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短編集【不思議】

マックスウェルの双子の悪魔

作者: ポン酢

マックスウェルの悪魔という言葉がある。


物理学者の思考実験から生まれた言葉で、物凄く簡単に説明すると、ある物質の中に、エネルギー等を分別するヤツがいると言うものだ。

例えば金属の中にこの悪魔がいて、動き回る熱エネルギーをある場所から左側だけに集めたとしよう。

悪魔は動き回るエネルギーを、右側から左側に行く時は扉を開けるが、左側から右側に行こうとする時は扉を開かない。

するとじきに、左側だけ熱エネルギーがある状態になり、右側が冷たくて、左側が熱い金属になる。

物凄く簡単に言ってしまうと、そう言う事をする架空の悪魔だ。

物理学的にはもっと深いものなのだが、今はそんな事は置いておこう。


実はこの悪魔、架空ではなく、実在する。

当の悪魔は自分がマックスウェルの悪魔と呼ばれているとは知らないが。

ただ、この悪魔には知られていないことがある。

彼には双子の弟がいるのだ。

弟は兄の後にくっついてまわっている。

そして弟が何をするかというと、兄が選択的に分けていくものを、ことごとく、逆の方に戻すのだ。

なのでマックスウェルの悪魔が一生懸命仕事をしても、弟が戻してしまうので、現実的には何も変化が起こらないのだ。


今日も今日とて、兄は奇跡を人間に見せてやろうと、一生懸命、仕事をする。

そこにひょっこり、弟が現れる。

弟も、今日も今日とて、兄が選別して行くものを、どんどん元の方に戻していく。


「あっ!!お前!!何で戻すんだよっ!!」


それに気づいた兄が怒鳴る。

弟は平然と作業を続ける。


「むしろ、何で兄ちゃんはそんな事してるんだよ?見つかっちゃうだろ?」


「見つかって何が悪い!?偉大な悪魔の業を見せて、人間どもを驚かせてやるんだ!!」


「あのな、何度も言ってるけど、もし兄ちゃんが見つかったら、人間は恐れ戦くどころか、兄ちゃんをめちゃくちゃ利用するぞ?」


「いいだろ!?我が前に人間どもがひれ伏すのだ!!」


「いやいや、どう考えても、兄ちゃんが酷使されてぼろぼろになるだけだから。」


そんな事はさせまいと、弟はせっせと兄の起こす悪魔の業を台無しにしていく。


「人間などに、我々悪魔が負けるものか!!」


「兄ちゃんは何も知らないんだな?悪魔ってのは、人間から生まれるんだぞ?だから悪魔より、人間の方が恐ろしいんだよ。」


「何を言っている?何の力も使えない人間が恐ろしい訳があるまい!!」


「はいはい。そうですね。」


「だから!!せっかく分けてるのに!戻すな!!」


「でも、これが俺の仕事なんだもん。仕方ないだろ?」


マックスウェルの悪魔という言葉がある。

もしもこれが存在したならば、画期的な事が起こるだろう。


そしてマックスウェルの悪魔は、実は実在する。

ただし、知られていないが彼らは双子だ。

弟は兄の後にくっついてまわっている。

兄の起こす悪魔の業を台無しにしていく為に。


だから、マックスウェルの悪魔はまだ、架空の存在でしかないのだ。



何でこんな変な話を書いたかと言うと、テーマが「双子」で、双子、双子、と考えていたら、意味もなくマックスウェルの悪魔の話を思い出して、何となく書きました。

これを教えてくれた物理教授は「物理学者が皆、超常現象を否定する訳じゃない。不思議な事があるから、それを解き明かそうと思うんだ。わくわくするじゃないか。」と言ったのが目から鱗でした。

身近にいた物理人間が物凄く超常現象を毛嫌いしていて、生化学を意味不明(個体によって結果の差が出るから)と言うから、何となく物理は敬遠してきたけど、見方が変わった出来事でした。

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