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4人目

キャラがぶれる。

設定を緻密に作らないツケが回ってきてるんですかね。

 一時のとは言え、別れを最も惜しんだのはやはりマリーナだった。

 一通り話が済んだあとで、エリザが『仕事は終わった』とばかりに帰り支度を促したのだ。


 マリーナはもちろん、ナデアも最初は渋い顔をして一泊位ならいいのではないか? などといっていたのだが、自分たちの仕事はスピードが命であり、少しでも早く町に帰るのがエリシーの安全にも繋がると諭され、ようやく重い腰を上げた。

 ダンジョンを朝出発して街に到着するのが夕方になるよりは、日のある内にある程度進んでおいて街への到着が昼になった方がやれることが多いのだとか。


 確かに、彼女たちがここにいる間に町で事態が変化していないとも限らない。少しでも早くここでの取引内容を持ち帰り、それに向けた政策をとる必要があるというわけだ。

 僕の取引相手は必ずしもギルドである必要はないのだから、誰かに出し抜かれないためには迅速な対応と水面下での工作が求められるということだろう。


 それに、エリシーが意外と平気な顔をしていたのが決めてになったようだ。『年長者である自分達がしっかりしないでどうするのか?』と言ったところか。




 五人は一旦地上に戻り、大荷物を持って筆談ボードの前に戻ってきた。エリシー達もそこで待機中だ。


「それではダンジョンマスター様、私たちは街に戻って支部設置のため尽力させて頂きます。アークは置いていきますが、ご迷惑が及ぶようでしたら煮るなり焼くなりして頂いて構いません。存分にこき使ってやって下さい」


【支部の件、よろしくお願いします。二十日程あれば建設予定地を確保できるでしょう。ダンジョン内の変化は、今まで通り冒険者を通して把握して頂くのが早いかと思います。『地下一階が広くなった』『風呂が下層に移った』というような報告を受けましたら商会の方と一緒にお越し下さい。間取り等を決めましょう。】


 アークについてはスルーした。今のダンジョンの力では彼を物理的にどうこうすることは出来ないだろうからだ。余計な事を言ってこちらの戦力を察されるのは控えた方がいい。

 精神的なダメージならまだ与えられるかもしれないが。


「アーク。エリシーに万が一の事があってみろ、地の底まででも追いかけて地獄の苦しみを与えてやる」


 マリーナが物騒だ。前からそうだが。

 これはつまり、『手を出すなよ』ということか?


「マリーナ。彼は軽薄な男ですが馬鹿ではありません。ギルドの意向に反することはしないでしょう」


 ナデアも実は辛辣である。もっと慈愛に満ちた印象の女性だったのだが……。

 アークはというと別に堪えた風でもなく『やれやれ』とでも言いたげにため息をつくだけだ。

 やはり肝の座った男である。


 子ども達三人の方もそれなりに打ち解けた様で、


「二人共、次に来るときは服もたくさん持ってくるわね」


「そんな、悪いですよ。今は困ってませんし……」


「何言ってるの! いくら良い服貰ったからって、女の子が同じ服を着回すなんて絶対ダメ。肌着は毎日変えるものなの!」


 ……などといったやり取りが少し離れた所で行われている。

 ダンジョン外ではメイド服も消えてしまうため、チコとチヤは外にでる事はほとんどなかった。男物の服を改造して、それを着て日光浴に出ることもあるが、短い時間だけだ。

 ちなみに定期的にダンジョン外にでるようにと僕から提案した。そうすることでダンジョン内に溜まった垢や髪の毛などの老廃物も魔力に還元でき、衛生面の向上も望めるからである。表向きは気分転換にと言ってあるが。

 衣類が手に入るのは嬉しい。




 あらためて別れの挨拶を済ませたあと、アークを残した四人で帰っていった。

 見送りも住んだところで、アークとエリシーたちが再びボードの前で対面する。

 

「それじゃ、しばらく一緒に生活することになったわけですし、お互い自己紹介しませんか?

 私は元Dランク冒険者のエリシーです。今は色々あって奴隷になって、このダンジョンに住まわせてもらってます」


 チコとチヤも続いた。


「私はチコです。エリシーさんに助けられてここまで連れてきてもらいました」


「……チヤです。よろしくお願いします」


 流石に多少は警戒しているのか、先ほどよりも表情がかたい。


「次はこっちの番だな。俺はアークだ。ギルドで主に裏方の仕事をしている。その前は冒険者をやってた。ランクはBだ。体術も使えるが、メインは精霊術だ。あとは……まあこんなところだ。……ああそうだ。別に敬語とか必要ねーぞ。このダンジョンとの対応はギルドにとって最重要案件だからな。そこにいるお前らは俺みたいな末端よりも重要人物だ。なにより堅苦しいしな」


 アークの言葉にエリシーは少し悩んだようだが、「わかった。よろしく」と短く答えた。

 

 さて、彼の言葉に知らない単語が出てきた。精霊術とはどんなものだろうか? この世界では精霊や神といった存在が実体を持って存在する可能性は十分にあるのだろうが、知らないことが増える一方で情報の整理がつかない。

 追々調べていくしかないだろう。


「おおそうだ。あんたにも挨拶しとかないとな」


 そういってアークはこちらを、ボードの方に向きなおった。


「しばらく厄介になるアークです。この度は入居を許していただきありがとうございます。当面は私がダンジョンマスター様と冒険者の間に立つ役割を果たすことになりますので、冒険者関連で要望がおありでしたら何なりとお申し付け下さい」


 いきなり姿勢をただし、キリッとした表情で話し出すものだから吃驚した。

 先程までの気の抜けた様な口調でなく、丁寧な言葉使いになっている。しかもごく当たり前の様な自然な振る舞いなものだから、普段の姿を知っている僕にも違和感なく感じられた。

 エリシーたち三人も彼の後ろで目を白黒させていた。


 普段の姿を知らないでいきなりこのアークにであったら、間違いなく好印象を受けるだろう。

 これで何人もの女性たちを毒牙にかけて来たのだろうか? 世の女性たちが僕みたいに単純でないことを祈るばかりである。


【よろしくお願いします。私の前だからといって口調に気を遣う必要はありませんよ。どうか楽にしてください。】


「お? そうか? いや話がわかる奴で助かる。敬語ってのはどうも性に合わなくてよ。ああ、もちろん仕事は真面目にするぜ。あんたと問題起こすとクビじゃ済まないかもしれないからな。それ以外の所は好きにやらせてもらうさ」


 今度はいきなりお調子者のような口調になった。これが本来の彼なのだろうか?

 第一印象ではもう少し口数が少ない人物に感じたのだが、マリーナとの掛け合いや今の姿を見ると少し違う気もする。

 まだ彼の事を知らないのだから仕方ないのかもしれないが、どこか掴みどころがない男だ。



 とにかく、これで新たな住人が増えることになった。

 今日のところは最低限の話とルール決めだけをして、エリシーに任せてしまおう。直接会って応対するのは彼女たちなのだから、彼女達がまず、互いを知る時間を持った方がいいだろう。いくら砕けた口調で接することになったとはいえ、僕が居ては不用意に出来ない内容の会話になるかもしれない。

 もちろん盗み聞くつもりだが……。



「あぁそうだ。俺も『マスター』って呼んでいいのか?」



 ――僕が返事に悩んでいる間に、なぜか三人が却下した。

最近このサイトに投稿されている『小説の書き方』的なエッセイを読むようになりました。


励まされることから胸をえぐられることまで色々書いてありますが、中々勉強になります。


今まで保留にしていた、完結を見据えたストーリー構築というのを考える必要があるかな……なんて思ってます。

まあ当分先ですが。

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