第一章 2話
遅刻は確定してしまったもののなんとか先生に見つからず学校へと入ることができた俺は、次なる問題である、どうやってバレずに教室に入るか、を画策していた。
「......正直どう頑張っても絶対に無理だし、おとなしく1限が終わるまで隠れているのが吉かな?」
早々に白旗をあげた俺は使われていなさそうな教室を探し、身を潜めることにする。
使われていないと言ってもいつ先生が来るかわからないので念のため掃除用具入れの中にも入っておく。
「なんで朝からこんなところに隠れてなきゃならんのか...くそぅ、昨日の俺の馬鹿たれが...」
登校時間は8時30分までとなっており、それを過ぎると校門前で待っている先生方に遅刻者としてチェックされてしまうのだ。5回遅刻すると指導が入り、それでも治らない者は保護者への連絡並びに一週間の雑用を命じられる。俺はすでに5回の遅刻があるのでもう1回も遅刻するわけにはいかない状況に陥っているのである。
なお授業ではまた別の出席チェックというのが行われるため、遅刻チェック数ぎりぎりの俺だが出席チェック数には余裕があるので1限をサボろうが問題はない。
その後8時40分から70分間の授業が始まり、休み時間を10分挿み、授業、休み時間、授業...という感じで繰り返していく。
また午前の3つの授業のあとにはもちろんお昼休憩が1時間ほどあり、そのあと午後にまた3つ授業を受けて帰宅もしくは部活動となる。
だいたい学校に着いたのが8時50分だったからあと1時間も待ってなきゃいけないのか...
と少し暗い気分になりながらとりあえず気ままに隠れていること30分。
教室の前に立っているのか、誰かの話し声が聞こえてきた。
「...先生、見つかりましたか?」
「いや、...はまだ......見つかっていない。」
ん、なんだろう。話し声はするけれど入り口から遠いところにあり、かつロッカーに入っているためか、断片的にしか聞こえてこない。
「こんな...あいつは......馬鹿野郎!!。」
「もう......探しましょう!でないと、...間に合わなくなってしまう...」
......先生らしき人たちはどこかへ行ってしまったようだ。
いったいなんの話をしていたんだろうか。断片的にしか聞こえなかったとはいえ、話し方から察するに急を要する感じで声色も少し荒くなっていた。
「...まぁどうせ俺には関係ないだろうし、おとなしくあと数分この教室にいることにするかな。」
考えるのをやめ、独りそうつぶやいた俺はそのまま鐘がなるまでおとなしくしていたのであった。
「鐘の音だ...。や.....っと出られるー......とりあえず自分のクラスに向かうかぁ。」
隠れていた教室から自分のクラスの教室まではそう遠くないため伸びをしつつ、ゆっくりと向かう。
途中で同学年の、羽衣とよく一緒にいる女子が泣いている姿を遠目で見かけ、何かあったんだろうかと考えながら歩いていた。
今日は朝から考えることが多いな。夢のことと言い、サイレンといい、羽衣の友達が泣いている理由といい。
しかし後者2つの答えはすぐに出ることとなった。
「やっと見つけましたよ!!!!!康汰くん!!!!!!」
「うわっ!! ど、どうしたんですか工藤先生...そんなに急いで何かあったんですか?」
この人はうちのクラス担任の工藤先生である。日頃は物静かな男の先生でこんなに大きな声を出すことなんてないのだが、いったいどうしたのだろう。
「いいから急いで着いてきてください!すぐに向かわないと...!!!」
「せ、先生痛いですって、そんなに引っ張っていったいどこに行くんですか!?」
「病院に向かうんです!!!!!妹さんが登校中に事故にあって病院に運ばれたと、あなたのお母さんから連絡があったんです!!!!!!!!」
「.........は...先生は一体、何を言って...」
俺は先生の言葉を理解することができなかった。
異世界に移るのにはもう少しだけ時間がかかります、すみません。
筆者的にこの最初のプロローグ的な話がだいぶ大事だと思っており、
それを踏まえてからの異世界での生活、に移っていくのが大切なのでもうしばらくだけお付き合いください...。