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初級ダンジョンの扱いは?

あけましておめでどう御座いました。お久しぶりです。

 そして例のごとく女湯会議。

 ダンジョン攻略後、びしょ濡れのエリザをどうにかするため、また情報を整理する時間が欲しいということで先に風呂に入りたいと申し出があったのだ。



「なるほどな。浸水回廊の方はある程度準備が必要か。戦闘自体の危険度は少ないようだが」


 両ルートの情報共有は既に行われている。


「ですがモンスターの行動については調査不足かもしれませんね。水辺での戦闘は少々勝手が違いますし、溺死の可能性もあります」


 ナデアからの指摘は確かにその通りだろう。


「……申し訳ありません、そこまで気を回す余裕を持てませんでした」


 主にアークの所為で。というのは報告から省かれていた。

 一番の敵がアークだったことも。


「まあ、それについては仕方ないだろう。しばらくは冒険者には私達のルートを推奨しておいて徐々に調べていくのが妥当だな」


「日程は多めに確保して有ることですし、明日改めて調査しますか?」


「ふーむ、そこまでする必要は……いやそうだな。ダンジョンマスターの許可が出たらアレンを連れて調べに行こう」


 休憩所では反対していたのにどういう風の吹き回しか。


「アレンさんをですか? 彼も今はダンジョン側の人間ですが……」


「既にある程度安全や内容は確認してある。アレン位の技量で実際にどの程度通用するのか見ておいて損はないし、既に攻略を終えた私がサポートに入る。大丈夫だろう」


「そこまで言うのでしたら……そうですね。私の不手際でしたが、お二人にはもう一日お付き合いお願いします。ダンジョンマスターに確認してからになりますが」


「いや、明日は私とアレンの二人で十分だろう。ナデアにはエリシー達と関わる時間を作って欲しい。エリザはギルドの仕事もあるのだろう?」


 マリーナはそう言うが、二人はあまり賛成していないようだ。


「確かにナデアさんが彼女達と親しくなるのは良いことだと思いますし、私も多少はすることが有りますが……お二人だけにお任せしてしまうわけには行きません」


「エリザさんの言う通りですよ。それに調べきっていないから再調査をするというのに、ある程度調べたから大丈夫などという言い分は通らないのでは?」


「ぐぅ……実は少し気になることがあってな。少ない人数で行きたい。ここは目をつぶってくれないだろうか?」


 なんだそれは。


「……それはダンジョンの今後に関わることなのですか?」


 エリザも不審に思っているようだ。


「……個人的な行動ではあるが、ダンジョンの今後に大きく関わることでもある」


 マリーナも不器用というか馬鹿正直というか……良く言えば誠実ということだが、ここは多少の嘘やハッタリで見逃してもらえる可能性がある流れだろうに。


「……わかりました。再調査についてはマリーナさんにお任せします。ギルドへの報告は必要性を感じたらで構いません」


「すまない」


 明日は彼女の行動には注意しておかなければ。しかしダンジョンマスターの監視関連の事が気になるということなら注視しているわけにもいかない。いつも通りを心がけつつ、だ。




「エリザさん、魔石の方はどうですか?」


 空気を換えるようにナデアが問いかけた。おそらくエリザに対してだろう。


「そうですね……。質の揃った八等級がそれなりな数と六等級が一つ……やはり多人数パーティの収入としては物足りないのでしょうね」


「だろうな。しかし、仮に連日のようにダンジョンが攻略されてその魔石が全てここの支部で換金されるとすれば馬鹿に出来ない量になる。ギルドからも何らかの方法で初級ダンジョンの利用を促すべきだ」


「エリザさん、例えばギルドからの依頼として魔石回収を促せないのでしょうか?」


「現状ではそれが一番妥当ではあります。しかし依頼でなくとも魔石買取は行っていますので、割り増しの買取になるのは間違い有りません。利益の大きさが不確定な状況で上層部がそれを受け入れるかは……」


「確かにそうかもしれませんね」


 その点、ハーディング商会は太っ腹だ。今だって投資に見合う利益を上げているとは言いがたいだろうに。


「訓練所として利用すると言う話はどうするつもりだ?」


「それも上に報告してからですが……今は良案がありません」


「そうですよね。誰かが教えるにしても人件費が掛かりますし……」


「魔石回収を効率的に行うためには自然と最適な動き方や準備を模索する必要がでてくるのではないか? 重要なのは自主的にダンジョンに潜るように仕向ける環境だと思うが」


「なるほど……その通りだと思いますが、『自主的に』という問題がここでも出てきますね」


「攻略にかかる時間を記録して上位者に褒賞を出すというのはどうだ?」


「マリーナ、それでは時間を計る仕事をする人が必要になりますし、第一褒賞は誰が出すのですか」


「う……うーむ」


「冒険者の中には名を上げたいと考えている者も多いですが、いきなりそれを実行するのは難しいでしょうね。地下二階には既に予定地というのが準備されていましたし、今後に期待として具体的な方策は見送りになる可能性が高いかも知れません」


 一蹴されてしまったマリーナの案だが中々に面白い。考えておこう。


「ならばいっそのこと初級ダンジョン攻略をギルドランクの昇格試験にしてしまえばどうだ? 皆必死に研究するぞ?」


「……昇格試験の手法を固定してしまっても良いものなのですか?」


 ナデアが問う。おそらくエリザに向けて。


「……分りません。ですが一考に値します。多くの冒険者がダンジョンの攻略法を模索することでしょうし、攻略方法が確立すれば他所からも冒険者が集まってくる可能性もあります。上に報告しておきましょう」


「ですが手順どおり進めば昇格できてしまうようになってしまうのも問題なのでは……」


「その通りですね。ですから、仮にそうなるとしても人数や時間に制限を設けるなどして確実に実力を見極められるように調整するはずです。ダンジョン自体も近道などありませんし不正は難しいことでしょう」


「……それならば有効なのかもしれませんね。ここの初級ダンジョンは短いですが様々な戦闘環境を体験できます。攻略のために試行錯誤することがそのまま訓練となりますね」


「実行するにしても先ずは様子見となりますが……冒険者達の攻略の様子を観察して適切な難易度を設定する必要がありますし、上からもすぐに許可がでる訳ではないでしょうし」


「焦る必要はないだろう。ダンジョンマスターは安全面にかなり配慮している。ならばギルド側も安全を最優先にした行動を取った方が良い」


なんだか大事に発展してしまったかもしない。



「それで、ダンジョンマスターにはどのように報告するのですか?」


「今の話を殆どそのまま伝えて問題ないでしょう」


「……さすがに失礼になりませんか?」


「勿論言い回しには気を使いますが、内容はそのままで行きます。冒険者達の旨みが少ないことは冒険者本人が一番良く分っているはずなのですから、初級ダンジョンの利用が少なければダンジョンマスターにも伝わります。ここでダンジョンの出来を絶賛したところでギルドへの信頼を失うことに繋がりかねません」


「つまり、いずれはバレてしまうのだから率直な意見と感謝を伝えた方が心象は良いだろうということですね」


「その通りです。多少は賭けの部分も有りますが、ダンジョンマスターの人柄を考えれば大きな溝を作る程ではないはずです」


 それなりに人格も認めてもらえている様だ。


「ダンジョンの難易度という点では問題ないと思うがな。もしも地下二階の増築の話になったら私にも口を挟ませてくれ。安全面ばかりに気を取られて面白みのないダンジョンになってしまうのも問題だろう」


 エリザはバトルジャンキー的な面白さよりも集客と収入の方に重きを置いているようだが、マリーナのように戦いを望んで訪れる人にも配慮したほうが良いのだろうか。暫くは冒険者達の反応を見るしかないな。


「……それは構いませんが、ダンジョンがつまらない等ということは言わないで下さいね」


「勿論だ。それにモンスターの戦闘能力以外も含めて総合的に見れば中々楽しめたぞ」


「最後の戦闘は随分楽しそうでしたが?」


「ああ、あの鎧は良かったな。初心者には大きな壁になるだろう。Dランクでも一対一では厳しいかも知れないな。多人数で挑めば隙は多いが……」


 あのリビングアーマーでD~Cランクか。意外と強めなのかもしれない。多人数での試験などもあるのだろうか。


「とにかく、お風呂を上がったらダンジョンマスターに報告します。お二人が意見を求められた場合は失礼にならない程度に率直な意見をお願いします」


「分りました」


「分った。……アークはどうするのだ?」


「……お風呂の外では説得の時間がありませんね。エリシーさん達に聞かれるのも問題があるかも知れませんし、密談の様子をダンジョンマスターに訝しまれてしまうかも知れません。アーク抜きで報告しましょう。彼には町に戻るまでに言い含めておけばよいでしょうし」


「それがいいだろう。あいつの事だ。あえて参加したいなどとも言うまい」


「ではそういうことで」


 彼女達は度々風呂場でこのように結構本音で意見交換を行うが、それは風呂は個室と並ぶ非監視エリアだからなのだろうか。彼女達には、僕は見ることは出来ても聞くことにはマイク等が必要だと思わせることに成功しているはずだし、そこまで神経質にはなっていないと思っていたが、こそこそ話す姿すら見せたくは無いみたいだ。あとは個室で話すタイミングが得難いからというのもありそうだが。


 それにしても、やはりギルドは僕に対してかなり気を使って対応している。それでいて完全に下手に出るわけではなく、慎重さと図々しさを使い分けた交渉は勉強にはなるが精神的に少し疲れてしまうな。

 色々と面倒な準備は早く終えてしまって、のんびりとダンジョンでの暮らしを眺めるような生活を送りたいものだ。

マスターへの報告シーンはカットします。

次回は久しぶりにアレンさんの出番ですね。


なんでこんなに面倒くさい小説になってしまったのでしょう。それもこれも全部エリザの所為です。彼女が絡む会話は非常に難しいです。会話一往復考えるのに30分掛かったことも有ったり。もっとほのぼの眺めるようなお話を目指していたのに……。

そしてこれから更に1~2派閥が混ざりこんできて人間関係が今以上に複雑になる予定になってしまいました。


あと主人公の名前もいい加減考え始めないとな……。登場は終盤になりますけどね。まさか火星物語より遅くなるとは。

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