テストプレイヤー集結●マップ4.3●
エリザ達の予定にあわせて冒険者達は順次引き上げていった。
ギルドとしても被雇用者に知られたくない情報があるということなのか、あるいは今後を考えて不必要な情報の拡散を嫌ったのか。こちらとしても、人が少なくなった方がダンジョン改変のタイミングを取り易いから丁度いいわけだが。
エリザ達の到着は昼過ぎの予定だ。
今日までの間に、人がいない隙を見て地下一階にダンジョン部位を作っておいてある。あとは次の改変で壁を取り払えばいい。
いくら魔力の回収量が増えたとはいえ、この規模のダンジョンを作るのが限界だった。走破するのに長くても半日はかからないだろう。卓越した冒険者ならば1時間も掛からないと思う。
まあ、ギルドの要望である魔石の供給源としての意味合いもあるため、長ったらしいダンジョンが続くよりはいいだろう。
モンスターにつぎ込む魔力量については、以前盗み聞いたナデアの評価を参考にした。風呂前のクレイゴーレムの魔石は『出来立てのダンジョンにしては良質だが、たいした値段にはならない』といった感じだったはずだ。最後のリビングアーマー以外は全て、このクレイゴーレムよりも少し多めの魔力で作ってある。得られる魔石は殆ど同じ品質のはずだ。唯でさえ価値が低いのだから、せめて品質を一定にすることで用途が見つかるかもしれない。
リビングアーマーについては、所謂フロアマスター的な役割を担ってもらう。どの程度魔力を込めれば良いのかわからなかったため、正直適当だ。乱獲を防ぐために再配置までの時間を長くし、それでも瞬殺で狩られ続けたら採算がギリギリ取れないレベルを狙ったつもりだ。出血大サービスである。
マリーナあたりなら苦も無く倒せるのではないだろうか。上位の冒険者の収入には足りないくらいの価値になるのがベストだが……そのあたりはテストプレイヤー達の反応を見て調整するとしよう。
ダンジョンの入り口は、地下一階ロビーの脇にある。ギルドカウンターの正面だ。この新しいダンジョン区画に人が入り過ぎないように、そして悪さをしないようにギルドにはそれとなく監視してもらいたいところだ。
さて、エリザ達が来る前に開通させておきたいが……まあ地下一階から一瞬でも出てもらえればいいのだから、いざとなったら何とでもなるだろう。
「エリシー。元気にしてたか?」
一行が到着したので、エリシーを出迎えに遣ったのだ。メンバーはマリーナ、ナデア、エリザの三人だけだ。
まあダンジョンの様子を見てほしいという旨は伝えてあったから、サラをつれてくるわけには行かなかったのだろう。一緒に行動するにしても、宿で留守番させるにしても危険が無いとは限らない。
「大げさですよマリーナさん。ちょっと前に会ったばっかりじゃないですか」
「あのなエリシー。知人が十日以上もダンジョンに篭っている状況を世間では『ちょっと前』で済まさない。いくらここが安全で、もう何ヶ月も続けているにしてもだ」
「エリシーさん。どうかマリーナの気持ちも分かってあげてください。可愛い妹分が普通とは言いがたい、波乱の人生を歩み始めてしまったのですから。ダンジョン公開直後は特に落ち着かなかったのですよ」
ナデアもマリーナのフォローをする。二人は護衛の合間に首輪の解除法を探っているのだそうだ。毎度、ここに来るたびに近況報告をしていっている。
結果は思わしくないようだが……。
「まったく。人里はなれて地下に住んだりして、時間の感覚が狂ってしまっているのではないか? 変化の無い単調な日々は人を老けさせると聞くぞ」
「老けるとか言わないで下さい。確かに娯楽は少ないですけど、ここに来る冒険者は良い人ばかりですし、町の話とかはよく聞いてます。結構楽しいですよ。だから人を世捨て人みたいに言わないでください」
「……はぁ。ここに馴染み過ぎではないか? 最近のお前はどうも町に戻る意思が欠けてるように感じるぞ」
「……確かにここは居心地がいいかも知れません。奴隷に落ちて一度諦めた人生を拾って貰ったご恩があるというのもありますけど、ここでは冒険者同士のしがらみとか暗黙の了解みたいなものを気にする必要がないですし、お金や宿を気にすることもないです。今のところ掃除の仕事もきつくないですし食料も十分まかなえてるんで、生活に不満はないんです」
マリーナは凄く複雑そうな顔をしている。どう答えていいかわからないといった感じだろうか。彼女としては、早く奴隷から開放して町で人並みな暮らしを送ってもらいたいのだろう。普段の冒険者達との会話を見ていても、すっかりダンジョン側の人間として馴染んでしまっているように思う。
「まあまあマリーナ。辛い日々を送っているわけではないのですから、良しとしておきましょう。それより、わざわざ出迎えに来たということは貴方はダンジョンマスターからなにか伝言を預かっているのではないですか?」
ナデアの言葉に、エリシーが『あっ』と声を上げる。……まあ彼女も心の内では再会を喜んでいたのだろう。
「えと、マスターからお話があるそうなので用が済んだらギルド会議室のボードに来て欲しいとのことです。急ぎでは無いので、お風呂に入るなり一休みするなり、エリザさん達の予定していたスケジュールで行動していいと」
これに答えるのはエリザだ。
「分かりましたエリシーさん。今夜は御厄介になる予定ですが、先にダンジョンの用件を済ませてしまいます。できるならテストの方も。皆さん、荷物だけ置いて会議室に向かいましょう」
「ん。問題ない」
「わかりました」
あっさりと了承する二人。
エリシーを加えた一行は宿への階段を下りていった。
さてと、いよいよ温めに温めてきたダンジョンをお披露目するときが来た。期待に沿うことができればいいのだが。
地図見ずらいのには目をつぶってください。
まさかのネタバラしから、面白い文章がかけるのだろうか?
不安。




