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奴隷はどうなる?

「ああ! びっくりして忘れてました。えーと、二人は私と一緒に奴隷商の馬車から逃げてきた姉妹で、この子がチコ、こっちが妹のチヤです。三人でマスターが用意してくれた部屋に住んでるんです」


 挙動不審だった二人は、ピシッと背筋を伸ばして緊張した面持ちになっている。


「ほら。二人共、挨拶挨拶」


 軽い口調でエリシーに促されて、


「こんにちは。チコです。エリシーさんに助けてもらって、一緒にここまで来ました」


「チヤです」


 と、意外としっかりとした口調で自己紹介した。

 二人からすれば知らない大人に囲まれて、自分たちの処遇もどうなるかわからない様な状況であるはずなのだが。


「はい、こんにちは。私はナデアといいます。これでもAランクの冒険者で、エリシーの先輩なんですよ。どんなことでも頼って下さいね」


「私はマリーナだ。エリシーとは同郷……まあ、同じ村の出身というやつだ。私とナデアは、昔からコンビを組んで依頼にあたっていたのだが、最近はあちらのサラ様の護衛として雇われている」


 ナデアは警戒心を解きほぐすように、普段以上に丁寧で微笑みを絶やさない。

 マリーナの態度は変わらずだ。他の人と違って僕に対しても過剰に謙る様子もないし。


「よろしくお願いします。エリシーさんにはとってもお世話になりました。マスターさんとの交渉とか、食べ物とか」


「礼儀正しいのですね。でもそんなに畏まらなくても良いですよ。エリシーの親や保護者というわけではありませんし」


「そうだな。それはエリシー本人に直接言ってやるといいだろう」


 言われたエリシーは、どこか居心地悪そうに『べつに、年上の役目を果たしただけよ……』と小さく返した。マリーナ達の前で持ち上げられるのは恥ずかしいのだろうか? 三人だけのときなら、おどけて受け流しそうだ。



 しばらく話したところで、エリザとサラが近づいて行った。


「すっかり打ち解けたようですね。そろそろ彼女達の今後について話しませんか?」


「ん? ああ、そうだな。とりあえず一番重要なのは……この首輪は外せるのか?」


 マリーナの疑問に答えるのはエリザだ。僕としても一番気になる点である。それによって彼女達の身の振り方は大きく変わってくるからだ。

 

「それは……難しいかもしれません。隷属の首輪は装着者にしか外せないとのことですし、そもそも奴隷から解放された人の話など滅多に聞いたことがありません。

 私は契約魔術には明るくないので、専門家や裏の世界の人間なら解決策や抜け道を知っているかも知れませんが……」


 どうやら奴隷からの開放はかなり難しいらしい。この世界の奴隷の扱いを考えると、開放云々の話が上がる前に死んでしまうのかも知れない。

 そういえば、この世界に来て随分経つが未だに魔法らしい魔法を拝んでいない。此処に来た人で魔法が使える人は殆ど居なかったのだ。ナデアとアーク、後はギルドの紹介で来た冒険者の中に2人だけだ。

 しかし戦闘の無いダンジョンでは魔法を使う必要性がなかった。

 

「ふーむ、やはり望みは薄いか……」


 マリーナ達の表情は渋い。


「そうですね。せめて首輪に魔術をかけた人物か、装着した人物を特定できればいいのですが……。エリシーさん、心当たりはありますか?」


 エリザの言葉にも、エリシーの表情はすぐれなかった。


「私に首輪をかけたのは奴隷商の男本人でした。馬車から逃げてくる時に彼の叫び声が聞こえてきたので恐らく生きては居ないと思います。名前も分かりませんし……」


「そうですか……。名前も生死も不明となると探しようがありませんね」


 そこで何か思案するように言葉を止めたエリザに、ナデアが質問をする。


「このあたりで最近馬車が襲われたというような報告はないのですか?」


 なるほど。確かにそこから奴隷商の形跡をたどることは可能かもしれない。冒険者が護衛をしていたのなら、その履歴から冒険者本人や護衛対象の情報は分かるはずだ。

 落ち込み気味のエリシーたちの目に、僅かに期待の光が戻ったように見えた。


「打ち捨てられた馬車の報告は3件ほどあるのですが、奴隷や人を運ぶタイプのものではなかったはずです。おそらくそのように偽装されていたのでしょう。血痕や略奪の後が残っていたという報告は上がってきているのですが、その時期に依頼中に行方不明になった商人や冒険者はいないはずです。

 護衛の冒険者というのはギルドを通さない非公式な依頼で雇っていたのだと思います」


 しかし、どこか申し訳なさそうな返答に皆俯いてしまった。


「このまま町に向かったとして、私達はどうなってしまうと思いますか?」


 エリシーの問いだ。


「主人が居ない奴隷は町の入り口で確認された時点で捕縛されてしまうと思います。その後は町の衛兵と専属契約している奴隷商に売られることになります。

 あまり事例の無いことですし、この契約もどこまで守られているかは分かりませんが……」


 予想通りの回答だったのか、エリシーは大きく落胆した様子は無かった。諦めてしまっているようにも見えるが……。


 メイド三人には悪いが、僕としてはそれほど悪い状況ではない。

 彼女達にとってダンジョンを離れる利点が少ないほど、ここに残ってくれる可能性が上がるからだ。

 魔力回収要員が減るのは痛い。




 大人たちがああでもないこうでもないと意見を出し合い、結局意気消沈していくところで不意にサラが口を開く。


「ようは奴隷みたいな扱いをされたくないってことでしょ? ひとまず家で雇って普通に生活してもらったらいいんじゃないの? その間に開放する方法を調べればいいんじゃ?

 ……別に買うのは私じゃなくてもいいんだけど」

今日初めてユニークアクセスの見方を知りました。

少し幸せな気分になりました。


ちゃんと読んでくれている人がいると目に見えて分かるとやる気が出てきますね。これからも末永くよろしくお願いします。

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