勘違い?
YAHOOの検索エンジンが使えなくなって早2ヶ月。
MSNじゃまともに検索できないよぉ~。
「ねえアレン。思うんだけどさ、最近訓練用ダンジョンに入り浸りじゃない? 貴方の仕事は掃除と治安維持だったはずだけど」
何時だったかに言っていた様に、エリシーはアレンに魔石集めを控えるように言うつもりなんだろう。
「それはそうなんだけど。早速アルバイトさんが1人入ってくれて余裕も出来たし、悪さをするような人も全然いないからね」
「確かにマルエラさんは働き者だし、娘さんのマーナちゃんもよく手伝っているみたいだけど。ギルドは徐々に滞在する冒険者の人数を増やすはずだから、きっとすぐに人手が足りなくなるわ。第一、荒事には対応できないじゃない」
「もうすぐリーノさんが二人目のアルバイトとして来てくれる筈だから戦力としては十分だと思うけど。……マスターもエリザさんも、継続的に魔石が産出されることは重要って言ってたし」
「あれ? リーノさんが来るなんて聞いてないけど……マスターそんなこと言ってたっけ?」
「あ、そうか……えーとね。まだ本決まりじゃないみたいだから他の人に言っちゃ駄目だよ?」
まだリーノ本人に伝えていないだけで、ほぼ決定といっていい。
「そう……それはともかく、やっぱり貴方はやりすぎだと思うの。マスターからの依頼報酬を除けば鉄貨の半分以上は貴方が回してるんじゃない? その分、冒険者達の取り分が減っているともとれる訳だし」
「……そんなに気にしなくても良いんじゃないかな。マスターは迷惑なら言ってくれる人だよ」
アレンはどこか不貞腐れたような態度で返事をした。彼がエリシーの為に頑張っているのは僕にも分かる。そのエリシー本人から否定されるのは遣る瀬無いのだろう。
態度に出してしまうのは良くない気がするが。
「……どうしたのよ? 別に貴方を責めている訳ではなくて、ただもう少しペースを抑えたほうが良いんじゃないかなぁと」
怪訝に感じたのか、エリシーも少し押しが弱くなった。
「……そうだね。これからは少し抑えることにするよ。気遣いありがとう。……一応の目標額には届きそうだし」
「え? なに? もう一回」
ぼそりと言った一言を聞き逃したようだ。
うーむ、ラブコメの世界だ。
「いや。なんでもないよ」
「……?」
「それじゃ、ちょっと見回りにでも行って来るから。後でね」
「分かったわ。それじゃ」
去っていくアレンの背中を不思議そうに眺めるエリシー。
そんな彼女に話しかける者が居た。
といっても、アークなわけだが。
「ようエリシー。相変わらず青春してんなぁ」
満面のシニカルな笑顔が小憎らしい。
「青春? 何を見て言ってるのか分からないけど……アナタが言うと何故か下品ね」
相変わらずアークに対しては辛辣だ。初対面のときは余所余所しかったと言うのに、あっという間に一方的な犬猿の仲状態になってしまった。
尤も、アークの方は何処吹く風だし、エリシーもストレスに感じているわけでは無い様だし、ある意味では彼女が気兼ねなく話せる数少ない相手だ。
「盗み聞きなんて趣味が悪いわ。おまけに聞いておいて青春だなんて言っているんだから頭も悪いのね」
「ひでぇなおい。たとえ思ってたってなぁ、言っていいことと悪いことがあるんだぜ? 人生の先輩としてのアドバイスだ」
「アナタが敬うべき人であったらどれほど良かったことか。ダンジョンの評判が下がるから人前には出ないでほしいものね。事務所に引っ込んで、早くキャスさんを口説いてあげなさいよ」
キャスがヒドイ男に捕まってもいいと思っているわけではないだろうに。
アークの方はというと、一瞬だけ頬を引きつらせて通路の奥の方に目をやった。
……その先の曲がり角ではキャスが嫉妬と羨望に苛まれながらストーキング中であったりする。
「その話はやめよう。マジで。妙なところに飛び火したら面倒だ。誰が聞いてるか分からんからな」
「はぁ? アナタ……人目を気にしたりとか出来たのね。意外だわ」
「失礼な奴だなぁ。流石の俺もここまで言われたことは……はて、どうだったかな」
「はぁ。もう良いわ。で? 何の用なの?」
「いや、用事はないぞ」
エリシーは人差し指で自分の額をグリグリと突きながら悩ましげな様子だ。
「……ちょっと理解できないんだけど」
「いやなに、俺とお前の仲じゃないか。用が無くてもダラダラ話せる関係だろ」
「……ちょっと聞こえなかったんだけど」
「お前も大概いい性格してるよな。ったく。やめだやめだ、柄にもなくお節介焼こうなんて思うもんじゃねーな」
「お節介って? 何かの隠語?」
「あーもういいから。そんじゃ。またな……あぁ、ダンジョンマスターによろしく頼むわ」
アークは如何にも億劫そうに去っていった。
僕はいったい何をよろしくすればいいのか。ギャンブルは暫くやらないつもりなんだが。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ねー。チーヤーちゃーん。ごめんったらー。機嫌直してよー」
僕からのプルの実の採取依頼を終えてからと言うもの、ピコンはチヤのご機嫌取りに忙しい。僕と話すときも少し元気が無い。
「むー」
どうやらチヤは、一番最初に僕にプルの実を届けたかった様なのだ。
僕も配慮が足りなかったかもしれないけれど、かと言って僕が取り成したり謝る訳にはいかない。一応は事情を知らない事になっているのだから。
「おねがいだからー。もー明日には町に帰らないといけないのよー。その前に仲直りしようよー」
「むーー」
「お土産買って来るからー」
「……」
あ、手応えあり。
「も、もうじき渓流マスが美味しい季節だからー。取ってくるからー」
「……お魚嫌い」
「……あぅ」
気まずい空気の中、石造りの廊下にコツコツと足音が近づいてきた。
二人とも目線を逸らす口実がやって来たことに少しホッとしているようにも見える。
「あれ? ピコンさん、チヤちゃんも……どうかしたんですか?」
アレンだ。先ほどまでも相変わらず魔石集めに励んでいた。
「あ、あーアレンさん。これはー、えーっとですねー」
「……もしかして、まだ喧嘩中ですか?」
「あ、あははー。実はー……」
「もう、チヤちゃん。ピコンさんだって別に悪気があった訳じゃないんだよ? 仕事だったんだし」
「むー。だって」
「そうだ! 僕は今度町に行こうと思ってるんだよ。その時に何か買って来るよ。町の物ならマスターだって珍しがって受け取ってくれるかも知れないしさ。だから機嫌直そう?」
町に行くだなんて初耳だ……まあ、今はダンジョン内で荒事もないし問題はないだろう。
「そ、それならー、私もお手伝いしますー。手伝わせてくださいー」
「はい。こちらこそお願いします。それに、ですね、丁度別件でお願いしたいこともありまして」
アレンはどこか言い難そうというか、恥かしそうな表情だ。
今まで二人にはそれほど接点も無かったはずだけど、どんな用事なんだろうか。
「お願いですかー? 全然大丈夫ですよー」
「良かった。ではこの話は後で。チヤちゃんはどうかな? マスターが気に入ってくれそうなものを二人で探してくるから」
「二人で……」
「……はい。ピコンさんごめんなさい」
「……えっ、あ、大丈夫だよー。私も頑張るねー」
「それじゃ、チヤちゃんは一緒に部屋に戻ろう」
「うん」
「ピコンさん、それではまた今度お話しましょう。……その、お願いの件についても」
「あ、そ、そのー、実は明日には町に戻りますのでー。次に来るのは来月の予定でしてー」
「え、そうなんですか? では明日の朝、出発する前にお会いできますか?」
「はいー。わかりましたー。デーンとジャンにも伝えときますー」
「あっ……えーとですね。パーティのお二人には出来れば内密にお願いします。その、恥かしいというか、照れくさくて。別に彼らが口が軽いとか、信用できないとか思ってる訳ではないのですが……。どうせ後で話さなければならないですし。でも出来れば最初は二人で話したくて……そうですね、今日は角部屋が空いてたハズですし、そこを借りておきますので明日の朝に……あの、どうかしましたか?」
話を聞くうちに挙動不審になるピコンに、アレンは怪訝そうに質問した。
「ひゃっ、ひゃいー! わからましたぁ~」
正直、勘違いしても仕方ないと思う。
「……では、お願いします。わっ! チヤちゃん!?」
チヤが急にアレンの手を取って引っ張り始めた。
「むー! 早く帰るの!」
「わ、分かったから、ちょっと待ってどうしたの!? で、ではまた明日!」
アレンはチヤに手を引かれ、前のめりに去っていった。
「ひぇぇー。うゎーどうしよー。だ、大丈夫よピコン! きっとなんにもないからー! 勘違いだからー!」
キャラの名前を忘れた!!
って読者の方が多いようです。というか私も忘れてる人が居たりします。
でも問題ありません。数年前に一回名前が出ただけ……なんてとあるキャラも平気で再登場させる予定がありますから。いちいち覚えてなくても何となく通じるようにするつもりです。
キャラクターには説明口調はあんまりさせないつもりですので、分からないときはイメージ力だけで読み進めちゃって問題ないと思います。