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呪血〈呪われた転生者の血塗られた学校生活〉  作者: 上部 留津
第1章 転生、そして始まり
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第28話「次の日……? Ⅱ 」


 学校に着いた弟子五人は、いつも通り自分の教室へと向かい、それぞれのやりたいことをした。


 リーナとデセリンはクラスメイトと談笑し、ジェイルは一人で鍛練をし、メロは図書室で勉強をし、チェリードは寝る。



「みなさんおはようございまーす!」


「「「おはよーございまーす!!!」」」


 朝の自由時間があっという間に終わり先生が教室に来ると、生徒たちは明るく大きな声で挨拶をする。


()()()通常通り、パターン③の授業です! 午後は皆の固有能力の訓練を行うので、お昼ご飯を食べ終わったら校庭に集合してくださーい!」


(へぇ~。同じ授業が続く日もあるんだなぁ)


 先生が言うには今日も昨日と同じ授業割らしい。だとすれば、一時間目は歴史、二時間目は数学、三時間目は医学、四時間目は地理ということになる。


 しかし、チェリードがふと辺りを見渡すとほとんどの生徒が不思議そうな顔をしていた。


(ん……? どうしたんだみんな)


 気がつけば、生徒たちは隣の人とヒソヒソと話し始めていた。生憎チェリードは隣の人から話しかけられなかったので真相がわからなかったが、より一層、元から抱いていた違和感が大きくなっていった感じがした。



 そして一時間目、ついにその違和感の正体が判明した。


 歴史担当のケル先生が開始時刻と同時に来て、一時間目の授業は始まった。しかし、授業が始まってすぐ彼は気づいた。


「今日は、魔法の歴史についてやっていこうと思います」


 キリッとした表情のケル先生はそう言うと、黒板にスラスラと文字を書き始めた。しかし、その内容が彼にとってあまりに不自然であり、不気味に感じられた。


「『最古の四士』がとある儀式をしたことによって、魔法の歴史が始まったわけですが、その儀式が起きた場所が資料のここに…………」


(あれ? この内容昨日も…………)


 ケル先生は何を思ったか、昨日と全く同じ内容をやり始めた。さらに付け加えるなら、先生の言葉は恐らく、一言一句全く同じである。


(もしかして、先生昨日やったのを忘れているのか?)


 チェリードは一瞬先生を疑った。しかし、その疑念は先生の人柄を考えればすぐに失くなっていった。


(でも、あの先生がそんなミスするわけねえし…………一体どういうことだ…………?)


 ケル先生は、常に真面目な先生だった。いついかなるときも冷静沈着で、到底ミスをするような人間ではなかった。授業の内容も可もなく不可もなく、しかし時間配分は常に完璧だった。


 そのため、どうにも先生がそんな単純なミスを犯すわけがないと、チェリードは思っていた。


 それに、もし仮に先生がミスをしていたとして、誰かがそれに気づくはずだった。しかし、それを指摘する生徒は誰一人いなかった。


(ん~? なんで誰も気づかないんだ?)


 チェリードは、これは自分がおかしいのではなく、周りがおかしいのだと思い込んでいた。なぜなら、彼のノートには昨日やったはずの歴史の内容がしっかりと書かれていたからだ。



 結局この状況が理解しきれないまま、二時間目、三時間目、四時間目と、昨日既にやった授業を右耳ら左耳へと聞き流し、午前の授業は終わった。



「一体どういうことなんだ……?」


 学食にて買ったミックスサンドイッチを頬張りながら、彼は今日の異変について頭を悩ませていた。


(なんで昨日と同じことを繰り返しているんだ… ……? もしかして、自分だけ昨日にタイムスリップしたのか? いや、でもなんか違う気がするんだよなぁ……)


 頭をフル回転させて考えようにも、この現象について全くわかっていない彼にとって、これが一体なんなのかは知る由もなかった。



「どいてどいてーー!」


「おい邪魔だ!! どけ!!」


「うええええん! 私の番だったのに~!!」


 ふと、学食の売り場の方を見ると、そこには既視感のある光景が広がっていた。というより、むしろ昨日と全く同じ光景が広がっていたと言う方が正しいだろうか。


 全くもって同じものを二回見せられたチェリードはただ一言、


「気持ち悪」


 と言い、無理やりサンドイッチを口の中に詰め込みながら席を立ち、不機嫌そうな顔のまま教室へと足を運んだ。



 教室へ戻ると、デセリンがチェリードに気づき声をかけてきた。


「チェリードおかえり。なんか体調悪そうだけど大丈夫?」


 デセリンが心配そうに声をかけたのを見てチェリードは、


「ああ」


 と生返事をして、そのまま自分の席に座った。そして寝た。


 一瞬、チェリードの中に「デセリンにこの現象について相談しよう」という案が浮かび上がったが、彼も他の生徒と一緒で、午前の授業は普段通りに受けていたので、到底相談しようとは思わなかった。


「なあ、本当に大丈夫なのか?」


 よっぽど心配になっていたのか、デセリンがまたチェリードに声をかけた。そんな姿を見たチェリードは彼の優しさに感心しつつも、


「ありがとう」


 と言って、教室から去ってしまった。



――――――――――――――――――――――――



 そうして、彼が行った先はトイレである。


「ヴォォエエエエ!!」


 こじんまりとしたトイレの中で、彼の嗚咽する声が嫌というほど響いていた。


 彼が「気持ち悪」と言っていたのは、どうやら本当に気分が悪かっただけらしく、同じ光景を二回見たことへの気持ち悪さではなかったようだ。


 しかし、便器に吐き出された自分の嘔吐物を見ると、微かに血が混じっていたことに彼は気づいた。


「うわっ、まじかよ」


 まさか吐血しているとは思ってもみなかった彼は、それを見てまた吐いた。そしてその後は、昼休みが終わるまでトイレに籠りっきりだった。


(ああ……マジで最悪だ…………)


――――――――――――――――――――――――



 昼休みが終われば、次は固有能力の訓練が始まる。クラスメートの皆が校庭に集まり、思い思いに練習を始める。


 そんな中で、彼はまたカデン先生の指導を受けることにした。


「ん、どうした」


 カデン先生は校舎の壁に寄りかかって生徒の様子を眺めていた。


「先生、俺と戦ってください」


 彼は先生の真ん前に立ち、自信満々に言った。きっと彼は、「昨日も戦ったから今日は善戦できるだろう」と思っていることだろう。


「なんで俺なんだか……」


「先生が近接戦闘のスペシャリストだって聞きました」


 チェリードがそう言うと、先生は呆れた顔をしながら、


「なるほどな……わかった」


 と言い、寄りかかるのをやめて準備運動を始めた。



「もっと広い所で戦いたい」というチェリードの希望に応え、二人は校庭の真ん中の方へと向かっていった。


 そしてその道中、彼は次のように言われた。


「言っとくが手加減はしないからな、気を付けろよ」


「はーい」


 先生の忠告に対して、彼は余裕の表情で返事をした。その自信は一度先生の攻撃を見たことに対する有利的状況の現れだろうが、とはいえ先生は近接戦闘のスペシャリストだ。


 先生は彼の態度に少しばかりの不満を持っていたものの、それを注意することはなかった。


「うし、じゃあ始めるぞ」


 そして特に昨日と変わらず、カデン先生との稽古が始まった。

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