していった。
ここまで成長出来たのは、彼が私たちの努力をしっかりと見てくれ、時間を惜しまず、わざわざ個別に稽古をつけてくれたお陰でもあるだろう。
「よし、よく頑張った!皆、ここで一旦休憩だ」
ラウルの大きな声が訓練場に響きわたる。
その直後、彼は私たちを見渡し微笑んだ。
「いい動きだ。 特に新人の君達三人、最近の進歩は目を見張るものがある」
「あ、ありがとうございます」
力哉が嬉しそうに返事をした。
「これからも精進できるよう頑張ります」
健二もどことなく嬉しそうに感じられる。
自信を喪失していた私にとっても、突然のその言葉はまさに救いだった。
訓練中に何度も失敗し、悔しさと不安が交錯する中だったけれど、ラウルの言葉が私の心を温める。
「ありがとうございます、ラウルさん。 でも、まだまだです」
私は敬礼しながら恥ずかしそうに答える。
ラウルは笑いながら首を振った。
「謙虚なのはいいことだが、自分の成長を認めることも大事だ。 さあ、次の訓練に行くぞ」
その日の訓練が終わった後、ラウルは私だけ帰らせずに呼び止めた。
「あの、話とは何でしょうか?」
「君に特別な課題を与えたい。次の戦闘訓練ではリーダーを務めてもらう」
ラウルの言い放った言葉を聞き、驚きと不安が私の心を掻き立てる。
「えっと、リーダーですか? 私が?」
「そうだ」
ラウルは真剣な表情で言った。
「君にはその素質がある。 見ててわかったんだ! だから明日から責任あるポジションを任せようと思う。 もっと自信を持って挑むんだ」
「はい、分かりました」
話が終わって力哉と健二と住んでいる仮住いに戻ると、リーダーとして任命されたことを二人に話した。
「良かったな!任されるだなんて光栄なことじゃないか」
力哉が目を輝かせながらそう言ってきた。
「で、でも、自信が無いというか⋯⋯何と言うか⋯⋯」
「何だよ、やりたくないってのかよ?」
優柔不断な私に力哉が少し苛立っている。
「断る必要なんてない!折角のチャンスなんだから、チャレンジしてみたら良いんじゃないか」
真正面に座っていた力哉はそう言って立ちあがると、私の元へ来てポンと肩を叩いた。
「これって凄いことなんですよ、リアにはリーダーとしての素質があるってことですからね、僕も仲間が選ばれて嬉しいです。だから、そんな心配そうな顔してないで、もっと喜んでください、僕達がついてますよ!」
斜め前に座っている健二も私の隣でニマニマしている。
「そ、そうよね⋯⋯任されたからには、自分にとってやれるだけのことはやってみることにするわ!えへへ」
その晩、私はリーダーとしての責任を重く感じながらベットに横たわると、ラウルの言葉を反芻しながら胸に刻んで眠りについた。
︎ ところが、不安が消えるはずも無く、朝は二人よりも早くに目が覚めてまい、その後眠りにつくことも出来ない私は、少し眠い状態のまま朝を迎えることに。
リーダーの任命は光栄なことだけれど、それと同時に大きなプレッシャーも感じてしまう。
結局、私なんかが本当にその役割を果たせるのか、仲間たちを導けるのか、朝を迎えても不安が尽きなかった。
そんな状態のまま、何時ものように女性用トイレで用を足し、顔を洗い歯を磨き、訓練服に着替え始めると、毎度ながら力哉と健二がツッコミを入れてくる。
「おいおい、トイレはしっかり女性用使うんだから、そろそろ服着替える時も気を使えっての」
男性から女性の姿になったリアが、周りの目を気にせず着替え始めたからだ。
「あのな、リアには羞恥心ってもんがないのかよ」と力哉が聞いてくる。
「そうだよ、リア。もう少し気にして欲しいな」と健二も言った。
確かにこの状況では気にした方が良いかもしれないけれど、力哉と健二とはずっと一緒にいた仲なので、私にとっては家族のような感覚でもあるし、それにいちいち気にするのは面倒くさいというのもある。
「いいじゃん、それくらいは。二人共、私なんかで興奮しないでしょ」
「そ、それは⋯⋯」
力哉が目を逸らした。
「いや、リア、その⋯⋯実は⋯⋯」
健二も言葉を濁す。
「え、ちょっと待って、本当に興奮してるの?」
リアは驚いたように二人の顔を見た。
力哉と健二は顔を赤くして、互いに目を合わせることができない。
女性となったリアのスタイルが良すぎるボディのせいで、実は興奮するらしいのだ。
「わかったわかった、気をつけるよ」
私は苦笑しながら、今度は少し離れたところで着替え直すことにた。
暫くして三人の支度を終えると、訓練場に向かう。
到着するやいなや、先ずは腹ごしらえからなので、訓練場の入口付近にある建物に入ることになっている。
ここでは、調理場を任されている卯月おばさんの朝食を訓練生全員でに取ることから一日が始まるからだ。
「ほら、たんとお食べ!」
「こ、こんなに」
私は驚きのあまり、今日も受け取りがてらそう言ってしまった。
「これくらい普通よ! ほら、仲間はもっと食べる見たいよ」
まさかと思い、力哉と健二の方を向くと、二人は大盛りご飯を受け取っていた。
「す、凄いね! 二人共良くそんなに⋯⋯」
「こんくらい普通だよ、まぁ、元々前の世界でもこんくらい食べてたからな」
力哉はこれがいつも通りだと答える。
「最近ですよ、こんくらい食べられるようになったのは! リアは、前いた世界では、いつも朝食べずに学校来てましたもんね、そのうち慣れますよ」
健二が慣れだと言ってきた。
⋯⋯うぐぐっ!
確かに、小学生の時から時間ギリギリに起床して、朝食なんて食べる習慣すらなかったから、慣れないのも当然ではあるけれど、ちょっと悔しい気がしたのは秘密にしておこうと思う。
「そ、そうだね、慣れだね⋯⋯えへへ」
とは言っても、中々慣れないので、無理やし押し込む感じでご飯を飲み込む! ご飯を食べるだけなのに、私だけ朝からちょっと苦しい修行になっているので、早くこの生活に慣れたいなと思った。
☆
こうして今日の稽古が始まる、訓練場に立つと、ラウルの指導の下、戦術を駆使しながら仲間たちを導いていくことになった。
「行くぞ、みんな!」 私は声を張り上げ、同じチームの力哉と健二だけでなく、他にもいる仲間たちを鼓舞する。
敵役の訓練生たちを次々と倒し、最終的に勝利を収めた瞬間、皆一様に驚きの表情を浮かべた。
「やったな!」
ラウルが微笑みながら近づいてきた。
「あ、ありがとうございます。︎︎ ラウルさんの指導のお掛けです」
「それもあるかもしれんが、リーダーとしての素質があるんだと思う! ほら見ろ、君はやりきった」
ラウルが言い終えた直後、周囲からの拍手と歓声をもらい何だか嬉し恥ずかしくなる。
私自身、実際やりきったとはいえ、驚きのあまり、敵を倒した直後、身体が硬直して動けなくなってしまっていたのだ。
しかし、ラウルの言葉が私を再び動かした。
「ありがとう、ラウルさん。これからも頑張ります」
「うむ、そうだ、その調子だ。君ならもっと強くなれる。」
「はい!」
「それに、そこの新人二人も良い動きでサポートできていたと思う。これからも頑張ってくれたまえ」
そう言われて、力哉と健二は「はい」と大きく返事をした。
こうして、その日から、私はリーダーとしての自信をつけると、さらに仲間たちと共に成長していった。
ラウルの厳しくも心優しい指導のもと、私たちは戦士としての心構えや戦術を学び続け、次第に強さと絆を深めていくことに。
ある日、急に私たちの剣に秘められた力が発揮された。
それは、これまでの訓練では感じることのできなかった、未知の力である。
二人とは一緒に稽古しなかったこともあり、訓練が終わると、私は力哉と健二を呼び出し、一人で敵を倒したことや剣に宿っているであろう力について話しをした。
「今日、なんか変なことが起きたんだよね」 私は興奮を抑えきれずに二人に伝える。
「あのね、さっき急にすごい力が出て、敵を一掃できたの」
その話を聞いて、力哉が頷きながら言った。
「実は俺もだ。剣がまるで自分の意志を持っているかのように動いたんだ」 健二も驚いた表情で続けた。
「俺も同じだ。なんなんだろう、この力は?」
私たちはお互いの話を聞いて、それぞれの剣に独自の力が宿っていることを確認した。
どうやら、剣に秘められた力が私たちの戦闘技術を高めているということらしい。
「ねえ、私この力の秘密をもっと知りたい。 一緒に探ってみない?」
私は決意を込めてそう言った。 力哉と健二は顔を見合わせ、そして力強く頷いた。
「うん、気になるよね、やろう、一緒に」
そう言うと、僕の目を見て力哉が微笑む。
「何か分かることがあるかもしれない、僕もやるよ!」
健二も探ることに賛同してくれた。
こうして私たちはラウルにこの不思議な力について相談し、古い書物が保管されている施設を教えてもらうことになる。
そこで、私たちは剣の起源や歴史について調べ始めることになり、訓練の後、たとえ疲れていても、私たちは調べ物をする日々が続いた。
けれど力哉も健二も疲れたから探究することを辞めたいとは言わない。
勉強が大嫌いだった私も、何故かこの力のことについては知りたいという探究心に駆られていたので、一旦休もうと思うことも無かった。
「ほら、これ、見てみろよ」
ある日、力哉が古い書物を指さし、興奮気味に言った。
「ここに、剣の力は戦士の魂や情熱、そして絆によって引き出されると書いてあるぞ!」
「つまり、剣は単なる武器じゃなくて、戦士の心と結びついているってことか」
健二が驚いた表情で答える。
こうして、私たちは自分自身の内なる力を開花させるために、剣の才能を引き出すための修行に励む日々を送ることに。
絆を深め、自己肯定感を取り戻し、剣に宿る力を完全に引き出すために、私たちは新たな冒険の始まりを迎えたのでした。




