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呪血〈呪われた転生者の血塗られた学校生活〉  作者: 上部 留津
第1章 転生、そして始まり
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第23話「修行、授業、訓練 Ⅱ 」


 チェリードが目覚めたのは、弟子の皆が学校へ出発する寸前の時だった。


 パチーン!


「いってええ!!」


「お! ついに起きたか」


 師匠の三度目のビンタを食らった瞬間に彼の意識は戻った。飛び起きた拍子でベッドから転げ落ちてしまう。


 涙目になった目元を擦ると、なぜか赤い水滴が指に付着した。しかし彼は気にもとめずにその場に立ち上がった。

 

「イタタ……あ、そういえば今日学校じゃん」


 寝ぼけているのかビンタの衝撃でさっきまでの記憶が無くなったのか、急に真顔になっては当たり前のことを言い出した。


「そうだよ、ほら、あの子達はとっくに準備してるよ」


 玄関の方に目をやると、弟子の四人が玄関の扉を開けるのが見えた。それを見てやっと頭が回り始めて、


「やべ! 早く準備しないと!」


 と慌てながらも急いで自分の部屋に戻り、教科書やらノートやらが入ったバッグを背負い、


「師匠、行ってきます!」


 と言いながら玄関を飛び出した。



 もう既に四人は彼を置いてけぼりにして先に行ってしまっている。彼は少し寂しいと思いながらも小走りで四人に近づいた。


「お! チェリード君! 遅かったね」


 デセリンは後ろから追いかけてくるチェリードに気づいて、後ろに振り向きながら大きくを手を振った。


「もう~、リド遅いよ~」


「ごめんごめん」


 笑いながら軽く謝る彼を見てリーナはフフッと笑った。


「――――二人って、仲が良いんだね……」


 普段無口なメロが、二人が楽しそうに話しているのを見て、興味ありそうな様子で聞いてきた。


「え! そうかな~」


「まあなんだろーな……俺らってなんか気が合うんだよな」


「そうそう! 話してて楽しいんだよね!」


「へぇー……そうなんだ、フフ」


 二人の和気あいあいとした会話に、メロはただただ微笑みながらこちらを見ていた。



「――――話してないで、さっさと行くぞ」


 痺れを切らしていたジェイルが、不満そうな顔をしながらチェリードとリーナに向かって言った。


「「はーい……」」



 そしてやっと、五人の弟子は学校へと向かうこととなる。




 学校に着くと、丁度登校する時間帯のピークだったのか、校門を通り抜けると大勢の生徒が校舎へと向かっていた。


 花壇の花々は優雅に咲き誇りながら生徒たちを出迎え、凛々しい顔付きをした校長の銅像は今日も一点を見つめている。


 五人はいつも通りに校舎の昇降口へ向かい、靴を脱いで木組みの靴箱に入れつつ上履きを取り、各々の教室へと向かった。


 と言っても、五人の内、メロ以外は同じクラスなので、昇降口付近で「またね」と皆で挨拶を交わした後、教室へと向かった。



 五人の弟子が通っている「学童教育校」、通称「学校」というのは、十歳から十五歳までが通う、五年制の教育施設である。学校は、国や地域によって義務化がなされていたり六年制になっていたりと、その在り方は場所によって異なる。


 そしてここ、「オルタール王国立学童教育校」では、通常の五年制を採用しており、一学年を五クラスに分けて、授業を行っている。なお、チェリード、リーナ、ジェイル、デセリンの四人は、ライナーズ先生が担任の「()組」、メロは、カデンという先生が担任の「(ヨン)組」である。


 なお、リーナはかつてチェリードとは違うクラスだったが、森林実習の件があってか同じクラスになった。これは校長のご厚意によるものらしい……



 窓の隙間からそよ風が流れ込んでくるⅡ組の教室に着いたチェリード達は、各々の席に行って、バッグを下ろす。バッグの中から教科書やノートなどを取りだし、それらをまとめて机の引き出しに入れた。

 

 これらの準備が終われば、先生が来るまでは生徒達の自由時間となる。


「はあぁ~…………」


 チェリードは朝学校に着くと、腕を枕代わりにうつ伏していた。


 彼がかつて虐められていた時、朝学校に来たらすぐに寝たフリをして朝の自由時間を過ごしていた。寝たフリをしていれば、無反応な自分を見ても意味がないと察した虐めっ子が寄り付かなくなるのでは、と考え、彼が行き着いた一つの案だ。


 毎日これを続けた結果、自然と体に染み付いてしまい、朝学校に来ては机にうつ伏して眠ることが日課となった。これのせいで彼は未だに友達がほとんどいない。



「みんなおはよー!」


「あ、リーナちゃんおはよー!」



「おはよう!」


「お、デセリン! 遅いぞ~」


「いや~ごめんごめん」



 一方、リーナとデセリンはクラスメートと仲良く会話を交わしている。リーナは途中から学校に来た編入生だったが、その持ち前の明るさですぐにクラスメートと仲良くなっていた。


「ねえ、今日学校が終わったら商店街の方に行かない?」


「いいねいいね! リーナちゃんは?」


「あ~ごめん、今日は用事あるんだ~」


「え~そんな~!」


「でも明日! 明日なら大丈夫だから明日行こ?」


「うん! わかった!」



「なあデセリン、あの魔法ってどうやって打つんだ?」


「あの魔法って?」


「ほらーあれだよ、一週間前に見せてくれためちゃくちゃ光ったやつ」


「あーあれか! あれはね、『初級光魔法(ライテン)』を打った後に『初級雷魔法(スピカル)』を光の魔法に向かって放つととても良く光るんだ」


「へーすげー!」


 デセリンは、最近魔法と魔法を掛け合わせることに興味を持ったらしく、それについての話をしているようだった。


「………………」


 二人の会話を盗み聞きしていたチェリードは、また大きい溜め息をついて、


(どこで間違えたんだろ……)


 と一人寂しく嘆くのだった。



 そのまた一方、ジェイルは机に荷物を置いてすぐに教室を出ていってしまった。


 そして彼が向かっていたのは、「魔法訓練室」という部屋だった。ここで、自分の固有能力を使った技の研究するのが彼の日課となっていた。


「はああっ!」


 魔法訓練室には三つほど人の形をしたダミーの人形が立っており、そこに向かって技を放つことで、技の練習を行っているのだ。


「『炎槍・ブレイズストライク』!」


 身の丈の鎖を二本生成し、それらを捻るように絡ませ、一本に槍にした鎖をジェイルは片手で持ち炎の魔法を纏わせた。そして放たれた業火の一閃は人形を燃やしながら心臓部を綺麗に貫いた。


 じわじわと灰になっていく人形を見ながら、ジェイルは部屋の端にあるクローゼットの中から代わりの人形を取り出し、灰の上から置き直した。


 その後、燃え尽きた人形の灰を掃除し、この部屋を後にした。そろそろ先生が教室に来る時間だったので、彼は早歩きで教室に向かった。



 ジェイルが教室に戻ってきた時、丁度ライナー先生が前のドアから入ってきた。それに気づいたクラスメートはガヤガヤと話しながら自分の席に座った。


「みなさん、おはようございまーす!」


「「「おはよーございまーす!」」」


 いつもと変わらない日常。毎日先生の挨拶を聞いて一日は始まる。彼女の快活な声に釣られ生徒の声も元気に聞こえる。


「今日は通常通り、パターン③の授業です! 午後は皆の固有能力の訓練を行うので、お昼ご飯を食べ終わったら校庭に集合してくださーい!」



 この学校では、午前中は四時間座学を行い、午後二時間魔法や戦闘の訓練を行うのを基本とし、各教科や訓練内容の組み合わせで、計五種類の時間割を作成している。その中でも今日、このクラスは「パターン③」という時間割のようだ。



「というわけで、皆さん頑張りましょー!」


「「「はーーい!!」」」


 こうして、いつも通りの学校が始まった。


 一時間目は「歴史」だ。

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