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ジゼル・ロジェ伯爵令嬢


唖然としている私達を見て、フランソワは『してやったり!』という顔をした。


副音声で「ふふん!」という声も聞こえそうだ。


学院寮に入る前にフランソワに挨拶をした時も、何も言ってなかったよ。


後ろを振り返ってセルジュに「知ってたの?」と囁くと、黙って首を横に振る。


絶対に驚かせようと思ってわざと隠してたんだな。変なところで子供っぽいからなぁ。


フランソワは自己紹介をして、簡単に今後の授業の説明をする。


フランソワはポーションの専門科目の担当で、このクラスの担任も兼務するらしい。


無表情で淡々と説明するフランソワを見て、顔を赤くする令嬢達が多い。


そわそわと目を潤ませながらフランソワを見上げる女生徒たちを見ると、何故だか気持ちがイライラした。


「・・・以上だ。何か質問あるか?」


とフランソワが言うと一人の女生徒が手を挙げて


「先生。先生はご結婚されてるんですか?・・・そ、それかお付き合いしている女性とか?」


と聞く。


フランソワは冷たく


「授業に関係ない質問は受け付けない。以上だ」


と言い放って、そのまま教室から出て行った。


そんな塩対応なのに、何故か質問した女生徒は真っ赤になって頬を抑えて座り込む。


他の女生徒たちも


「キャー―――――!冷たいイケメン!最高!」


「ツンデレ?ツンばかりの後にデレが来たら、すぐに落ちちゃいそう!」


「あの無表情が堪らないわ!」


「あんな色気駄々洩れの美形男子が担任なんて・・・卒業までに絶対に落として見せる!」


と大騒ぎだ。


令嬢達のハートに突き刺さったらしい。何故だ?


パトリックは小さな声で


「すごい人気だな」


と顔を寄せて話しかけて来る。


「爆発的にモテるっていう噂はお母さまから聞いてたけどね」


と私も顔を寄せて答えると、パトリックの向こう側にいたジゼルと目があった。


ニコっと笑いかけると、ジゼルも笑顔を返してくれるがどことなくぎこちない。


さっきのやり取りがまだ尾を引いているのかな・・・。もっと優しい話し方を心がけようと反省する。


学校が終わり、みんなで一緒に寮に向かって歩いていると、ジゼルが走って追いかけてきた。


息を切らして


「はぁ、はぁ・・・ひ、ひどいわ。待ってて下さらないなんて・・・」


と涙目になっている。


「・・・え、待ってるべきだった・・・っけ?」


と私が戸惑うと、ジゼルが


「・・・お友達になったのだから一緒に帰るものだと思っていました!」


と言い募る。


「あ、それは・・ごめん。知らなかった・・・」


と私が言うと、パトリックが


「じゃあ、明日からはちゃんと待ってるよ」


と優しくジゼルに声を掛ける。


「パトリック様、やはりお優しいです・・・」


と恥ずかしそうに頬を染めるジゼルはとても可愛い・・・けども!


なんか釈然としないんですけど!


何か一言いいたくなった私の袖をセルジュが掴んで首を横に振る。


ジェレミーは眼鏡の縁に手を掛けて、冷たい目でジゼルを眺めている。


クラリスは俯いていてどんな表情だか分からない。


楽しい学院生活への期待が少しだけ翳ったように思った瞬間だった。




翌朝、私が早く起きて寮の裏にあるグラウンドでトレーニングを行っているとクラリス、パトリック、ジェレミー、セルジュの全員が集まってきた。


いつものみんなの笑顔を見ると元気がでるなぁ!


「みんな早起きで働き者だよね」と笑うと「お前の影響でな」とパトリックが私の頭をグリグリ撫でた。


クラリスが声をあげて笑っているので、ちょっとホッとした。昨日少し元気なかったからね。


トレーニングの合間にみんなで雑談をしていると、セルジュが


「・・・あのさ、昨日のジゼルって子・・・。ちょっと気をつけた方がいいかもしれない」


と言い出した。


「どういうこと?」


と私が訊くと、セルジュは困ったように


「・・・なんか裏がありそうな気がする」


と言う。


パトリックは


「え!?そうか?素直そうな可愛い子だと思ったけど。考えすぎじゃないか?」


とあっけらかんとしている。


それに対してジェレミーは


「パトリックは女性というものに対して免疫がありません。私も正直言いますとジゼルという女生徒には気をつけた方が良いのではないかと助言しようと思っていたのです。パトリックは多くの女性の野心の対象になる可能性があるという自覚と認識を持って頂いて、更に警戒心を持って女生徒と接する必要があると思います」


いつものジェレミー節につい笑ってしまったが、クラリスは真剣に何かを考え込んでいる。


「・・・でもさ。友達だよねって言われて、意地悪なこともされなかったら遠ざけるのは難しくない・・・?」


と私が呟くと、セルジュが「特に警戒心のないスズには気をつけて欲しい」と溜息をついた。


ジェレミーの提案で、登下校はジゼルがついてくる可能性があり、五人だけで話し合うのが難しいから早朝トレーニングで会おうという結論に達した。


「ですから、早朝トレーニングのことは誰にも秘密ですよ」


というジェレミーの言葉にみんなが頷いた。


朝食はみんなで寮の食堂で食べることにした。


男子寮と女子寮は分かれているが食堂は同じなのだ。


私はセルジュ用にベジタリアン・チリビーンズを作りおきしたので、それを渡す。


「部屋に戻ったら冷蔵庫にちゃんと入れておいてね」と念を押す。


普段表情が変わらないセルジュの顔がぱぁぁぁぁっと輝いた。


「僕は肉や魚が食べられないから、スズのベジタリアンメニューが本当に有難いんだ」


と言われて、得意になる。


「出た!スズのドヤ顔!」


とパトリックが揶揄う。


一同がドッと笑ったその時


「あの、私もご一緒していいかしら?」


とジゼルの声がした。


私に向かって話しかけているので、嫌とは言えない。


「ど、どうぞ・・・」


と言うと嬉しそうにパトリックの隣に座った。


「どうか、皆さん、私に構わずお話をお続けになって下さい」


とにこやかにジゼルが言うが、


セルジュは「僕、これを冷蔵庫に入れなきゃいけないから」と食器を持って立ち上がり、


クラリスも「私も支度があるので失礼しますわ」と去って行った。


ジゼルが泣きそうな顔をして


「わ、私、皆さんに嫌われているのかしら・・?」


とパトリックの袖をギュッと握る。その仕草も女の子らしくて可愛らしい。


「・・・嫌われてるなんてそんなことないと思うぞ。な、なあ?スズ?」


え!?私に振らないでよ!と思ったけど


「嫌うもなにもまだ知り合ったばかりじゃない?これからお互いを知っていくんだし。嫌われてるとか心配する必要ないと思うよ」


と真面目に答える。


パトリックとジェレミーは同意するようにうんうんと頷いた。


ジゼルはその後しきりにパトリックのことを褒めちぎっていて、私とジェレミーはお互いの顔を見合わせて、肩を竦めた。


懸念した通り、私達の登下校には必ずジゼルがついてくることになった。


食堂にも現れるので、セルジュとクラリスは自分の部屋で食事をとることにしたという。


私は「だったら一緒にご飯を作って食べようよ」とクラリスを誘い、お互いの部屋で料理をして一緒に食事をとることに決めた。


セルジュには頻繁に差し入れをする。セルジュも一緒に食べられたらいいんだけど、女子寮の部屋に男子が入るには許可が必要で、手続きが面倒臭い。


「一人で寂しくない?」と聞くと、最近鳥たちと仲良くなったという。


窓を開けていると鳥が集まって来て、色々な話を聞かせてくれるそうだ。


ジゼルに気をつけろというのも鳥が教えてくれたという。


なるほどね。セルジュはどこに行っても友達には困らないだろうなと少し羨ましい。


鳥たちに具体的にどうしてジゼルに気をつけた方が良いのか聞いておいて、とセルジュにお願いした。


ジェレミーによると、パトリックとジゼルはいつも食堂で一緒にいるから、ジゼルが他の女子たちから羨望の眼で見られているという。


パトリックは単純で真っ直ぐな性格だから、ジゼルに褒められて頼りにされるのが新鮮で嬉しいらしい、と聞いて、クラリスの顔が曇った。


ジェレミーは、パトリックはそこまで馬鹿じゃないから大丈夫だよ、とクラリスを慰めた。


そろそろ書き溜めていたストックが少なくなってきました。これまでのような頻度では更新できないと思いますが、毎日1-2話は投稿できるように頑張ります。


読んで下さってありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] フランソワって振ってから気になるタイプ? ジゼルが定番の女に嫌われる女っぽいですね。
2020/09/30 19:22 退会済み
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