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依頼と雇用

『今日はピコンさんからプルの実のジュースをもらいました。』


『美味しかったですか?』


『美味しいです。』


『どんな味がしましたか?』


『あまくて、すっぱいです。』


『プルの実はどんな色ですか?』


『そとは赤です。中は青です。』


 なんだそれ。毒々しいな。


『プルの実は珍しいですか?』


 チヤはキョトンと首と傾げた。


『マスターはジュースが飲みますか?』


『正:マスターはジュースを飲みたいですか?

 答え:飲んでみたいです。』


『全部飲んじゃいました。』


 シュンとしている。落ち込む必要なんてないというのに。


『チヤさんが貰った物です。全部飲んでもいいです』


『また下さいってお願いします』


『私にあげる為にとは言ってはいけませんよ。プルの実は私から依頼を出せば冒険者から貰えます。だからまた貰えたらチヤさんが全部飲んでください。』


 一生懸命に文字を追って、意味が分かるとニマニマし始めた。

 そんなに美味しいのだろうか。


『はい』


「チーヤー? ご飯だよ?」


 扉が開いてチコが現れた。 


「うー。もうちょっと」


「あ、マスターも一緒だったんですね」


『お姉ちゃんがご飯って言います。』


『お疲れさまですチコさん。チヤさん、折角エリシーさんがご飯を作ってくれたんです。暖かい内に食べた方がいいですよ。』


『わかりました。お話、ありがとうございました。』


『こちらこそ。またお話しましょう。』


「……えへへ」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「キャスさーん」


「ピコンさん。いつもお疲れ様です」


「キャスさんもお疲れさまー。依頼達成の報告でーす」


 彼女はそう言って依頼書をカウンターに差し出した。


「ダンジョンマスターからの依頼ですね。お一人なんですか?」


「うちの男共はですねー、ゴーレム対策の武器選び中なんですよー。はい。プルの実10個とー、木の苗3本とー、土嚢袋いっぱいの落ち葉……取ってきましたけど……こんなんで依頼達成でいいんですかー? 木の苗とか、その辺に生えてる若木をてきとーに抜いてきただけですけどー」


「えーとですね。ダンジョンマスターが現物を確認してから報酬が支払われる契約になってますね。少しお時間を頂きますけど、こちらで待ちますか?」


「んー、そしたら夜にまた来ますねー。午後はダンジョン探索なんですよー」


「さすがです。頑張ってくださいね」


「報酬が鉄貨5枚なのでー、あと1枚見つければ私のパーティって1人2枚になるじゃないですかー? 1人1枚と残り2枚を換金でもいーですけどー。ピッタリ山分けの方が色々便利なんでー」


「うーん。ギルドとしては現金報酬を選んでくれた方が有り難いらしいんですけど……。ところで、まだ随分たくさんプルの実をとってきたんですね。ジャムでも作るんですか?」


 キャスの視線はピコンが抱える袋に向いている。


「あーこれですかー。これはですねー。チヤちゃんとプル三昧を楽しもうかなーと」


「わぁ~、いいですねープル。そんな季節なんですね」


「この間ーチヤちゃんとジュースを飲んだときにとーっても気に入ってくれたんですよぉ。ついでなんでタップリ取って来ましたー」


「メンバーのお二人とは飲まないんですか?」


「んー、あの二人はお肉とお酒があればいいのでー。今夜は女子会ですよー。ダンジョン探索が終わったらパイを焼いてー、プルのジュースで食べるんですよー」


 どこか浮かれたように語るピコン。対するキャスはそれを羨ましげに見ていた。


「そ、そうなんですか……。随分沢山作るんですねぇ」


「うふふー。山ほど作ってーお腹いっぱいまで食べますよー。ではではー。後でまた来ますねー」


「お、お気をつけて」


 さて、キャスから連絡があったらスケルトンに荷物を取りに行かせよう。

 あとは、ゴーレムに鉄貨を仕込んで置くとしようかな。チヤと仲良くしてくれているお礼になるだろうか。




 それはそれとしてだ。

 手元の書類を手に取る。掃除夫アルバイトの応募書類が10枚。先日ダンジョン内でアークとエリザが話し合っていた内容が早速形になって来た。ピコンのパーティへの報酬支払いのついでに此方の書類についても返答しなければ。


 ギルド経由で渡されたこれらの書類には、家事・接客・戦闘・護衛などの経験や能力、さらには性格やら定期性評価までされている。

 建前では僕から募集をかける体であるらしいが、現状は結局ギルドからの斡旋に等しい。それでも僕に選択権があるし、雇用期間も明確に決められるならば今は十分だろう。


 なになに?

 

 1枚目……リーノ? 確かチコと交流のある冒険者だったはずだ。

 家事は野営程度の料理能力。それなりにキレイ好き。冒険者ランクDでパーティ及びギルドからの信頼は厚い。パーティメンバーが怪我をして療養中なため、短期バイトがしたい……。

 まあ、身内と知り合いだし、短期だし、第一陣としては申し分ないだろう。


 2枚目、名前はマルエラ。夫と死別。娘一名を養う為に住み込みで長期間雇用を希望。娘の名前はマーナ。チコと同年代。本人は家事万能。戦闘能力なし。分割でも良いから生活のために前金が必要。

 ……僕の良心が試されている気がする。これ断って無用な恨みを買うことはないだろうか。うーん、意地悪だ。雇うにしても、短期からだろうな。信用がおけるようなら長期間働ける人材は好ましい。


 3枚目、ニヴェアナ。一匹狼の女性冒険者。家事能力低。料理は比較的得意。冒険者ランクD(近々昇格試験を予定)。最近町に渡ってきた冒険者だが仕事に誠実。性格は好戦的な面あり。

 なんでこんなミニマリーナみたいな人が清掃員なんぞに応募してきたのか……。少し怪しいか?


 4枚目、マナマ、シャイナ。二人組みの女性冒険者。……なぜこんなにも女性率が高いのか。なんらかの思惑があるにしてもいったいどんな?

 男だとエリシー達と問題を起こす可能性があったりするのだろうか。それとも僕が女好きだったり女性を優遇すると思われているとか? まぁ、その節はあるかもしれないけれども……露骨過ぎではないだろうか。

 

 5枚目、サーナリナ。ホーサリス商会所有の奴隷。まさか奴隷を出稼ぎに寄越すとは。これ絶対にスパイだって。なんでギルドはこんなのまで渡してきたのか。

 ハーディング商会に権力が集中しないようにしたいのだろうか。


 ……。

 …………。

 ………………。


 うーん。とりあえず、3~4人位雇ってみるとして、怪しいのは全員シャットアウトしよう。アルバイト用の部屋は6部屋しかないと伝えてある以上、ギルドも全員が雇われるとは考えていないだろうし。

 一ヶ月くらい雇ってみて、様子見だろう。

 会って面接できたらいいのだけど、こんな立地の悪いところにそのためだけに呼びつけるのもなぁ。ギルドへ返事をする前にエリシー辺りにも意見を聞いてみるとしよう。

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