転校生
新連載です
宜しくお願いします!
1話です
「さてっ、今日も書きますかねっ」
僕、夏目龍二は数ヶ月前から遂にweb小説を書き始めた。最近順位が50番以内に載るほどの実力はついてきたみたいで、テンションが上がり、とてもウハウハだ。
内容は恋愛物で所謂“幼馴染物”だ。僕には小中高と一緒に過ごした幼馴染と呼べる女子がいない。だからそういう内容に憧れがあるのかよく書く。
その小説のメインヒロインである幼馴染は茶髪がかったショートヘアで頭の左側にリボンの髪飾りをしており、良い感じに少しムチムチした体形の美少女だ。
「ここで、幼馴染が少しデレると……」
『もう優司ったらーっ、私に黙って勝手に行きたかったチケットの応募するんだからっ。もう少し早く言ってよねっ』
『わりーわりー、そう怒るなって。雅にサプライズしたくてさっ』
『もーー。でもまっ、ありがとう♡』
「かーっ、こういう恋愛して~~っ」
僕は一人悶絶しながら自分の部屋で小説を執筆する。もう高校生活も既に1年の二学期に突入し、部活は勿論文芸部だ。子供の頃から小説家を目指しており、高校生になって遂にパソコンを手に入れてからweb小説を連続投稿しまくるようになった。
僕は『夏目隆二』名義の本名すれすれのペンネームで執筆しているが、今のところ周りにバレた感じはない。
「今日は誰かから感想来ないかなーっ」
作品を投稿した後に確認がてら僕はぽちぽちっと感想欄を見てみると、新たな感想が来ていた。
「おっ、やったーっ。嬉しーーっ」
書いてて何が嬉しいかってやっぱり読んでくれているのが分かる感想が来ることだ。久しぶりの感想に感極まる。
「どれどれ感想は……っと♪」
投稿者:MSRE
良い点:可愛らしい幼馴染像が伝わってきて、そういう女子に憧れます。
夏目さんの幼馴染愛がとても伝わってきます。どんどん書いて彼女の魅力を引き出して下さい。
「うひょーーっ、めっちゃ褒められたっ! 今日はテンション上がるな~っ!!」
憧れだってっ。そこまで言われると作家冥利に尽きるな~~。
僕は自分の部屋で大きな声を出していると、隣の部屋どたどたどたと歩いて来る音が聞こえてくる。
「うっさいなー兄ちゃんっ。今は音楽聴いてるんだから、もう少し静かに喋ってよっ!」
「……お、おう。悪い……」
妹の夏目美琴、市内の中学2年生で兄を煙たがり、絶賛思春期中である……。
キーンコーンカーンコーン……。
翌日の昼休みになり、友人の宮森敦と昼休みを食べる。僕がweb小説を書いていることを知っている数少ない友人の一人で、画に描いたようなイケメンだ。だから非常にモテて、学校のアイドル的存在と化している。まぁ、こいつとは小学校から同じで所謂腐れ縁(幼馴染ではない!)である。
「龍、最近調子はどうだ?」
「まぁ、順位は最近50番以内に入ったりするな」
「お、やるじゃん。それはなかなか重畳だな」
「なに難しい言葉使ってるんだ?」
「まあ、良いじゃん。で、何か感想とか来る訳?」
「まあな。昨日かなりの良き感想が来た」
「童貞極めているのに、恋愛小説書けるのが不思議だなっ。童貞なのにっ」
「ばっ、うるせっ」
ニヤけながら言う親友に僕は微力な抵抗を試みるだけだった。
そして放課後になると週に一度の文芸部の活動がある。ここはある種変人の巣窟と言うかオタクの巣窟になっており、文芸部なのに漫画持ってきたり、仕舞いには漫画描いてる輩までいる。けど男女ともに仲は良いし、話が合うから辞めるつもりはない。
「夏目氏、◯△文学賞に応募する作品の最近の執筆はいかがです?」
「あー、それがね~、web小説で手一杯なんだよ」
「夏目氏の作品読んでいますが、常に投稿していて感心しているばかりです。小生も見習わないと」
「書くのが好きだからねーっ。だから山上氏も頑張ってくれ」
そうして互いを励まし合い切磋琢磨する仲間がいて僕は本当に楽しい。
ある日のこと、最近よく感想の来るMSKEさんからDMが来る。
『色んな作品を書いてますが、なかなか悩ましいと思いますが、今のところ一番好きなメインヒロインは誰ですか?』
う~ん、これは難しい質問だなーっ。どう答えるか。
『やっぱり今書いているヒロインの柳田雅ですかね』
『返信頂きありがとうございます』
というコメントで今日の執筆は終わった。その日の夜ある夢を見た。昔に遊んだどこか懐かしい場所で、女の子とそこで遊んでいた。
「わたし、りゅうくんのおよめさんになるから」
「うん……ありがとう☆◯♤ちゃん」
名前はざざっと途切れながら言うのみだった。翌朝さっきまでの夢を見て起きた僕は不思議な気分になった。
(何の夢だろう……。昔の……思い出? それにしては場所は分からなかったな……)
「なんかうちのクラスにかなりの美少女が来るらしいぞ」
どこから聞きつけたのか学校に着いた早々から宮森は喜びながら言う。僕はため息を漏らしながら返事をする。
「あのな~、お前5人かけ持ちして、まだ他の女子に興味あるのかよ?」
「転校生は別腹だろ?」
どんだけ好きなんだよ? イケメンで女好きだから困った性格だ。
僕は親友のそこなしの女子への興味に呆れるばかりだった。まあ、けど女子への対応もイケメンだから文句は言わないことにしている。そして担任がクラスに入って来て、
「えーと、転校生を紹介する。水島っ、入ってこい」
そこに現れたのは現実かと思うほどの美少女だった。茶髪がかったショートヘアで頭の左側にリボンの髪飾りをしており、良い感じに少しムチムチした体形の美少女で、そうそれはまるで……、
「……雅?」
「初めまして、私は水島梨江です。皆さん宜しくお願いします」
「ん? 水島梨江?」
小学校からの親友は僕が独り言を言ってから不思議そうにそう言った。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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