間取り決め
「なっ、何をしているのですかぁ!!」
エリザが声を荒げる。普段の彼女からは想像もできない程の怒り様だ。
軽く引くレベルである。
「んぁ? ああ、エリザか。ようやく来たな」
その怒りの矛先であるアークは意に介した様子もなく、いつもどおり自然体である。
つい先ほどまで筆談ボードの前に胡座をかいて、船を漕いでいたのだ。
彼の方から話しかけて来たにもかかわらず話の途中で寝始めてしまった。なんとも自由な人間だ。
一応ボードはリセットしておくとしよう。見られたら彼が殺されてしまうかもしれない。
「早く立ちなさい! 早く! ――ダンジョンマスター様、申し訳ありません。うちの者が大変失礼致しました。後でキツく言っておきますので、どうかお許し下さい」
アークに立つように促して、彼女自身は深く頭を下げて詫びてきた。アークは面倒くさそうに立ち上がって、来訪者たちに目をやる。その視線がキャスを捉えたところで物凄く嫌そうに「げぇ」と呻いた。
「アーク様、その反応はヒドイです。アーク様のお力になるためにエリザさんに頼み込んで付いて来たんですよ」
悲しそうに訴える彼女に、アークは「余計なお世話だ」と短く答えるだけだ。しかしキャスはそんな素っ気ない態度に屈することはなかった。
「私が来たからにはもう何も心配する事はありません。アーク様の手となり足となり、どんな仕事もこなして見せます!」
――なるほど。彼女は人の話を聞かないタイプのようだ。ついでに思い込みが激しい。
「二人共、まずは挨拶が先です。私語は謹んで下さい」
エリザの言葉に二人はボードの方を向いて姿勢を正した。心なしかアークがホッとしている様な気がする。
「お騒がせして申し訳ありませんでした。冒険者から報告を受けまして、地下一階のスペースが確保できたと判断しましたのでサラ様とともに再び参りました」
【お待ちしておりました。早速本題に入りたいところですが、その前にそちらのお二方を紹介していただいても宜しいですか?】
「はい。彼女はキャスです。ギルドの職員で、私とアークの後輩にあたります。受付から事務まで一通り経験がありますので、能力面では優秀な人材です」
紹介に合わせてキャスがペコリとお辞儀した。能力面『では』優秀とのことだが、なぜそんな事をアピールしてくるのか?
先程もアークの力になるとか何とか言っていたし、彼女もここに住まわせるつもりなのかもしれない。あるいは、彼女はダンジョン内支部に配属予定で早めに引き合わせえるために連れてきたのか。どちらにしても、これからも関わっていくことは間違いないだろう。
「そして彼はCランク冒険者のアレンです。エリシーさんとは同郷で、本人がどうしても同行したいと志願してきたので連れてきました」
【彼がエリシーのことを知っているということは、ダンジョンの存在は既に公開されているのですか?】
「いえ。彼にはマリーナさんが教えてしまったのです。なんでもエリシーさんの行方が気になってすっかり憔悴してしまっていたのだとか……。このままではエリシーさんより危険だと判断して教えたのだそうです。もちろん、後日ペナルティを負って頂くことになりますが。
ですのでダンジョンの存在は以前と同様に秘匿されたままです」
【それでも彼を連れてくる理由にはなっていないと思いますが?】
「詳しくは後ほどという訳にはいかないでしょうか? 長くなる可能性があるので、先に本来の目的を達成したいのですが……」
――まあいいだろう。彼の目的はおそらくエリシーの安全確保だ。その手段として彼が提示したものがギルドにも有益だからこそ連れて来たのだろうし、僕の機嫌を損ねるような事にはならないと判断しているということだ。
【わかりました。それでは本題に入りましょう。既にご覧になられたと思いますが、地下一階の広間をギルドと商会が使うためのスペースとして用意しました。階段側の壁から数歩分の間隔を開けて、それ以外は自由に使って頂いて構いません。広さはあの程度でよろしかったでしょうか?】
「十分すぎると思います。サラ様はどうですか?」
「え……ええと。はい。問題ありません」
突然聞かれたサラがどもる。まあ不満はなさそうだからいいとしよう。
【では次に間取りについてです。図面にしていただけるのでしたら私の方で壁やドアを作っておきますがどうでしょう? その場合は十日程度で完成すると思います】
「そのことなのですが、実は私たちで間取りについては話し合ってあります。幾つかパターンを用意してきましたので、そちらを見ながら細部を詰めて行きたいと考えていました。それを形にするのはダンジョンマスター様にお願いしたいと思います」
それなら話が早い。来るのに時間がかかったのはギルド支部と店舗とでスペースの取り合いがあったからかもしれないな。その交渉に時間がかかったのだとしたら少し申し訳なく思ってしまう。予め土地を分けておけば良かっただろうか?
とにかく、ようやくダンジョン公開に向けて一歩踏み出すことになる。
地下一階は来訪者達が最初に見る場所だ。未来を見据えて取り組まなければ。
世界観とか新キャラとかダンジョンの構造とか、今後の展開に大きく関わる部分はどうしても更新が遅れてしまいます。
キャスのキャラは既に失敗したかな? なんて思っていたり。彼女に関するストーリーも特に考えているわけではないので、ムードメーカー的にするかトラブルメーカー的にするか、はたまた悪役にしてしまうか。
悩みますねー。




