第1章妖怪飛脚 YOSIWARA余情 追加 終わり
これで、第一話は終わりです。
母親の三回忌なので、準備のため少し休みます。
吾輩は妖怪飛脚様!
人は吾輩をドラゴンちび太!と呼ぶ。
吾輩は、姿はニャンコに似ているが、血筋から言うと、吾輩は、間違いなく「龍」そのものなのだ。つまり、ドラゴンであり、キャッツではないのだ。それゆえに、吾輩に対して「ニャンコ!」などと呼びかけるのは無礼極まりない行為である。
吾輩が、ドラゴンであることを疑うヤツがいるが、それは間違い。吾輩がドラゴンであること。それは、正真正銘の真実で、誰も否定することは出来ない。
吾輩は、ドラゴンちび太は、先祖伝来の時空を超えて「天翔る」という素晴らしい能力を生かして妖怪飛脚の業務に、日々頑従事している。
ところで、オレ様、この頃ドラゴンちび太は、ちょっと機嫌が良くないよ! みんな、わかっていることだろうけどね。それは、仕事のこと。ホント、吾輩はムカついているよ。昔、吾輩がフランス料理店に行ったら、吾輩をみくびったシェフのやつが、吾輩のディナーのメインディッシュに「ねこまんま」を出してくれたよ。今、吾輩は、その時と同じくらい腹が立ってしまって収まらないのよ。
ところで、ねえ、なぜ人間というのは、他人のミスに寛容になれないのだろうね。
世の中、どんな素晴らしいプロフェッショナルだって、間違いをしでかしてしまうことはあるものだよ。確かに、吾輩は素晴らしい血筋を引いたドラゴンの妖怪飛脚ではあるものの、絶対間違いは犯さないなんてことは、ないのだよ。
だから、吾輩が手紙を一通、小さな誤配をしてしまい、取るに足りない小国、ジパングとやらで騒動が起こったからといって、吾輩はそんなに悪者にされるのかね?
間抜けで、小心者の国、ジパング。そこのショーグンや大商人たちが、俺が誤配したあの手紙のせいで、完全にビビってしまったらしい。
本当に笑わせるぜ。
ショーグンの子分や大商人たちが、予約していた宴会を全てキャンセルしてしまった為に、今度はYOSIWARAは大混乱に陥ったそうだな。その話については、YOSIWARA在住の妖怪たちからいろいろ情報が届いている。
しかし、そういう騒動というのは、長く続いた鎖国のために、頭がボケかかっているジパングのセレブには、かえって良い刺激になったと言えるかもしれない。
しかし、あれだけの騒動が起こって、死者が数名というのは、吾輩の徳がやはり優れているという証拠であるだろう。
ところで、吾輩の誤配が原因となった騒動で、死んだ人間の中に「与平」というやつがいるらしい。
実は、この「与平」というやつが死んだ為に、ウチの妖怪飛脚の会社や、天帝様の事務所を通して吾輩、つまり、ドラゴンちび太の方にいろいろクレームが届いているらしい。
「細かいことは忘れたよ」というのがモットーの吾輩、ドラゴンちび太であるのだが、「与平」というやつのことについてはなんとか手を打たないとまずいという空気になってきた。
確かに、面倒くさいのではあるが、「与平」という人物や「与平」の死について、吾輩、調べてみようという気持ちにはなっている(てこと)。