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末路

*フランソワ視点です。


魔王が復活した日、俺は王宮にいてアランと会っていた。


スズとの結婚の許可を貰うためだ。貴族って言うのは結婚も国王の許可を得なくちゃならない。ずっと前に申請していたのだが、ようやく許可証が発行されることになったのだ。


正直面倒くさいが、スズと結婚するために必要であれば、どんなことでも面倒だなんて言っていられない。


アランに「一生独身貴族でいくと思っていたら、まさかオデットの娘なんてお前もなぁ・・・」と揶揄われていたところに、突然タム皇国から緊急の使者が到着した。


三日前に魔王の剣が盗まれたという。フィリップとミシェルは既にリシャール王国に入っているかもしれない。


俺はすぐに魔王の森に向かうとアランに伝え、そのまま森へ出発した。


魔王の森では既に火の手が上がっていた。警備の騎士達が慌ただしく消火活動を行っている。


俺は真っ直ぐ昔教会があった場所へ向かった。そこが魔王の封印された場所だからだ。


しかし、俺は一足遅かった。


そこには既に先客があり、予想通りフィリップがまさに魔王の封印を解こうとしているところだった。


俺が森の中心に足を踏み入れた時、フィリップは赤黒く不吉に輝く魔王の剣を振り上げ、封印がある場所を切り裂いているところだった。


空間に大きな穴が開き、そこから凄まじい勢いの真っ黒い衝撃波が放たれる。


その衝撃波を直に受けたフィリップの体は空中に大きく投げ出され、木の幹にどしんとぶつかり、そのまま気を失ったようだった。


空間に開けられた大きな穴が禍々しく震えだす。


そこから憎々しげな顔をした高齢の精霊が出てくると、その後に数多くの魔獣が続く。


そして、魔獣達に続いて巨大な手が穴からにょきっと現れた。それが巨大なヒヒのような魔王だった。


魔王はその凄まじい威圧感で大気をぶるぶる振動させながら地上に降り立った。


魔王が咆哮し口から炎を発射すると、ものすごい振動と共に爆発が起こり、黒煙が立ち上る。


情けないが、俺は恐怖で足が動かなかった。


魔王はひとしきり暴れた後、恐怖のあまり腰を抜かして地面に這い蹲っているミシェルを見つけた。


彼女を人差し指と親指で軽く持ち上げると、魔王はヒヒの顔でニンマリと嗤い、彼女を口の中に入れた。


・・・喰った!


俺の恐怖は更に高まり、動くことができなかった。


次に、年老いた精霊が何かを魔王に話しかけながら這いつくばっている。


その精霊も魔王は摘まみ上げると、そのまま口の中に入れた。


二人を喰った後、魔王は再び暴れ出した。


手あたり次第に炎を吐き、森が焼けていく。黒煙で目と喉が痛い。


呆然と立ち尽くしていると魔獣達が襲い掛かって来た。辛うじて魔獣達を退けると、背後から「フランソワ!」という声が聞こえた。


振り返るとリュカが走って来るのが見えた。


「すまない・・・封印が解かれるのを止めることが出来なかった」


「大丈夫だ。それより一旦ここから避難するぞ。このままだと焼け死ぬ!」


俺は半ばリュカに支えられて、そこから逃げ出した。


その後オデットが現れ、俺達は魔王封印のために異世界の出入り口がある森の中心に戻った。その最中にスズが精霊王たちに助けを求めたのだ。



そんな俺の話を聞いて、精霊王とその兄二人は顔色を変えた。


「・・・トールキン。トールキンはまさか魔王に与するほど落ちぶれていたのか・・・?」


と精霊王が嘆息すると


「トールキンは我らへの敵意と悪意を持っていた。時空間に閉じ込められながら、その悪意を育ててしまったのかもしれない。それを魔王に利用されたのだろう」


と兄の一人が呟いた。


事情は良く分からないが、何十年か前に罪を犯した精霊を魔獣達の居る時空間に閉じ込めたことがあったらしい。


その精霊は魔王の側近として権力を振るおうとしたのかもしれない。


だから、魔王の側に協力した。リシャール王国で魔獣達が頻繁に出現していたのも、その精霊が魔獣達をこの世界に送り込んでいたのだろう。


力の強い精霊なら可能だとジルベールは言っていた。


強大な力を利用しようとして、逆に利用されてしまった。挙句に喰われてしまうとは・・・。


精霊王たちもやるせない思いを感じているようだ。


「魔王は、悪意を餌にする。ミシェルとトールキンはきっと良い餌であったろうな。悪意が強ければ強いほど魔王に力を与える」


と精霊王は溜息をついた。


「あの男はどうする?」


とマーリンが俺達に訊ねた。


・・・フィリップか。奴は魔王に憑りつかれて操られていたので、どちらかというと被害者と言ってもいいのかもしれないが・・・。


リュカはジルベールと目を合わせて頷いた後


「フィリップは被害者だ。俺が彼を密偵として送り込んだために魔王に憑りつかれた。サットン先生が治癒魔法を掛けてくれたせいで、命は助かりそうだ。身体的、精神的傷が癒えた後、もし伯爵邸で再び働きたいというのであれば、もう一度雇用するのはやぶさかではない」


と答えた。ジルベールも同意しているようだ。


俺達はボロボロだったが、森の外で待機していた騎士達もやって来て、片付けやまだ燃えている部分の消火活動をしてくれている。


フィリップを医師の元に運ぶよう、リュカが騎士らに指示を出した。


俺達も取りあえず森をでて家に戻ることにした。


スズもオデットもあまりの体験に疲れ切って言葉も出ないようだ。


パトリックたちもくたびれ果てているようで、地面に座り込んでいる。


何とか全員を立たせ帰路に向かう途中、リュカは当然のようにオデットを抱き上げてスタスタと歩きだした。


俺も・・・と思ったら、スズから


「私はいらないからね!」


と断言され、渋々と諦めた。


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