一話目、最初の呪い
世の中にダンジョンが現れ出したのは、約20年前。そのダンジョンに入るとステータスが開けるようになり、人々は己のスキルの存在を知った。
日本政府はすぐさま、ダンジョン侵入禁止令を発令し、軍隊を率いてダンジョン攻略に回るものの、途中で断念。優秀なスキルを持つ国民を募集し、専用の学校を作っていく。
しかし、時間が経ちすぎた。次々と別のダンジョンが雨後の筍のように現れ、魔物が溢れて出てくるようになり、ダンジョン侵入禁止令を解除。国民が一丸となり、ダンジョンを攻略する事となった。
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「お金を......お金を稼がないと......!」
ビル型ダンジョンと言われる謎の素材製、塔型の円柱が少年の前にそびえ立っている。しかし、その少年の黒髪はボサボサ、服もくたびれ、やせ細っている。
ダンジョンの入口は車が通れない程度の大きさであり、周りは割と栄えていないのか、見張り二人の他、テントが少し立っている程度。
勿論見張りがいる為、少年に声が掛かる。
「やあ、初めてかい?」
「いいえ。でもお金が欲しくて......」
「ダンジョンに行く奴は大抵そんな感じだからなぁ......」
「一人だと、キツイが頑張りな!」
見張りは少年を励ましつつ、背を叩き送り出す。
「は、はい......」
少年は持っている包丁の持ち手を強く握り、力んだ。緊張で冷や汗を掻きつつもダンジョンの入口へと足を進める。
ダンジョンに入ると少年の目の前には半透明のプレートが表示された。
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名前:ミツダ トモノリ
ユニークスキル:不運
スキル:投擲 Lv1
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少年、トモノリは黙って、それの左にあったバツボタンを押し、プレートを消す。
ダンジョン内は簡素。石畳と土壁が迷路状に形成される。光は一定間隔で蝋燭が灯されている。
研究機関がこの蝋燭を研究したもの、の正体は分かっていない。しかし、窒息死と一酸化炭素中毒の心配は無い事は明らかとなっている。
その通路をトモノリは慎重に進んでいく。
「スゥ......ハァ......」
トモノリは深呼吸をしつつ、耳を潜めて索敵する。
ピチャリ、ピチャリと水滴が滴る異音。目を見開いたものの、彼の索敵能力は雀の涙程度。
「ディルル!」
「うわあ!?」
異音と共に上から覆い被さるのは透明の液体。液体はトモノリを包み込む。
「うわあああああああ!!」
トモノリは一心不乱に包丁を振り回し、なんと切り裂いて液体から退避する
「はぁ......!はぁ......!」
液体は切り裂かれ、萎んだように膜を残し液体は石畳に染み込んでいく。
「倒し......た?」
包丁で数回、死体をつついて確認した後、膜を持ち上げるとカランと小さな紫の小粒が落ちる。
「これが......魔石?」
膜を下ろし、その紫の小粒を拾い上げる。
アメジストに似た宝石のようだが、少年はそれをポケットに入れる。
「でも......これっぽっちじゃ......」
少年は液体の死体を残し、通路を進む。ゾワゾワとした雰囲気を感じ取り、背後を見ると液体の死体は消えていた。
「(死んだら、自分もあんな風に......)」
マイナス思考だったがトモノリは頭を振り、すぐさまその考えを捨てる。
そんな、一瞬の考え事による気を緩みが、索敵能力を低下させた。
「うぐぁ!?」
一本の矢がトモノリの足へと当たる。その矢は鉄製でなく、よく研がれていない事も相俟って掠るだけですんだ。
しかし、トモノリにとってはその予期せぬ衝撃に苦しむ事だろう。
咄嗟に撃たれた方を見た。深緑色の人型の生命体が弓に次の矢を番える姿。
トモノリは恐怖を抱いた。未知の人型生命体が目の前にいる事でも恐怖を感じるだろう。それが敵意を持って自分を殺しにかかる。
大人でもチビるような恐怖に耐えかねずトモノリは敵前逃亡。
しかし、生憎の直線通路。次の曲がり角までトモノリは走る。
「はぁ......!はぁ......!うぐぁ......!ガハッ......うぐぅ......!」
ダンジョンに入る直後出てきたプレートの書かれていた不運。それが本領を発揮したかのようにトモノリの左腕に突き刺さる。
しかし、踏ん張って痛みを耐えて曲がり角を曲がる。
すると、不幸が手のひらをクルリと回したかのように彼の前に宝箱が置いてある。
「っあ......!」
幸運だ。彼はそう疑わず、神頼みの箱に手を伸ばす。
キラキラと光る箱の装飾をジッと見ることは無く、すぐさま開けられた。
「はっ......!ま、マジックアイテム!?」
出てきたのは一振の短剣。しかし、ダンジョン産のドロップアイテムは高く売れる。
トモノリはそれをすぐさま、手に取った。
「美しい.......ああ......美しい。」
不自然に魅入るトモノリ。その短剣をトモノリは優しく撫でる。
しかしその短剣は————
————呪われていた!
トモノリの目の光は無くなり、理性なく左腕に刺さる矢を引き抜き、余すとこなく血を舐め取る。
彼は飢えている......彼は血に飢えている。
左腕から流れる血はある程度無くなり、トモノリの頬に血がダラりと血が付く。
「足りない......おなか......すいた......」
トモノリはフラフラと歩き出し、曲がり角に立つ。すると接近してきた深緑の生命体が目に入った。
「血だァ......」
彼の目に理性は無く、手に持つ短剣を投擲。眼球にへとぶっ刺さった。
「ギィ!?」
彼がその深緑の生命体に接近していくと、非現実的なことが起こる。
彼が投げた短剣が彼の手に瞬間移動した。
「ギィイイイイイ!?」
そして彼はその短剣で頭部を何度も突き刺さし、殺す。深緑の生命体の断末魔は彼の耳入ることは無い。
そして。体を切り開き、短剣についた青い血を舐めとる。
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☆
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気が付くと、青い血だらけのトモノリがいた。手には一振の短剣。周りには魔石が一粒落ちていた。
「おえっ......」
凄まじい吐き気がトモノリを襲い、通路の端っこでブツを出す。
ブツには青と赤が混ざっていた。
「なんで......?」
魔石を一応、ポケットに入れてトモノリはある言葉を発する。
「ステータス」
するとダンジョンに入った直前に出たプレートが目の前に表示される。
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名前:ミツダ トモノリ
職業:探検者Lv1、狂剣士Lv1
称号:大罪に呪われし者、バーサーカー、血の衝動に駆られし者、
装備: 嫉妬に呪われ血塗られた短剣
ユニークスキル:大不運
スキル:投擲 Lv2、短剣術Lv2、自動回復Lv1、身体強化Lv1、筋力強化Lv1、吸血Lv1
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「はい......?」
それは様々な変化を遂げたプレートだった。変化に驚くトモノリは元凶と思われる短剣を直視すると自然と声が出る。
「ああ......美しい。なんて美しいんだ。」
なんの変哲もない短剣に触れるトモノリ。しかしトモノリにとっては極上の一品なのだろう。
「まだ、まだ名前が無いだろう?」
トモノリは心配そうに喋るはずのない短剣に話し掛けた。
「よかった。じゃあ君の名前は......レヴィ。レヴィだよ」
そう短剣に語りかけ、まるで我が子のように優しく撫でるが、彼の目は愛しの妻か彼女に向ける目だ。
トモノリは大事そうに『レヴィ』と名を付けた。
「さて、最低でも今日の食費を稼がないと......」
レヴィを手に持ち、立ち上がったトモノリは魔石を回収する。すると通路に光る金属物が落ちている事に気付く。
「包丁......落としてたんだ......」
一銭でも無駄にしたくない彼はその包丁を持ち帰ろうとする。
しかしそれは取ろうとした瞬間に溶けて、鉄くずとなった。
「え......?」
トモノリは気づいたらレヴィを強く握っており、不思議な現象だなぁと思いながら、鉄くずをダンジョン内に放っておく事にした。
あたまばーさーかー




