表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やすらぎの迷宮  作者: 魔法使い候補生
序章 ダンジョンとして
3/69

魔物と罠

 次の部屋は、何をすべきか直ぐに分かった。部屋には何もなく、一匹の狼がいてこちらを威嚇している。アレを倒すのが開錠条件なのは間違いないだろう。


「レックスとダルトンで注意を引け! 隙を見て俺かトッドが攻撃する!」


「俺が殺しちまっても良いんだろ? あんまりトロイようだと出番が無くなるぜ!」


 レックスはとっくにイライラが溜まっていたのだろう。都合よく剣を振るう相手を見つけてテンションが高い。それでも指示通りに攻撃よりも牽制主体の戦法を取ってくれた。

 この陣形は俺達が最も力を発揮できる型だ。盾を持っていない俺は隙を見て大打撃を与える役回りであり、遊撃するトッドの護衛も兼ねるのだ。前衛二人は積極的に攻めるように見せかけて防御に徹することで、敵の注意を引きつつ味方の被害を最小限に抑えることが出来る。


 今回も前衛二人は見事に狼を翻弄している。いや、普段より少し攻撃的ではあるが……。

 明らかに傷つける意図で振られていない刃ではあるが、敵からすれば避けない訳にはいかないのだ。

 

 完全に俺への注意がそれたところで、一気に踏み込んで渾身の力でロングソードを振りぬく!

 抵抗は一瞬のみで狼は正に一刀両断された。




 狼の死体がまるで空気に溶けるように消えていき鍵が開いた。後には親指の先位の小さな緑色の小石が残されている。


「すげぇな…。マジで消えるのか」



「きっとこの石が魔石なんですね。随分小さいみたいなので大した稼ぎにはならないかも知れないですが…」


 ちなみにダンジョンのモンスターは死ぬと消えてしまい魔石を残すことが知られている。魔物をダンジョン外に連れ出そうとしたり、資材を持ち出すと魔石すら残さずに消滅するんだとか。つまり迷宮で得られるものは魔石かコアに限られるということだ。


「でかい魔物や小さくても強い魔物からは大きい魔石が取れるらしい。出来たばかりのダンジョンだから強い魔物なんていないんだろうな」

 

「つーか魔物の用法を間違ってるだろ。群れてない狼なんてちっとも怖くない。ここのダンジョンマスターは冒険者を舐めてるのか?」


「確かに歯ごたえが無さ過ぎるな。妙な仕掛けは考え付くが魔物の特性とか扱いは下手糞なのかもな。」


 前衛二人は何処か物足りなそうなことを言っている。


「敵が弱いのはいいことではないですか。今はダンジョンを楽しむよりも攻略のことを考えましょうよ」


「トッドの言う通りだ。それにダンジョンの魔物は時間が経つとどこからともなく復活するらしい。さっさと進もう」


「オーケー! どんどん進もうぜ。次はもう少しまともな奴がいるかも知れないしな」


 次の狼が出ないうちに、俺達は次の部屋に進む。







 次の部屋もまた魔物が配置されていた。今度はクレイゴーレムだ。


「おぉ! ゴーレムって奴だよな? 初めて見たぞ」


 早速いつものようにレックスとダルトンが突っ込む。見たこと無くても物怖じしない事は前衛には重要な資質だろう。だが注意点を聞く位はしてほしいもんだ。


「クレイゴーレムは物理的な攻撃は効かないぞ! 切った先からくっ付いちまうからな! 頭か胸に核があるはずだ。そいつを叩き壊せ」


 弱点を教えながら思う。こいつは戦い方を知らなければ中々の強敵になるはずだろう。動きはそれほど速くはないが、牽制もフェイントも全く効かないし強打に怯む事もない。狼で油断させてこいつで止めを刺す算段だったのだろうか?


「意外と軟らかいな。スルスル刃が通るぜ!」


 見事な連携で前衛二人がクレイゴーレムの体を切り刻む。振るわれる腕をかわしながら一撃離脱で交互に攻撃することで攻撃を分散しているのだ。

 そしてダルトンが胸を大きく横に凪いだ時、突然『カンッ!』という軽い音を響かせてクレイゴーレムはただの泥に変わり、それも直ぐに溶けてなくなった。どうやら核を捉えたようだ。


「こいつも手ごたえがなかったな…。こんなんじゃ帰っても自慢になりゃしねぇ」


「楽に攻略できるならそれに越したことはないですよ。無事に帰ってから考えましょう」


「トッドの言うとおりだな。町までの帰り道で作り話でも考えようや。この調子でどんどん進むぞ!」








 次の部屋にも魔物がいた。ゴブリンが一匹だけだが…。


「おいおいゴブリン一匹ってなんだよ! なめてんのか!」


「始めの罠に比べて魔物の扱いは本当に雑ですね。ダンジョンマスターとしてまだ未熟ということなんでしょうか?」


「分からんがとにかく始末するぞ」


 俺達の会話に気付いたのか、ゴブリンが錆びた斧を振り上げて襲ってきた。そのスピードは狼よりも遅ければクレイゴーレム程の力強さも感じない。

 ここまで進んで来た冒険者が躓くことはまずないだろう。


 そうこうしているうちにゴブリンがレックスに向かって斧を振り下ろす…といっても背の低いゴブリンからの攻撃だから胸から腹にかけてを狙った攻撃だろう。レックスは難なく回避すると、カウンター気味に首を切り落とした。


「まったく、あっけないったらねーな」


「まあ今更ゴブリンなんぞに遅れをとったりしないわな」


 ゴブリンの死体が完全に消え去り魔石が残る。



















 突然浮遊感に襲われる。部屋の床がバタンと大きく開いたのだ。


「なっ!」


「わ!」


「のぉわ」


「なにぃ!」


 四人がそれぞれ驚愕の声をあげる。

 俺達は成すすべも無く、闇の中に飲まれていくのみだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ