第1章妖怪飛脚 YOSIWARA妖怪事情 2
頑張ります!
このお話の時代より、しばらく前のこと、ショーグンヨシムネは、将軍への謁見のために毎年EDOを訪れるNAGASAKI出島の商館のカピタンに質問したことがあった。当時、すでにEDOでは、人間が妖怪に接触することによるトラブルが、しばしば話題に上るようになっていた。そして、世間の噂によるとこの妖怪たちと人間の接触という出来事の増加というのは、しばしば巷で見かけるように紅毛人が原因であると、当時の人々は考えていたからである。確かに、ショーグンヨシムネにとって、妖怪の最近の傍若無人ぶりについて目に余るものがあったし、世間の噂というものが、ショーグンヨシムネの耳に入ってきてもいた。そこで、ショーグンヨシムネは、紅毛人とつながりを巡る疑惑について、日本における紅毛人の代表者でもあるNAGASAKI出島のカピタンに妖怪と紅毛人との関係について釈明する機会を与えようと考えたのである。ショーグンヨシムネは、妖怪に関して、その対応法についてNAGASAKI出島のカピタンに知恵を借りることができたらという希望ももちろん持っていた。
そういうわけで、NAGASAKI出島のカピタンは、妖怪と紅毛人の関わりについてショーグンヨシムネに釈明した。そして、妖怪という存在について、自分の考えというものを、ショーグンヨシムネに伝えた。NAGASAKI出島のカピタンの妖怪について、ショーグンヨシムネに話したことは、ショーグンヨシムネがあらかじめ想像していたものとはかなり違っていた。NAGASAKI出島のカピタンが言うには、当時ジパングに妖怪が蔓延るようになったのは、世界的にも同様の傾向があり、その原因は、この世界的な時代の流れによるものだという。
そこで、ショーグンヨシムネは、NAGASAKI出島のカピタンにこの妖怪事象を生み出す世界的な傾向とは、具代的にはどういうものを指すものか聞いた。
NAGASAKI出島のカピタンは、ショーグンヨシムネの質問に一言で答えた。世界的に妖怪の事象を多く生み出している傾向とは、「科学(science)」なのだという。人間というものは、近年、自分の頭脳に、頭脳の持つ力に大いに自信を持つようになった。
実際に「科学」に頼ることにより、自分たちの周りの世界を変えることができた。少なくとも制御することはできた。人間は、神や信仰に頼らなくとも、そんな風に意識することなくそういう考えを持つようになってきた。これが、人間が手にしたもの「科学(science)」というものもたらしたものなのだ。
「科学」を手に入れ、人間は、少し信仰を失った。そのせいで、これまでは、信仰の力により抑え込まれてきたものたちが、復活し始めたのだ。