外と
一体どこまで短くなるのか…
エリシー、チコ、チヤの三人を雇うことになってから既に十日以上過ぎている。
その間にダンジョンに泊まっていった冒険者パーティは三組、合計11人だ。もちろん全員新米の女性冒険者である。
どのパーティも夕方にやってきて、風呂に入ってから個室で休んでいった。風呂に新しい扉が出来ていたことを訝しんでいる様子だったが、細かいことは気にしない事にしたようだ。
エリシーたち三人は冒険者たちと接触していない。
理由としては、まずはここでの生活に慣れて貰いたかったということも有るが、冒険者たちが『ダンジョンの従業員』という存在にどんな対応をするのかを先に確かめたかったというのが大きい。
冒険者側としても、まさか従業員が生身の人間だとは夢にもおもっていないだろうが、それでも風呂場のドアに激しい嫌悪感を示す人は居なかった。
…一人だけ、浴室に武器を持ち込もうとした女性がいたが、周りにたしなめられて思いとどまっていた。
なんでも、ダンジョンマスターを刺激しないように極力注意書きに従うようにとギルドで言い聞かされてきたらしい。
だから今までも地下二階の扉の先に進もうとした者が居なかったのだろう。
しかし、狭い地下にずっと閉じこもっていては精神的にも辛いものがあることだろう。
冒険者ギルドも直ぐに動く事態ではないと考えているようだし、次のステップに進む時期に来たと見ることにしよう。
と、結論がでたところで丁度ダンジョン入口に侵入者が現れた。
朝から食料調達に出ていたエリシーである。
今日はクルミのような小さな種を沢山持ち帰って来たようだ。
なかなかたくましいもので、食べられるものはなんでも持ち帰ってくるものだから食料備蓄の3割はエリシーが集めたものとなってしまった。
外部と連絡を取るようになれば、パンを手に入れるツテも出来るだろう。そうなってしばえばここで働くメリットが安全な寝床があるという一点だけになってしまう。
その辺も要検討といったところか…。
とにかく、外部との接触について話し合わなければならないだろう。
幸い、年少二人は風呂掃除の最中で地下二階には誰もいない。
この数日間温め続けてきた意思伝達法を導入する良いチャンスだろう。