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やすらぎの迷宮  作者: 魔法使い候補生
第二章 宿泊施設として
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決断の時、迫る

 翌朝、彼女たちの身繕いが終わったところでスケルトンを送った。

 そういえば、昨日は部屋の中の様子まで確認してしまっていたが、これらの部屋はプライベートな空間であるべきなのだから風呂と同様に音声のみの観察にした方が良さそうだ。いつマリーナさんのような感覚の鋭い人が来るとも限らないことだし。



右【おはようございます。それでは御三方の住む予定の部屋に案内します。契約はその後で】


左【左手を左頬に】


左裏【ついてきて下さい】



 部屋や服は彼女たちが寝ている間に作っておいた。

 ダンジョンマスターは寝なくてもいいのである。


 既に彼女たちの間では話を聞いてみる事は決まっている事を知っているので、伝令役からそのまま案内役にシフトしてもらっている。もしこれで彼女たちが拒否したとしても、スケルトンは左手看板の裏を見せて女湯の奥の部屋まで歩いて行ってしまうのだ。


 幸い三人はスケルトンのあとをついて歩き出した。





 浴室には服を着たまま入ることには戸惑いを見せたが、どんどん進んでいくスケルトンを見て服を脱ぐ時間はくれないと悟ったようだ。というか待っていたら服ぬいだのか…。


「なんで……」

 

 声を上げたのはエリシーである。

 昨日風呂に入ったときは浴室に扉なんてなかったのだから驚くのも当然だろう。

 あとの二人も目を丸くしている。


 スケルトンは新しく出来た扉に一直線に進み、鍵穴に首から下げた三つのネックレスの内の一つについている宝石を差し込んだ。

 カチャリと音が鳴り、ロックが外れる。


「あの宝石が鍵なのかしら? でも首からは三つも下げてるし……、三箇所も鍵があるの?」


 エリシーは変に勘ぐっているが、スケルトンがつけているネックレスは三つとも同じものだ。

 あとで彼女たちに一つずつ渡すつもりである。

 木製の鍵でないのには深い理由はないが、『強いて言うなら特別な鍵を使っている自分たちは特別だ』というような気分になってほしかった。そして仕事に愛着でももってくれれば儲けもの……程度の考えだ。

 それに高価(に見える)物なら無くさないように注意してくれるだろう。


 ドアを入って右側へ向かうと薄暗い通路になっている。

 暗い通路をおっかなびっくりしながら進む三人は通路を中程まで進んだ。そろそろ彼女たちにも正面にスケルトンの輪郭がぼんやりと見えてくるころだろう。こちらは闇に溶けるように黒く表面を塗ってある。


 やはり黒いスケルトンを見たときは三人とも警戒していたようだが、だんだん反応が鈍くなってきている。慣れてきたのか、案外『もうどうにでもなれ』とでも思っているのかもしれない。どちらにしても僕にとってはいい事だ。



 そのまま階段を下り地下2階へ。

 そして従業員用の寝室に入る。


「これは……」


「……パンがいっぱい」


 エリシーとチヤだ。

 それにしてもチヤが口を開くのは食事関連ばかりな気がする。どの位の期間奴隷商のもとに居たのかは知らないが、食べ盛りの子供にはそこで出される食事は少なかったのかもしれない。

 

 スケルトンは【待て】を提示して、部屋を出る。今度は黒スケルトンと交互に往復することになる。


「ここが私たちの部屋なのでしょうか?」


 チコがポツリとつぶやく。


「……そうなんでしょうね。きっとこの部屋の食料がなくなるまでが契約期間だと言いたいんでしょう」


「種類が少ないところが残念です。奴隷の身分としてはこれでも十分ましな方かもしれないですが……」


 どうやらと言うか、やはりと言うか、この世界では奴隷の扱いはかなり酷いようだ。

 しかし今回ばかりはそれに救われたかもしれない。食事のレベルが低ければそれだけで出て行ってしまうかもしれないのだから。


「そうね。昨日の夜は最初だからってことで一番上等な食事を用意してくれたんじゃないかってヒヤヒヤしてたんだけど……これなら今後は食事のグレードがさらに落ちるなんてことはなさそうね。それと何時スケルトンが来るか分からないわ。今は悪口とか不満を言うの禁止ね」


「あっ……そうですね。わかりました」


 なぜか彼女たちは、僕の感覚がスケルトンと同期していると勘違いしているようだ。まあ目の前に意思を持った人型があればそう思うのも当然かもしれないが……。

 だがこの勘違いはかなり美味しい。

 絶えず監視されていると知っていたら精神的なストレスを感じてしまうかもしれない。

 ここに住むのなら雇い主である僕に対する愚痴を言える環境があった方がいいだろう。そこから彼女たちの不満を解消するヒントが見つかるかもしれないことだし。


 ダミーとしてコウモリのような小動物を配置するのもいいかもしれない。それらを使ってダンジョン内を把握していると勘違いしてもらっていたほうがいい。

 つまりコウモリがいない場所はプライベート空間であると認識させるのだ。


 そろそろスケルトンを送ろう。ある程度間を置いたから先ほどの白スケルトンで十分だ。




右【ここが従業員の寝室です。食料はここに有るもので全てとなります】


左【左手を左頬に】



 エリシーが左手を左頬にあてた。


左裏【しばらく後にまた来ます。相談して決めてください。契約はいつでも解除できますので。】


 そうしてスケルトンは部屋をあとにした。次は30分程度たってからが良いだろう。

 彼女たちにとっても、僕にとっても運命の30分である。

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