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呪血〈呪われた転生者の血塗られた学校生活〉  作者: 上部 留津
第1章 転生、そして始まり
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第25話「修行、授業、訓練 Ⅳ 」


 結論から言ってしまえば、チェリードの戦い方は先生に言わせると「だいたい40点」とのことだった。


 まず、チェリードは右手に「反射壁(リフレクター)」を展開したまま、真正面から先生に向かって走り出した。そして、展開した「反射壁」を先生に殴りつけるために振りかぶった。


「おいおい、そんな単純な攻撃――――」


 しかし、チェリードもそこまで馬鹿ではない。殴りかかる寸前、左方向に一歩、二歩とステップを踏み、攻撃のタイミングをずらしながら先生を左から殴りかかった。


「はっ!」


「おっと」


 先生はひょいっと攻撃を避けた。すかさず彼が次の攻撃を放つために構えたその瞬間、彼の視界がぐるりと一回転した。


「うわっ!」


「…………そういえば、『告白(カミングアウト)』がまだだったな」


 尻餅をついた彼を見ながら、ふと思い出したかのように先生は呟いた。彼と目線を合わせるためにしゃがみこんで、先生は自分の能力について話し始めた。


「……固有能力は『転倒(フォルダウン)』だ。効果は対象を転ばせられる。それだけだ」


 先生は「ほらよ」と言いながら手を差し伸べ、チェリードはその手を掴もうとした。が、先生にそんな慈悲はなかった。


「うわっ!!」


 先生が手を掴み返した瞬間、また彼の視界がぐるりと回転した


「油断は禁物だ。常に相手を疑いながら戦え」


 彼が転生者だということを知ってのことか、彼には対する言い方はかなり厳しいものだった。その無愛想な顔つきも相まって、先生の言葉は彼に強く刺さった。


「相手の行動を把握して、弱点を正確に捉えて攻撃する。元いた世界で習わなかったか?」


「ッ…………あっちはかなり平和だったんでね……だからこうして戦ってるんじゃないですか!」


 勢いをつけて立ち上がったチェリードは、両手にそれぞれ「反射壁」「防御壁(プロテクター)」を展開しながら、相手の背後に回り込みながら攻撃を仕掛けた。


「はいよ」


「うわっ!」


「ほれ」


「うがっ!」


「はいそこ甘い」


「いって!!」


 攻撃を仕掛けては転ばされ、仕掛けては転ばされ…………さすが近接格闘のプロとでも言うべきだろうか、チェリードが繰り出す猛攻をいとも簡単に避け続け、その度に彼を転ばしていた。


 戦闘を始めてから約一時間後、砂埃が巻き上げるなか実践練習が終わりを告げた。


「――――総合、だいたい40点。光る部分はあるが、攻撃が単調すぎる。もっと頭使え、以上」


「はぁ……はぁ……ありがとう……ございました……」


 練習が終わってもなお、先生は息一つ上げることはなかった。それに加え、彼から先生に触れることは一度もなかった。


「じゃ、いくからな」


 コートを羽織った先生の後ろ姿を見ながら、もしかしたらとんでもない人と戦っていたのかもしれない、と彼は思った。



 こうして学校での一日が終了したチェリードは、帰りの挨拶をした後、他の弟子と合流して長い長い帰路を共に歩いた。


「はぁ~……疲れた~…………」


「もうヘトヘトだよぉ~」


 今日は固有能力の練習があったため、チェリードとリーナはひどく疲れていた。歩くことが精一杯、といった感じで、足取りを見てみるとふらつきながら歩いているのがよくわかる。


 そんな様子を見せる二人を横目に、デセリンはニヤニヤと笑っていた。


「二人とも大丈夫? 帰ったら師匠との特訓だよ?」


「「え~! マジで!?」」


 目を真ん丸と開けながら驚く二人。更に疲れることが確定した二人はたちまち意気消沈していった。


「はぁ…………そんなんじゃ命がいくつあっても足んねえぞ」


 ジェイルは二人の気概の無さに呆れた顔を見せていた。


「トホホ……これじゃあちっとも休まらねえじゃんか……」


「うん……そうだね……」


 だんだんと近づいてくる師匠の家を遠目に、二人は残り短い道のりをトボトボと歩くのだった…………




 弟子の五人が家に着くと、庭の手入れをしていた師匠がこちらに気づき手を振った。


「おー! お帰りお前たち!」


「ただいま、師匠」

「師匠……ただいまです」

「…………」

「ただいまぁ…………」

「師匠ただいま……」


「早速特訓するから、早く準備しな」


「「「「「はーい」」」」」


 師匠に言われた通り、五人の弟子は準備をするために家の中へと入り、各々の部屋へと入っていった。



 そして数分後、準備が終わった弟子たちは師匠がいる庭へと走って向かった。


「よし、お前たち、全員来たね」


 今日は


 師匠が確認のため一人ひとり指を指しながら点呼を取っていったが、一人いないことに気づいた。


「おや? チェリードはどうしたんだい」


 てっきり全員いたと思われたが、チェリードがいないことに気づいた。


「さあ……? まあもうすぐ来ると思いますが」


 師匠の言葉にデセリンが答えると、師匠は近くの丸太に腰を下ろしながら、「じゃあ少し待とうか」と言った。



「――――みんなごめん、待った?」


 しばらく待っていると、やっとチェリードは庭に現れた。


「随分と遅かったじゃないか、チェリード」


「あー……ちょっと腹を壊しちゃってて」


「そうか」


 彼の腹の調子など気にもとめず、師匠は生半可な返事をして今日の特訓の内容についての説明を始めた。


「今日はチェリードの固有能力の実験だ」


「実験?」


 リーナが聞き返すと、師匠はニヤッと笑いながら説明を続けた。


「ああ、こいつの能力がどれくらいのものか気になってね。折角だし、()()()でも受けさせてやろうか」


「あの技」と聞いた途端に、デセリンが、


「! あ~! あれですね!」


と、分かったような顔をしながら手をポンと叩いて、庭の奥の方へと走り出した。


(ん……? 何をする気だ……?)


 一体どんな技なのかと考えているところに、師匠が近寄ってきて言った。


「チェリード。お前にはデセリンの魔法を固有能力で受け止めてもらう」


「あの魔法?」


 師匠が指を差している方向を見てみると、デセリンが雲のように不明瞭な透明な輪っかを作っていた。そしてその輪は次第に魔法陣へと変化していった。


「デセリンはどんな魔法でも発動することができるのは知ってるね」


「はい」


「その才力を生かして、あいつは最近とんでもないのを生み出しちまったんだよ。よく見ときな」



 風が一段と強さを増していくのを肌で感じる。所々に咲いている花々からは厳かな雰囲気が伝わってくるような気がした。


 そしてデセリンは、魔法を放つ準備をした。

カデン・ルック

 固有能力「転倒(フォルダウン)

 対象を転倒させることができる。なお、対象は誰でも良い。


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