ホテル活魚
【【警告】】
今回登場する場所は実名を使っています。
僕らが訪れた頃はそんなでもなかったのですが、
現在ではある事件の影響で有名な心霊スポットになっています。
僕らが訪れてから数年後の2004年、女子高生絞殺事件が起きた現場なのです。
頭のおかしいヤンキー達が集まる場所にもなっているそうなので、絶対に行かないでください。
霊的な理由でなく、物理的に奴らは危険です。
もう一度言います、絶対に行かないでくださいね。
【ホテル活魚】
これは僕らが車の免許を取った頃の話だ。
免許取り立てなのもあり、友人達と遠出をして遊ぶ事が増えていた。
友人のS君とF君が車を出し、
女の子を引き連れてうちに来たのが16時頃。
僕はゲームをしていたのだが、大勢で海に行こうと連れ出された。
海に行くにしては遅くないか? と思ったのが、
男6人、女4人という大所帯なため、
断りにくく、渋々車に乗ったんだ。
これが間違いだった。
初心な少年だった僕は、
隣に密着するように座って来る女の子の感触にドキドキしていて、
気づくのが遅れてしまったんだ……目的地が海でない事を。
途中で寄ったコンビニで運転手であるS君と話していると、
どうも歯切れが悪い返答ばかりで、嫌な予感がした。
「これさ、海向かってないよね」
「え、何言ってんの、海だって」
笑いながらS君は言うが、これは嘘だ。
僕の頭の中にはずっと嫌なイメージが浮かんでくる。
黒、光が飲み込まれる黒……そして、焦げ臭さ。
「ねぇ、そこってさ、焦げた部屋ある?」
僕は浮かんだ情景をまんま伝える事にした。
すると、S君の表情は見る見る間に変わり、
1歩後退り、彼は皆に聞こえるように言った。
「みんな! Uさんが当てやがった!」
その声で皆が集まり、何やら盛り上がっている。
「マジか、じゃあ本物か!」
「えー、やだよぉ、怖いよ~」
「またかよ……」
最後に凹んでいたのは親友のM君である。
彼は心霊関係が大の苦手で、彼も騙されて連れて来られた口だ。
テンションが上がってしまった彼らは、
僕らを半強制的に車に乗せ、本当の目的地へと向かう。
しばらく車を走らせると、森の中に埋もれるように、
だが、主張の激しい【活魚】の看板が見えてくる。
【活魚】……まるで魚屋のような名前だが、
その外観は大型ホテルであり、内装はラブホテルのそれだ。
数十年前に廃業したようで、完全な廃墟と化している。
後に【ホテル活魚】として有名になった心霊スポットだ。
獣道のようになっている荒れ果てた道を進み、
活魚の入り口まで50m辺りで停車する。
皆が車を降り、行くかどうか話し合っているが、
僕とM君は車から降りなかった。
「ねね、Uさん、ここガチなやつ?」
「だよ、来る最中にも言ったっしょ」
僕は道中で何度も警告はした。
近づけば近づくほど嫌なイメージは濃くなり、
真夏で寒くもないのに鳥肌が立つほどだった。
M君は「ぜってぇ降りねぇからな」と断言し、
女の子達は活魚の異様な空気を感じてか、
全員が行きたくないと言い出していた。
「ここまで来て行かないのもアレだろ」
F君は一切オバケの類を信じてない。
そんな彼は行く気満々のようだが、
一人で行くのは少々怖いようで「誰か来いよ」と言っていた。
渋々といった感じだったが、S君が一緒に行く事になり、
二人は活魚の中へと消えて行った……。
時刻は20時半、もう辺りは真っ暗で、
懐中電灯と車のライトだけが頼りの状態だった。
残った女の子達が僕にここの事を色々聞いてくるので、
それに適当に答えていると、活魚から叫び声が響く。
「うわあああああああ! お前ら逃げろおおおっ!」
先頭を走ってきたのはF君だ。
そのすぐ後ろにS君が続き、二人は大慌てで走ってくる。
「いいから早く車乗れ! いいから!!」
こちらへと走りながら彼らは叫んだ。
その異様な様子に皆が恐怖し、慌てて車に乗り込む。
女の子達は「何、何、どうしたの??」と不安がり、
S君とF君が来るまで震えていた。
運転手の二人が車に乗り込み、急発進でその場を離れようとする。
だが、F君が慌てすぎて片輪が溝にハマってしまい、
それに気づいた僕がS君にすぐに車を止めるよう言い、
男連中でF君の車を必死に持ち上げて、何とか脱出するのだった。
コンビニに着いた僕らは、
二人に何があったのか詳しく聞いていた。
F君が先頭を歩き、例の焦げた部屋に向かっていたそうだ。
何事もなく進んでいたようだが、問題の部屋の扉まで行った時、
ドアノブに手をかけようとしたら勝手に回ったそうだ。
これにはオバケを信じないF君も驚き、
二人は大慌てで逃げてきたという事らしい。
そんな話をしている最中、
僕はずっとM君のお腹を見ていた。
彼の腹には左腕が見える。
背中側からがっしりと離さないように絡みついている。
M君は何となく感じているのか、腹をさすっていた。
「M君、ちょっといい」
「ん? あぁ……頼む」
それだけで察した彼は、黙って目を閉じ、僕に任せる。
僕がこの頃肌身離さず持ち歩いていた数珠を使い、
彼の腹を撫でると、その腕は消えていった。
「サンキュ、内容は言わんでいい」
「おっけ」
たったそれだけのやり取りで僕らには十分だ。
こうして僕らは無事帰宅した。
おしまい。
念のためもう一度警告です。
ヤンキー達が集まる場所なので大変危険です、絶対に行かないでくださいね。