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姉妹の決意

息抜きってレベルじゃなくなってる件について(^_^;)

目の前にある光景が信じられない。

酷い臭いに吐き気を感じつつも必死に耐える。耐えなきゃいけない。


「シル……」


目の前の光景を、とにかく赤い世界に一人、返り血に濡れた青い髪がなびく、その光景が信じられなかった。

思わず自分の口から溢れた言葉も、続きを紡ぐ事ができずにいる。声を、なにか一言でもいい。シルに懸けれあげなければいけないと思っているのに……。言葉が出ない。


「おおー、また派手にやったのぉ。儂は報告に行てくるのじゃ。ヴォルク、後片付けを頼んだのじゃ」

「はい、師匠。早めに帰って来て下さいよ?」

「わかっておるよ」


……オーウェンさんが何処かへ行くらしい。報告?誰に?何処に?

そんな事、今はどうでもいい。シルに、なにか……。


「……シ――!」

「お姉ちゃん、怪我はない?腕は?痛くないの?」

「……うん、大丈夫。シルが守ってくれたから……」


シルもなんともなさそうだ。良かった……。って、今はそうじゃなくて、私の事じゃなくてシルに……。


「あ、ごめんね。そうだよね。今の私、怖いよね。ごめんね。……部屋で着替えてきます」


シルフィー!

ここまでずっと、変わらなかった無表情は、私にはどこか泣きそうな顔にしか見えなかった。

思わず、腕を伸ばしても空を切っただけ。私は、シルを追い込んでしまっただけ。今は、ただただ自分の無力さに腹が立つ。

どうしてなにも言わなかった!どうしてなにも言えなかった!私が眠ってた十年間のシルのことを深く考えようとしなかった!?ただただ少し前の自分に腹が立つ。


「……カレンさん、シルフィーさんの所へ行ってあげて下さい。ここは俺一人で十分です」

「……でも」

「カレンさん、自分を責めるのはやめた方がいい。これは、なるべくして起きたことです。なんにせよ、いずれこういう事態は起こった。……あの時、誰が出ていようとこうなっていました。精々シルフィーさんがやるか師匠がやるかの差位しかありません」


ヴォルクさんはそう言うが、私が居なければシルがあそこまですることはなかったのではないか。シルがやる必要はなかったのではないか。そんな事ばかりが、私の頭の中でぐるぐると回る。


「カレンさん!」


突然、大きな声で名前を言われて体が跳ねる。とても驚いた。その一瞬だけ、嫌な考えが収まった気がした。ありがとう、ヴォルクさん。


「……今、貴方のすべきことは、シルフィーさんと話すことでしょう。行って下さい」


とても優しい声音だった。子供を諭すようなそんな……。って、私は今でも子供か。

突然、オーウェンさんの言葉を思い出した。まだ出会って間もないというのに。私は子供だ。無力だ。だから――。


「わかりました。行ってきます!」

「はい、シルフィーさんのことお願いします」

「俺からも頼んだぜ!」


……ゴーアンさん居たんですね。黙々と作業してるから気づかなかったや。

まあ、いい。シルフィー、不甲斐ないお姉ちゃんが今行くぞ。





とりあえず、シルの部屋の前には来れた。凄く緊張してきたよぉ。こんなのはじめて………って、記憶無いから当たり前か。


ま、まずはノックして。コンコンコン


「………誰ですか?」


平坦な声。けど、どこか警戒しているようなそんな声。でも、間違いなく私の妹のシルフィーの声だ。


「わ、私だよ。カレンお姉ちゃんだよ。入ってもいいかな」

「えっ!?ちょ、ちょっとだけ待ってて!」


中から凄い音が………。着替えてるんだよね?それだけだよね!?


「い、良いよ。お姉ちゃん」


ちょこっとだけ、扉を開けてその隙間から顔を覗かせている。可愛いけど、今はそれどころじゃないよね。


「お邪魔するね、シル」

「う、うん。少し汚いけど、ごめんね」


さっきから、シルは謝ってばかりな気がする。どうしてそんなに思い詰めてるの?

シルの部屋は広かった。とにかく広かった。最低限の物しか置いておらず、飾りッ毛もなにもない。そんな部屋だった。お姉ちゃんとしては少し悲しくなる部屋だよ。


「ひ、広いね」

「それは、一番広い部屋だし。あ、お姉ちゃんは適当なところに座っておいて。お茶淹れてくるから」

「シル、お茶はまた今度もらうから今は、話をしよ?」

「…………うん」


よかった。ちゃんと話を聞いてくれる。みんなの前とは違って、表情豊かな、いつも通りのシルだ。けど、その表情は暗い。お姉ちゃんは笑ってるシルが好きなんだけど。


「シル、私が眠ってた10年間何があったの?教えて欲しいな」

「………………言いたく、ない。私、お姉ちゃんに嫌われたくないよ」


今にも泣きそうなシルの顔。私も辛くなってくる。此処でやめれば、シルが泣かないのはわかっている。でも、聞かなきゃ先に進めない。


「大丈夫だから、私は絶対にシルの事嫌わない。絶対に」


少しは私の気持ち、伝わって欲しい。あのときは恐かったんじゃなくて驚いてただけなの。ごめんね、シルフィー……。


「………本当に?」

「本当に。少しはお姉ちゃんを信じて欲しいな」


今は、ずっと上にあったシルの目線が下にある。懐かしいこの感じ。てか、下目遣いは反則です!私の妹可愛い‼………ハッ!

いかんいかん。今だけは真面目なお姉ちゃんでいないと。


「わかった。少し長くなるけど、いい?」

「うん、全部聞いてるよ」

「…………えっとね――」


少し間があってから、シルは話始めてくれた。


「お姉ちゃんが、倒れてから3日位だったかな。私も倒れちゃったんだ。理由は、食料不足。……それまでお姉ちゃんの魔法に頼ってた水は勿論、火も起こせないから肉の類いも一切食べれなくなったの。それ以前に、動物を捕まえられなかったけどね。それに、お姉ちゃんを背負っては長距離を移動できる体力は、あのときの私にはなかった」


思い出すだけで辛そうなシルを見て、もう止めたいと思ってくる私がいる。でも、聞かなきゃ……。


「それでね、倒れた私は、とある人に拾われたんだ。その人は……魔人族だったの。あの時は本当に、殺されるんじゃないかって思ったよ。……でもね、温かいご飯をくれて、お姉ちゃんのことも心配してくれて……。優しい人だったんだ」


そう……だったのか。その人には感謝しかないかな。会うことがあれば、お礼を言いたいよ。でも、魔人族って?


「その人は魔人族だから、当然人間族とは敵対してたんだ。それでね、私はその人のいる魔人族側に協力したの。お姉ちゃんのことを治してくれることを条件に、ね。それから私は力を付けて、強くなって、偉くなって………。その間に、沢山人を殺したんだ。私はもう、人殺しなんだよ。………魔人族の人達もね、私のこと"殺人人形"って呼ぶんだ。ははっ、私のこと嫌いになるでしょ。人殺しの妹なんて――!?」


パンッ!!

ハッ!?思い切りシルの頬をひっぱたいてしまった。何してるの私!?ああ、シルのきれいな顔の頬が赤くなってる‼


「あ、ご、ごめんな――」


……じゃないでしょ!今言わなきゃいけないのは謝罪じゃない!


「――に、二度と、二度とそんなこと言わないで‼お姉ちゃん言ったよね、絶対にシルのことを嫌わないって。妹が人殺し?殺人人形?知ったことじゃない。シルは悪くない。もし、シルが悪いのなら私にも責任がある。だから、一人で抱え込まないで?少しは、お姉ちゃんを頼ってよ。昔みたいに、ね?」


い、言えたかな?かなりつっかえ気味で、途中から自分がなにいってるのかわからなくなったけど。大丈夫……かな?

って、えっ!シル!?ああ、泣かないで!?お願いだから。やっぱり痛かったよね、ごめんね!?………絶対今の私、カッコ悪いよね。慌てるだけだよ。


「お姉ちゃん、お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん!私、私!」

「うん、大丈夫、大丈夫だからね」


可愛いなぁ。私に抱きついてきくるシル。どれだけ経っても、シルはシルで、私の妹。これだけは、何があっても変わらない。絶対に。


十数分か、数十分か、よくわからなかったけど長い間していた気がする。泣きつかれたみたいで今は、声一つ出さずに私の腰を抱き締めたままだ。

あの~、シルフィーさん?そろそろいいですか?その豊満な胸が当たってて少ししんどいです。色々な意味で。


「落ち着いた?………だったら、一旦離れて欲しいな」


頷いたあと、名残惜しそうな表情をして離れてくれた。うっ、少し罪悪感が……。


「シル、お願いがあるの」

「……グスッ、なに?お姉ちゃん」


さっきの間に決めた覚悟をシルに話すだけ。それだけ。


「……お姉ちゃんに、色々教えて欲しいんだ。魔法も、戦う方法も、何でも」

「危ないよ?お姉ちゃんは私が守るから、そんな事しなくてもいいんだよ」


首を横に振る。それじゃ、なにも変わらない。聞いた意味がない!


「……私は、シルの足手まといになりたくないの。だって、お姉ちゃんだから。少しは、頼られるようになりたいの」

「……お姉ちゃんは今のままでも頼もしいよ(ボソッ」


なにか、言った?シルが下向いちゃっててよく聞こえなかったけど。


「わかった。魔法は私じゃあまり力になれないけど、それ以外なら。………危ないことはしないでよ?」

「うん、シルを悲しませたくないからね。魔法は……オーウェンさん頼んでみるよ」

「ありがとう、お姉ちゃん。私も一緒に頼んでみるよ」

「ありがとう、シル」


シルの満面の笑みを、目が覚めてから初めて見た。とても綺麗で、私は思わず見惚れてしまった。



「……皆さん、お騒がせしました」

「いや、いいんだ。どうせこうなっただろうしな。オーウェンの婆さんもそろそろ戻ってくるし、話はそん時にな。……なんかあんだろ?」

「はい、ありがとうございます。ゴーアンさん」


シルと食堂に降りると、そこにはゴーアンさんとヴォルクさんがいた。後片付けは終わったみたい。なにも手伝えなくて申し訳無いよぉ。


「なぁ、ヴォル坊。シルフィーのやつ、少し雰囲気が――」

「戻ったのじゃ~~」

「ば、婆!間が悪すぎんだよ!」

「なんじゃと!そんな事儂の知った事じゃないわい!」


……オーウェンさんが帰って来て早々ゴーアンさんと口喧嘩してる。

……他人からしたら孫と年寄りが言い争ってるように見える。どっちがどっちとは言わないけど。


「オーウェンさん、ゴーアンさん?」

「「シルフィー、すまんかった(のじゃ)!」」


また、無表情のシルフィーがいる。怖いからやめて欲しいんだけどなぁ。


「オーウェンさん、ゴーアンさん、お願いがあるます。……私に、色々教えて貰えませんか?」

「……俺は構わねぇが、鍛冶と錬成術、錬金術、あとは刻印魔法位しか教えられねぇぞ」

「ゴーアンさん、十分凄いことにいい加減気づいてくださいよ」


ヴォルクさんが呆れてる。……私も、凄いとは思ったけど。全部わからないことだし。


「儂は、もう弟子がおるしなぁ。ヴォルク次第かの。……第一、姉殿が魔法を使えるようになるかは判らんぞ?」

「俺としては、一緒でも構いませんよ。シルフィーさんのお姉さんですし、信用できます」


ヴォルクさん……。やっぱりいい人だった!この人には、もう頭上がらないよぉ。


「よかったね、お姉ちゃん」

「うん。皆さん有難うございます」


ここにいる人たちが、シルが出会った人達が、いい人ばかりでよかった。本当に、有難うございます!


「皆さん、お姉ちゃんのことよろしくお願いします」

「「「………ハッ!?」」」

「……今、笑ったよ、な」

「………シルフィー、笑えたのじゃな」

「……シルフィーさん、よかった」


恐らく皆の前では、ずっと無表情だったのだろう。シルが私以外の前で笑顔を見せるという爆弾を放ってこの騒ぎは幕を閉じた。


どうでしたでしょうか。二人の気持ちが少しでも伝わればいいなと思います。

次回は、少し書き方を変えてカレンの日記風で書いてみます(どこかで見たことある気がしますが)。シルフィー視点もそのうち書きたいですね。


メインの方は、もう少しお待ち下さい。現状、筆が完全に止まってしまっていまして(^_^;)))

出来うる限り努力いたしますので。こちらは、それなりに書けているのが皮肉ですが、くっ(´・ω・`)

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