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セルジュの言葉


グラウンドに行くと既にセルジュが待っていた。


今日は何かスポーツ活動があるようでグラウンドには人が多かった。


私とセルジュは人がいない一画の茂みの中で密談することにした。


「どうしてクラリスの評判がこんなに悪いの?」


「・・・それが分からないんだ」


それがゲームの強制力なのかな?


クラリスが悪役令嬢になるように?・・・バカみたい!


腹が立って堪らなかった。


「ただ、ジゼルがクラリスに何を吹き込んだかは分かったよ。あいつはとんでもないな」


「え、ジゼルはクラリスに何を言ったの?」


「この世界はゲームっていう物語の世界なんだって。筋書きがもう決まっていて、パトリックはスズと恋に落ちる運命だと決まっているそうだよ」


はぁ!?なんだそれ!!!


「・・・やっぱりスズもこの話を知ってたんだね?」


とセルジュに言われて私は焦るが、私にセルジュを誤魔化すことが出来る弁舌スキルがあるはずもない。


仕方なく、私が知っている乙女ゲームの話を全て告白した。


さすがにセルジュは絶句していて、


「僕も・・・なんだって・・・?攻略対象・・・?」


と呟いた。


でも、彼はすぐに気を取り直して


「おかげで色々と事情が分かったよ。クラリスは悪役令嬢でパトリックと恋愛するスズに嫉妬して嫌がらせをした挙句、断罪されて国外追放。戦争を起こして処刑、という運命が待っているとジゼルはクラリスに伝えたんだ」


と説明した。


・・・あ、頭が痛い・・・。そんなことをいきなり言われて、どれだけショックだったろうか?


「ジゼルはとにかく断罪、処刑を避けるためにもヒロイン、つまりスズには近づかない方がいいとアドバイスしたんだよ。それなのに、クラリスの悪評が広まっているのが何故なのか僕には全然分からないけど・・・。これがゲームの強制力って奴なのか?クラリスは悪役令嬢としての役割を全うしないといけない、みたいな?」


「・・・ひどい話だよね。クラリスはあんなにいい子なのに・・・」


泣きたくなった。


「クラリスは、スズは素晴らしい女の子だから自分よりもスズに惹かれるパトリックの気持ちは良く分かる。だから、自分は潔く身を引いて、パトリックのことを忘れるように努力するって言ってたよ」


うぅ、健気・・・。泣ける。


「それでクラリスは僕のところに来たんだけど・・・」


「セルジュのところに?」


「いや、何でもない」


「セルジュも何か隠してるの?」


「誰にも言わないって約束したものは守らないとね」


・・・そう言われたら、何も言えないけどさ。


「それよりも・・・僕が心配なのは、今生徒たちがかけられているのは間違いなく『呪い』だということなんだ。毒薬ではない『呪い』なんだ。神様とか悪魔とか、何か人間以上の存在から力を借りるか奪うかしないと『呪い』は発動出来ないんだよ」


あ、何か今脳みそに引っかかった。えーと、私の記憶力の足りない頭にも引っかかるものがある・・・。


「あ、そうだ!ジルベールが言ってたの。ゲームの中でクラリスは『神龍の魔女』って言う人に依頼して呪いを発動してもらうって。で、神龍の魔女は精霊を攫って来て力を奪って呪いをかけるんだって。それに怒った精霊王が学院を滅ぼすってやって来るらしいよ!ジルベールはミシェルが神龍の魔女じゃないかって言ってた!」


と言うとセルジュがガクリと肩を落とした。


「・・・なんだそれ!!!そんな大事なこと知ってるんだったらもっと早く言ってよ!」


「・・・ごめん。でも、フランソワもジルベールも知っているから・・・」


「ああ、だから、フランソワは『呪い』の元を躍起になって探しているのか・・・納得した」


「現実にも精霊王が来るかな・・・?」


「もし、犯人を見つけられなくて、呪いのために精霊が攫われ続けたら、間違いなく出て来るだろうね。精霊王は精霊たちを守る存在だから・・・」


「神龍の魔女はこの学院の生徒じゃないのに、精霊王はこの学院を滅ぼすの?」


「ミシェルが神龍の魔女だったとしたら『元生徒』だし、学院の生徒が次々に呪われているということは、ミシェルから呪いを買っているのもこの学院の生徒なんじゃないかな?いずれにしてもこの学院が舞台になっていることは間違いない。精霊王の攻撃対象になってもおかしくないと思うよ」


セルジュの話を聞いて、私は益々落ち込んでしまった。


三角座りで落ち込む私の背中をセルジュが擦ってくれる。


「大丈夫。僕はきっとスズが突破口を開くと思うよ」


「どこに進んでいいのかも分からないのに突破口も何もないよ」


と弱音を吐いたけど、セルジュの言葉に少しだけ慰められた。


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