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セルジュ救出


セミが持ち帰った袋を、肉球のついた手で何とかこじ開けると中には白く輝く神龍の鱗が入っていた。


間違いない!良かった。これで呪いが解ける!


セミとアリに心から感謝すると二人とも「いいのよ。これくらい」と笑ってくれる。


「これで人間に戻れるわね」「良かったわね」


と口々に言われて喜びに浸っていた時、バタンという音と共に隠し通路の扉が開いた。


そこには血だらけのセルジュを抱えたフランソワと、禍々しい大剣を握ったジャックが立っていた。


二人とも疲弊しているが、怪我はなさそうだ。しかし、血だらけのセルジュが心配でならない。


フランソワはセルジュに治癒魔法を掛けながら、


「ジャック、俺のカバンを取ってくれ。中に体力回復のポーションが沢山入っている。一本飲んだ方がいい」


と頼む。


ジャックが瓶を一つ空にしながら、フランソワにカバンを渡す。


フランソワはそこから何本かのポーションを取り出し、セルジュに飲ませた。


私が心配でハラハラしていると


「心配しなくても大丈夫よ」


と小さな声がした。


ふと見降ろすと小さなネズミが立っていた。


その横にはトンボもいる。


「みんな、無事だったのね・・・良かった。本当にありがとう!」


と目頭が熱くなる。


そして、ネズミさんに自己紹介と挨拶をした。


「あの・・・セルジュについていて下さったんですよね。本当にありがとうございます。私はスズと言います。信じられないかもしれませんが、本当は人間なんです。呪いで猫にされてしまって・・・」


「信じるわよ。私だって、元々は精霊だったのよ。精霊王の怒りに触れてネズミにされてしまったけど・・・」


とネズミさんはウィンクしながら言い、私は呆気に取られた。


精霊王ってあの精霊王?!こんな偶然ってあり!?


そして、精霊王は何をやってるんだ?


ネズミに変えられた精霊を気の毒に思っていると、ネズミさんが話を続けた。


「でも、ギリギリ間に合って本当に良かった。フィリップが大きな剣を持って乗り込んで来た時はもうお終いだと思ったわ。剣でセルジュに切りかかって、血が沢山出たの・・・。怖かった。剣に血がかかった時、剣が赤黒くモワッと光ったのよ」


私もトンボもそれを聞いて身震いした。


「そこに私達が到着したの。フランソワがセルジュを庇ったら、男がフランソワにも切りかかって・・・。フランソワとジャックの二人がかりでようやく互角っていうくらい、あの男が強くって、しかも変な魔法を使うの。剣からどろどろしたタールみたいな黒いものが溢れてくるのよ」


とトンボが言う。


「それは・・・きっと魔王に憑りつかれているからね」


という私の言葉に、ネズミさんが


「そうね。それなら納得できるわ」


と頷いた。


「でも、フランソワには何かの加護がついているのかしら?黒いドロドロに襲われそうになった時に真っ白な光が胸から出てね。フランソワは無事だったの。そして、私もちょっとは精霊の頃の魔法が使えるから、男の足を躓かせてやったのよ。その隙にジャックが剣を取り返して、フランソワが強烈な足技で一撃を喰らわしてね。男は逃げていったわ」


ネズミさんの話を聞いて、きっと神龍がくれた鱗が守ってくれたんだろうと思った。


そうこうしている内に、セルジュの意識が戻ったらしい。


「・・・ふ、ふらん、フランソワ・・・?」


「セルジュ!!!」


とフランソワがセルジュを抱きしめた。


「こんなに痩せて・・・」


とフランソワが悲しそうに言う。


私が近づいて


「セルジュ!無事で良かった!」


と言うと


「・・・スズ!君は・・・無事・・・なのか?可愛いけど・・・」


と躊躇いがちに私の頭を撫でる。


「ずっと・・・心配してたの。また会えて本当に良かった・・・」


と涙が溢れる。


「ありがとう。スズ。僕もだ」


とセルジュが言うと、フランソワが少し不満そうに


「セルジュはスズの言葉が分かるんだな。羨ましいよ」


と言って、立ち上がった。


フランソワがセルジュを抱き起して、自分のベッドにそっと寝かせる。


ジャックが


「胃に優しい栄養たっぷりな食事をすぐに持って来させるから」


とセルジュにウィンクした。


「その前にこの剣を皇帝に返してくる。へへ。これは皇太子の得点で、ルドルフの失点だ。フィリップが剣を盗んだのは明らかだからな」


と嬉しそうに部屋から出て行った。


フランソワが


「ベジタリアン・ミールで頼む!」


とジャックの背中に声を掛けた。


その後、セルジュは嬉しそうに野菜スープを完食して、お代わりまでした。


傷は治癒魔法で完全に治ったし、体力回復のポーションで気分も良くなったようだ。


安堵した私は、フランソワにミシェルから手に入れた鱗を見せた。


フランソワは驚愕のあまり声が出ないようだった。


今はセルジュがいるので、事情を全て詳らかに出来て嬉しい。


セルジュが通訳した内容を聞いて、フランソワは改めて動物たちの能力と才覚に感銘を受けたようだった。


セミ、アリ、トンボの一人一人に(人じゃないけど)握手して感謝をしている。


「よし!それじゃ、今すぐリシャールに帰ろう!」


と突然フランソワが言い出し、私は呆気に取られた。


え、今すぐ・・・そんな急に?


「俺達の目的は達成された。鱗は手に入ったし、セルジュは取り戻したし、剣を守った。早く帰って、スズの解呪薬を作りたい。ここだと落ち着かないし、道具も完璧に揃ってはいないからな。早く帰った方がいい」


と生き生きと話し出すフランソワ。


勿論、セルジュも私も異論はないけれど、ジャックに馬車の手配とかお願いしないといけないよね・・・。


フランソワは小さな紙にメモを書くとセミのところに行って「ジャックのところに届けてもらえないか?」とお願いする。


セミは快諾してバサバサっと飛び立った。


私はアリとトンボと別れを惜しんだ。ネズミさんは私達と一緒に来ると言う。


まもなくジャックが部屋にやって来たが、少し怒っているようだ。


「おい!メッセージを見たぞ!今すぐここを発つってどういうことだ?」


「言葉の通りだ。俺達の用事は全て終わった。後は帰るだけだ」


「だからって!お前、姫にお別れも言わずに帰るのか?!」


と言われて、フランソワもさすがに考え込んだ。


「後でお礼状を書くとかではダメか?」


「ダメに決まってんだろ!お前はバカか?」


「確かに大変お世話になったから・・・後で御礼の品を送るとか・・・?」


「おい!姫の気持ちを考えろ!」


とジャックに滅茶苦茶叱られている。


取りあえず姫が戻って来るのを待つことに決まった。


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