感謝の心
「これまた突然ね……今度はなにかしら?」
会話用ボードを見たエリシーの第一声だ。
ボードはドアから入った真正面の壁に設置し、その直ぐ下に10cm程の長さの黒いマイクも取り付けた。
部屋に戻ってきた三人が真っ先に発見できる位置となっている。
ボードは目に付きやすいように全体を弱く発光させてあり、光っていない部分が黒い文字として浮かぶようにした。
【このボードで文字のやり取りが出来ます。壁についているマイクのスイッチを入れると私に声を届けることが出来ます。】
「どうやらスケルトンの看板よりも簡単に会話できるようになったみたいね。この棒に向かって話しかけるとこっちの白い壁に直接返事をくれるって」
エリシーが文字が読めない2人に説明する。
この方法でも結局エリシーとしか意思疎通できないが、まずはこんなものだろう。
コレを機に2人が文字の勉強をするようになるかも知れない。
「じゃあこれでダンジョンマスターと直接お話できるんですね」
「ええ、たぶん。それじゃ、早速使ってみましょう。このタイミングで出してきたってことは、何か重要な話でも有るんでしょうし……。ええっと……これかな?」
そう言ってエリシーはマイクのスイッチを入れた。
「えーと、ダンジョンマスターさん。エリシーです。聞こえますか?」
もちろんマイクはただの飾りだからマイクテストの意味などない。しかし明確に僕に向けて言葉を発しているように感じられて気分が高揚した。筆談ならそのあたりがバレずにすむので良かったと思う。
【聞こえます。さっそく用件に入りますが、そろそろエリシーさんには外部との接触に当たって欲しいのです。食料の問題や今後の身の振り方を考える上でも重要でしょうし。】
「外部と……ですか? そうですね……それについては私も考えていました。今のままでは此処にずっといることは出来ませんし……。分かりました。次あたりの冒険者と会ってみようと思います」
エリシーとしても色々と考えていたようだ。
まあ自分のことなのだから当たり前なのかも知れない。
三人でそういう話をしなかったのには、一先ずは今の生活に慣れて、じっくり考える余裕が出来るまでは余計な心配はさせないようにしたかったのかもしれない。
【会う相手は私の方で審査します。不用意に出て行かないようにお願いします。では詳細は後ほど話し合いましょう。もうお昼の時間です。】
今回は早々に切り上げることにする。
理由は単純で、ボードのリセット機能を付け忘れたからだ。信号の伝達方法に集中しすぎて使うときのことが疎かになってしまっていた。
まあ、試作無しでいきなり作れば何かしらの不具合は出てくるものである。次にこのようなことが無いように気をつけるとしよう。
すでに余白が少なくなってしまっている。
エリシーも早々に切り上げようとする僕を不審に思ったようだが、深く突っ込んではこなかった。
「分かりました。それではまた……」
そういってエリシーがマイクのスイッチを切ろうと手を伸ばした時、急にチヤがボードの前に躍り出た。
「あっ……あの! ダンジョンマスターさん! 助けてくれてありっ、ありがとうございましたっ!」
………………
………………
………………
なんというか、半分利用するつもりで助けたことに罪悪感を感じてしまう。
普段口数も少なくて引っ込み思案オーラ全開のチヤが声を張り上げてお礼を言ってくれたのだ。この世界ではじめて、感動したかもしれない。
一瞬の沈黙の後、ハッとしたようにエリシーとチコも続いた。
「私からも、ありがとうございます。こんなに良くして頂いておいて、お礼が遅れてしまって申し訳ありません」
「ありがとうございます。チヤも私も、本当に感謝しています。ご飯も、とっても美味しいです」
……こんな風に改めて御礼を言われると困ってしまう。
しかし三人とも良い子達だ。
僕としても、彼女達が少しでもマシな暮らしを送れるようにもっと努力しよう。
【こちらこそ、貴女方には助けられています。ありがとうございます。これからも宜しくお願いします。】
それにしても、普段から彼女達の様子を見ている僕にはチコのお世辞はバレバレである。
そこで食料のことに触れなくても良かっただろうに……。
2人は字が読めないって設定をすっかり忘れていました。
そのわりいい家の生まれであるようなことをほのめかしてしまって、そのあたりの修正はどうしようかと考え中です。
でもまあ大きな矛盾はないと思います。
なにか気がついた方は感想欄等で教えていただけると助かります。
すでに誤字とか妙な言い回しがいくつも見られますが、そのあたりは気が向いた時に少しずつ直して行きたいと思うので、おおめに見ていただけるとありがたいです。




