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挿話 神子姫と精霊王

*この話は大分前に書いたのですが、いつどこに投稿するか迷っていました。スズとフランソワがようやくまとまったので、ここで投稿しようと思います。里中すずちゃんと精霊王の昔話です。


精霊王は退屈していた。


・・・つまらん。


何をしても面白いことがない。


精霊たちは虹色の光の中、楽しそうに笑い、歌う。


「精霊王に幸多からんことを!」


「どうか我らに精霊王のご加護を!」


口々に叫ぶ。


何が『幸』だ!


苛々が募るが、精霊たちの前で不機嫌な顔を見せると彼らは心配するので、出来るだけ感情を表に出さないように注意している。



精霊王の王宮に戻ると、多くの精霊たちが忙しく立ち働いていた。


王宮に入って歩を進めると、精霊王に仕える土の精霊の一人が突然躓いて、精霊王の真っ白なローブに赤ワインをぶちまけてしまった。


彼女はぶるぶる震えながら平伏し


「精霊王様。大変申し訳ありません」


と許しを請う。


ああ、つまらん。それに白いローブに赤いシミがついたことに苛立ちもした。


「罰だ。ネズミになれ!」


と呪文を掛けるとその精霊はネズミに変身し、どこへともなく消えていった。


その時だ。


「この愚か者が!!!」


と我の頭に大きなゲンコツが降ってきた。


あまりの痛みに思わず蹲る。


その我の背中を誰かが物凄い勢いで蹴り上げた。


「だ、誰だ!我が精霊王と知っての狼藉か!」


と怒鳴りつけると、そこには小柄で真っ黒い髪、黒曜石の瞳をした少女が立っていた。


少女の後ろには護衛らしき男も控えている。


「当り前だ!たかだが服を汚されたくらいでネズミに変えられた彼女の気持ちを考えろ!」


と叱りつけられた時、投げつけられた言葉の意味を理解する前に、時間が百年以上遡ったような気がした。



・・・そうだ。エイダだ。エイダだったらきっと彼女と同じことを言っただろう。


真っ黒い髪と茶色の瞳をした少女の面影が突然脳裏に甦る。


ああ、そうだ・・・。彼女を失って以来、我は・・・自分の存在する意味を見出すことが出来なくなったのだと実感する。


エイダは人間の赤ん坊だった。


深い精霊の森には人間は入りこまない。


しかし、何故か精霊の森に人間の赤ん坊が捨てられていた。百年以上前の話だ。


普通だったら打ち捨てておいただろう。そして、赤ん坊はそのまま死んでいたに違いない。


側近であったトールキンが


「汚らわしい人間の赤子でございます。しかも、髪の毛が黒とか・・・。ああ、おぞましい」


と言い出して、妙にそれに反発したくなったのだ。


我はその赤子を拾い、養育することに決めた。


トールキンは最後まで反対していたが、我の決意は固かった。


我は赤子をエイダと名付け、人間を良く知る学者や乳母の助けを借りつつ、彼女を養育した。


彼女の髪の色のせいで、彼女を忌避する精霊たちは多かった。


精霊は明るい色、華やかな色、虹のような色を好む。


彼女のような黒い髪、茶色い瞳の娘が受け入れられるはずもなかった。


特に年老いたトールキンは常にエイダに関して我に苦言を呈していた。


曰く、「卑しい黒髪の人間が・・・」


曰く、「精霊王としての威厳が損なわれる・・・」


曰く、「黒髪など早く追放するか、殺してしまった方が・・・」


というトールキンの言葉に嫌気がさし、彼を避けるようにすらなった。


トールキンの敵意や不満は感じていたが、我はエイダを手放す気にはどうしてもなれなかった。


エイダは美しい娘に成長した。


艶のある黒髪はサラサラで触ると心地良い。


茶色い瞳はいつも柔らかく笑みを湛え、夕日にあたると金色に輝くようだった。


我は知らず知らずのうちにエイダに恋していたのだ。


エイダも同じ気持ちだと分かった時、我は有頂天になった。


彼女は曲がったことが大嫌いで、常に率直だった。我の欠点も容赦なく指摘した。


常に思いやりを持つように、とお説教されたことを悲しく思い出す。


あの頃は幸せだった。


この世の全てが輝いているように見えて、世界のあらゆるものに祝福を与えたい気持ちだった。


しかし、精霊たちからの反発は強かった。


特にエイダが妊娠したと分かった時は、トールキンを始め多くの精霊たちが我に反発し、エイダを追放するよう嘆願した。


我は決してエイダを手放さない。追放するなら我も一緒にこの森から出て行くと宣言すると、誰も表立って文句を言うものはいなくなった。


しかし、エイダは出産で命を落とした。


死は精霊たちにとって忌むべきものだ。


エイダの遺骸はすぐに埋葬され、我は彼女の死に顔を一瞬しか見ることが出来なかった。


赤ん坊も生後すぐに亡くなったという。


それ以来、我の生活に彩りはなくなった。


エイダも、彼女が楽しみにしていた赤子も死んだ。


何故我はここに存在しているのだろう?エイダがいないこの世界に。


と、昔を思い出していたら、今度は往復びんたが飛んできた。


「夢を見ているんじゃない!話を聞け!」


と黒髪の少女に怒鳴りつけられ、ハッと我に返る。


そうだな。夢を見ていたようだ。百年以上昔の夢を。


少女の後ろに立っていた男が跪き


「精霊王様。この方は神龍の神子でございます。私はジルベール。神子姫の護衛をさせて頂いております」


と説明する。


神龍の神子・・・。道理でさっきから数々の無礼を働いているこの娘に誰も手出しをしないはずだ、と納得した。


「ああ、失礼した。それで神子姫はここに何の御用かな?」


と丁寧に質問したのにも関わらず、神子姫は相変わらず青筋を立て、怒りを露わにする。


「先ほどの精霊を元に戻してあげなさい!」


と言われても、ネズミにされた精霊はもうどこかに行ってしまい、見つからない。


この広い森の中でネズミ一匹を探すのは不可能だ。


そう説明すると、益々怒りが増幅されたようで


「それでは、精霊王!誓いなさい!何年後、何十年後であっても、再びあのネズミに遭遇した時には必ず元の姿に返してあげると!」


と神子姫が厳しく命じた。


・・・仕方がない。


「精霊王として誓おう。我が次にあのネズミに遭遇した時には必ず元の姿に戻すと」


我の言葉に神子姫は多少機嫌を直したようだった。


「それで、神子姫はどのようなご用件でこちらにご光臨されたのでしょうか?卑しい髪色とは言え、神子姫のご光臨を賜り光栄でございます」


とトールキンが揉み手をしながら、神子に訊ねる。


「・・・ああ、魔王復活が近くなっているかもしれない。魔獣達の数が徐々に増えてきている。魔王が復活すれば、この精霊の森も無事ではすまないだろう?」


「魔獣が我の結界を越えられるはずもない」


と言うと神子姫はニヤっとして


「この精霊の森にも魔獣が発生したという報告があった。だから、私が直々に調査に来たんだ」


と言う。


「なにっ!?我には報告されていないぞ。どういうことだ?トールキン!」


「我が王。ご報告が遅れまして、大変申し訳ありません。実は精霊の森の西端で魔獣に襲われたという精霊がおりまして・・・」


「西端!?それは兄上の領地か?」


「左様でございます。まさか、我が王の威に疑義を挟むようなことはないでしょうが、タチ様は我が王の即位にも反対されておられた方。魔獣出現が我が王の結界のせいであるなどと言い出す可能性もあり、確認に時間がかかっていたのでございます」


慇懃無礼というのはトールキンのためにあるような言葉だろう。嫌なことを言う。


兄上は潔いお方だ。そんな回りくどいやり方で我に挑戦してくるような方ではない。


「そもそも末子であられた我が王が、前の精霊王の後を継がれた時から、タチ様もオロチ様も我が王の統治に不満を持っておられます。そんな中、魔獣が精霊の森を跋扈するなどということになりましたら、我が王の威容は地に堕ちましょう」


トールキンめ、妙に嬉しそうに語るな。


そんなトールキンを厳しい目で見ていた神子が我に話しかけた。


「いずれにしても、しばらく精霊の森への滞在を認めて貰いたい。もし、この森に魔獣が出入りできるような時空間の穴があれば、私が閉じなくてはならないだろうから」


「分かった。協力に感謝する。我の宮殿に滞在するがいい」


と言うと神子とジルベールは微笑みながら会釈した。



彼らと別れて自室で休みながら、神龍の神子となると接待も必要か、と我は溜息をついた。


「大丈夫ですか?」


シルフが声を掛けてきた。藤色の髪をした風の精霊だ。


「ああ、少し疲れた・・・かな」


「トールキン様は我が王に不遜な態度を取っておられる」


怒ったようにシルフが言うので


「気をつけろ。誰が聞いているか分からん。前王から仕えている古株だ」


と忠告する。


シルフは若いが優秀で忠誠心がある側近だが、トールキンが幅を利かせているので立場が弱い。


「ところで神子姫を歓迎する晩餐の準備が出来ました」


「ああ、分かった」


と立ち上がった。


精霊に食事は必要ないので、この晩餐は神子姫のためのものだ。


我々も嗜好品として食事をするので、木の実や果物を使った精霊が好きそうな料理が並んでいる。


神子姫はどれも味わって楽しんでいるようだ。彼女は食べ方も綺麗だな。


そんなところもエイダを思い出させる。


彼女の黒い髪を見ながら、再び切ない過去を思い出した。


晩餐では当たり障りなく談笑していた我々だったが、晩餐の後神子がどこかで話がしたいと申し出た。


我は自室に神子を案内した。


神子姫の後ろにはぴったりとジルベールがくっついている。


「・・・話とはなんだ?ここなら誰にも聞かれる懸念はない」


神子は真剣な顔で


「精霊の森で権力争いのような不穏な動きがあるというのは本当か?」


と尋ねる。


我は顔を顰めた。嫌な噂が流れているようだ。


「そんなものはない」


「本当か?精霊の森もリシャール王国では重要な結界の一つだ。だから、精霊の森はどこの領にも属せず自治を認められている。そこで争いがあれば、他の結界にも影響が出る可能性があるのだ」


我は苛立ったが、彼女は事情を知る訳がない。


「長い話になるが良いか?」


「勿論だ。そのつもりで参った」


そして、我が精霊王となった経緯いきさつを語った。


前精霊王には三人の息子がいた。


長男はタチ、次男はオロチそして三男がイカヅチつまり我だ。


前王は力の衰えを感じていた。


次の王を決めるにあたり、最も役に立つ力を持つものが後を継ぎ、次の精霊王になると我々に告げたのだ。


タチは自分の力はどんなものでも切り伏せることが出来るやいばだと答え、オロチは自分の力は人々の秘密を探り情報を得ることだと答えた。


我は、自分の力は好きな時に雷を落とし、雨を降らせることが出来ると答えた。


前王は我の答えを気に入り、我が精霊王となった。


数百年も前のことだ。


「そして、兄二人はお前が王になったことが気に入らず謀反を企んでいるということか?」


という神子の質問に


「バカバカしい」


と我は答えた。


「何故だ?末子のお前が王になったことを不満に思っても不思議はないであろう?」


「我は、ずっと二人の兄上の方が王に相応しいと思ってきた。もし、兄上のどちらかが王になりたいと言えば、我は喜んでこの地位を譲る心づもりでいる」


と我が言うと、神子姫の瞳がまん丸に見開かれた。


ああ、エイダもよくこんな表情をしていたな。・・・思い出すと胸が締めつけられる。


「そうか。君は王の権力に興味はないのだな。すまなかった。君は暴君で専制君主だという評判も聞いていたのでな。誤解していたようだ」


『お前』が『君』になった。・・・少し嬉しい、と思って良いのだろうか。


「我々はそれまでとても仲の良い兄弟だったのだ。我は二人の兄上を心から尊敬している。兄上たちとは決して争いたくない」


「分かった。ところで・・・あのトールキンという側近は信用できるか?」


「トールキン?ああ、先代の王からずっと仕えている忠義者だ。旧弊で口うるさいが悪い奴ではない」


神子姫は腕を組んでじっと考え込んでいる。


「良く分かった。しばらく滞在して勝手をさせて貰うが宜しいか?」


「ああ、神龍の神子に逆らうような愚か者はこの森にはいない。好きにしてくれ」


「感謝する」


と神子姫とジルベールはお辞儀をして部屋から出て行った。


その翌日、再び西の端で魔獣が出現したという知らせを聞き、我は神子姫たちと共にその場に赴いた。


今度は数十匹の魔獣らが森で暴れまわっていた。


我は天から雷を落とした。魔獣らは電撃で一気に倒れ伏す。


「・・・一体どこから現れたんだ?結界があるから外から入って来ることは出来ないはずだ」


と言うと神子姫が


「こちらに・・・感じる・・・」


と言って、森深くに入っていく。


「ここだ」


と彼女が指さした場所には異空間の穴があり、そこが魔獣の出入り口になっていたようだ。


明らかに人為的に作られた穴に衝撃を受け、魔法で異空間の穴を閉じた。


その周辺一帯に我の魔法で封印を施す。これ以上魔獣を誘き寄せられてはたまらない。


「我の領地で何をやっている?」


という聞き覚えのある声に振り返ると、タチが立っていた。


「兄上の領地で魔獣が発生したので、空間の穴を塞ぎました。それだけです」


兄上は胡散臭そうに我を見る。


「お前が自分で魔獣を誘き寄せたのではないか?」


「・・・まさかそんなことをするはずもありません」


我が反駁しても兄上には届かない。


「我は王権になど興味はない。ただ、静かな生活を送りたいだけだ。勝手に我が反乱を起こすなどと邪推をするとは、我が弟ながら情けない。我は自分から攻撃することはせぬが、攻撃された場合は反撃することを厭わない。覚えておくんだな」


と我の反論を聞こうともせずに兄上は立ち去った。


我は茫然とその背中を見送るしか出来なかった。


その後もあちこちで魔獣が出現し、その数は増えていくばかりだった。


オロチ兄の領地でも魔獣が発生し、オロチからもタチと同様のことを言われ、我は混乱していた。


我は兄上たちと争いたくない。何故昔のように三人で仲良くできないのか?


兄上たちはやはり王になりたかったのか?


不穏な雰囲気は精霊たちの間でも広まり、兄弟間の戦は避けられないのか、と皆が噂するまでになった。


それに我が王の資質がなく王権を濫用しているという評判までついて回っているらしい。



我は森の湖を眺めながらすさんだ気持ちを落ち着かせようと努力していた。


そこに神子姫が現れた。


「元気ないね」


と聞かれて顔を見上げると、いつも束ねている黒髪を下ろしている。


ツヤツヤした黒髪が肩からサラリと流れていく。口調もくだけた言い方に変わった。そういえば、神子として公けの場に立つ時は敢えて男っぽい口調で話すと言っていたな。


ああ、やはりエイダのようだ、と彼女の笑顔を眩しく見つめた。


「初めて会った時からずっと、私を見ながら誰か他の人を見ているような気がするんだけど」


と聞かれて、顔が紅潮した。バレていたのか。


俺は、静かにエイダの話をした。誰かに彼女の話をするのは初めてだった。


神子姫は考え込んでいる。


「ねぇ、エイダの赤ん坊は?」


「・・・死んだ」


「死んだ赤ん坊は見たの?あなたが見たのは埋葬されたエイダだけよね?」


「・・・死んだと言われたから。そうでないと信じる理由はあるか?」


「精霊たちは黒い髪が嫌いなんでしょ?私もトールキンに会う度に嫌味を言われるわ。卑しい黒い髪なのにお美しいとか」


「すまない・・・部下が神子姫に失礼なことを・・・」


「私はいいんだけど。もし赤ん坊が黒い髪で精霊たちが忌み嫌うものだったら、死んでなくても死んだって嘘ついて、例えば森に捨てたりとか・・・する可能性ない?」


・・・可能性は・・・ないとはいえない。しかし、信じがたい話だ。


「なんでそういうかっていうとね。子供の絵本にそういう話が出てくるの。精霊の森に黒髪で茶色い瞳の赤ん坊が捨てられていてね。神龍の神子と聖女に助けられて、一緒に旅をするっていう話があるのよ。そういう伝説って実際にあったことが元になっていることが多いじゃない。だからね。まぁ、御伽話みたいなものだけどさ」


「黒髪で茶色い瞳の赤ん坊・・・・・まさかな」


もしそのような事実があったら許しがたいが、百年以上前の話だ。赤ん坊の行方もしれない・・・。


だが、夢見るくらいは許されるだろうか?


我の血を引いていれば半分人間であったとしても長命であろう。


そんな子供にいつか邂逅する可能性があるかもしれないと。


我は首を振って、妄想を排除した。


「神子姫は変わっているな」


と言うと


「みんなにそう言われます」


そう彼女は微笑んだ。



兄上たちは着々と軍備を整えているという。


兄弟げんかに他の精霊たちを巻き込むほど愚かな行為はない。


我は兄上らを呼び出して


「一対一で戦い、勝ったものが王になれば良い。他の者達を巻き込みたくない」


と告げた。


タチ


「珍しく理に適ったことを言う」


と嗤う。


「分かった。勝負を受けた!」


オロチが我に攻撃を開始したその時


「やめんか!」


という大音量が辺り一帯に響き渡った。


呆然としていると神子姫が現れた。


そしてトールキンが首根っこを掴まれて、地面に投げ出される。


「全部その男の陰謀だ!」


「「「なんだと?!」」」


俺達三兄弟の声が重なった。


「お前たちは、本当に愚か者だ。このトールキンの口車に乗せられて、互いに争うとは!こいつはお前達を反目させるために、それぞれに嘘をついていたのだ。いいか!兄弟は争うものではない!助け合うものだ!」


トールキンがそれぞれに悪口を吹き込んで、我々兄弟の間に軋轢を生むようにしていたというのか・・・。


気がつかなかった我も迂闊であった。兄上達も同様に感じているのかもしれない。後ろめたそうな顔をして考え込んでいる。


神子姫は一本の矢を取り出して


「これを見ろ!」


と言う。


「一本の矢では容易に折れてしまう。しかし、これが三本になると中々折れない。一人の力では弱いが、三人で力を合わせれば強くなれるという我が国にあった古い教えだ!」


我々三人は師匠にお説教を喰らっている子供のような気分になってきた。


「良いか!これから兄弟三人で力を合わせて困難に立ち向かうと約束してもらう!いいな!」


そう叫ぶ神子姫には誰も逆らえないと我々は諦めた。


三人でぎこちなく握手を交わし、何となく仲直りをした。


オロチが可笑しそうにクスクス笑っている。


「まぁ、彼女のおかげで戦わなくてすんだ」


という彼の言葉に、我とタチは顔を見合わせて苦笑いした。



その時、黙って地面に転がっていたトールキンが突然起き上がり、魔法で時空に穴を開け始めた。


半分ほど開いた穴の向こう側から、魔獣のぐるるるぅという唸り声が聞こえる。


こいつが精霊の森に魔獣を引き入れていたのか!?


「トールキン!お前は我らを裏切ったのか!?父上が聞いたらどれほどお嘆きになるか!」


「我が王は王の器に非ず。王に相応しい器は私だ!お前達を潰し合わせて私が王になるはずだったのに!」


とトールキンが叫ぶ。


「・・・特に、あんな愚かな人間の小娘に入れあげて。醜く卑しい黒髪の女など精霊の森に相応しくない!あの女の赤子も森に捨ててやった!可哀想に野犬にでも襲われて死んだことだろう!愚かな王よ。自分の行いを省みよ!」


その言葉を聞き、我の怒りは最高潮に達した。


雷を落としてやると構えた瞬間、神子姫があっさりとトールキンを彼が開けた時空間の穴に蹴り落し、そのまま穴を魔法で閉じた。


トールキンは罰として反省するまで穴に閉じ込めておけ、と言われ、我はゆっくり頷いた。


・・・100年くらい入れておけば反省するか?と考える。


神子姫は精霊の森の結界を強化し、時空間の穴も簡単に開けられないようにすると言ってくれた。


我らは完全に毒気を抜かれた、というのが一番ぴったりな表現だろう。


三人で協力していくことを誓い、別れを告げる神子姫とジルベールを見送った。


それ以来、我は兄上たちとも再び交流を持ち、信頼関係を築けるようになった。


神子姫はその後もたまに精霊の森を訪れ、我と一緒に湖を眺めながら取るに足らない話をする。


エイダの面影を忘れる必要はないと神子姫は言った。


それを聞いて試しに、神子姫がエイダの面影を忘れさせてくれないかと言ってみた。


彼女は我の顔に向かって思いっ切り噴き出して


「いや、女癖悪そうだから無理よ」


とゲラゲラ笑う。


内心に若干のダメージを追いながらも、爆笑する彼女を見ていたら我まで可笑しくなってきた。


二人で笑いながら、少なくとも以前のようにつまらん毎日ではなくなったな、と思った。


*読者の皆様はもうお分かりでしょうが、マーリンパパの話です。

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[一言] 毛利元就は偉大ですね
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