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やすらぎの迷宮  作者: 魔法使い候補生
第二章 宿泊施設として
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宿泊施設開放●マップ2●

 あれから二ヶ月経った。

 始めの一週間は音沙汰なしだったから『あれ?』と拍子抜けしていたのだけど、突然ギルド職員を含む女性6人パーティが現れて、男湯も女湯もくまなく調べていったのだ。地下二階は始めの部屋だけ確認していった。

 それからというもの、新人から中堅といった風貌の女性冒険者が数日おきに来ては1~2泊していくのだ。まだ宿泊用の部屋を作っていないので、脱衣所にテントを張って勝手に休んでいた。

 

 ここまで集めた情報をまとめると、このダンジョンと最寄の町は日帰りできない程度の距離があり、野営の経験がない冒険者が遠出の依頼を段階的に学ぶための拠点として利用されているらしい。

 特にここ最近は、新人の冒険者が襲われて奴隷に落とされる事件が多発していて、ギルドとしても対応に追われているらしい。

 冒険者など最終的には自己責任であると思っていたけど、意外と冒険者を守ろうとする動きも強いようだ。まあこの様な事件を放置しておいてはギルドの威信に関わるのだろう。

 そこで、特に被害の多い女性冒険者だけにこのダンジョンを教えて、一先ず遠出する経験を積ませてから余裕を持って野営に望めるようにしているらしい。中堅どころの冒険者を育成し、新人育成に回ってもらうことで女性のコミュニティを強化し、協力して危険を回避できるようになって欲しいのだとか。

 ご丁寧にダンジョンの入り口は巧妙に隠されているらしい。どうなっているのかは見ることができないから分からないが。

 


 正直、どれほどの意味があるのか分からないし、ダンジョンの安全確認のために利用されているのではと疑ってしまう。

 まあ、この世界でも男は野蛮で野心が強い傾向にあるらしいから、こちらとしても女性客が多いほうが対応しやすい。……僕の安全という意味でも。


 あと、なぜか帰り際にパンを置いていくのが暗黙の了解となっていて、すでに隠し部屋には結構な量のパンがストックされている。頼んでおいてなんだが、空腹を感じないこの体では硬いパンだけを食べ続けるのが大変で大量に余らせてしまっている。

 



 そして今、二ヶ月溜め込んだ魔力をつぎ込んで作った宿泊施設の初の客がダンジョンを出るところだ。

 地下二階に下りて直ぐの部屋の左側にさらに階段を作り、地下三階に2~4人部屋を三部屋用意した。魔力不足のためベッドは二つしかないが、脱衣所のロッカーと同じ要領で結界式の鍵がかけられるようになっている。


 彼女達はこのダンジョンに来ること既に四回目の四人パーティで、いきなり現れた小部屋を早速利用してくれたのだ。しかも二泊。

 とはいっても、さすがに四人で結界に取り込まれる危険は冒したくなかったのか、2人が部屋の中で休み、二人がドアの外で警戒するというローテーションを組んでいた。閉じ込められた時は外の2人が助けを呼びに行ける様にだろう。



 優雅に朝風呂を浴びてから帰路につく彼女達の表情を見れば、十分に満足してくれているであろうことは分かる。



 僕にとってのベストは、このように迷宮に好意的な冒険者が十分に増えた状況でダンジョンの存在を一般に公開してもらうことだ。

 そうすれば、迷宮を攻略しようとする人は他の有効活用している人にとって敵であり、ダンジョン制覇は英雄的行動ではなく迷惑行為へと変化する。

 それでも一攫千金を狙ってコア入手に走るものも居るだろうけど、表立って行動したり自慢したりは出来なくなる。

 

 公開のタイミングを選ぶことは出来ないし、それまでダンジョンが発見されないとも言い切れない。女湯の警備ゴーレムとダンジョン部分の強化も少しずつ進めていくとしよう。



  

 魔力が溜まったら、いっそのこと初心者用練習ダンジョンでも作って訓練施設のようなものを作るのもいいかもしれない。

 食料さえあれば安心して何日も滞在でき、命の危険をあらかじめ排除したダンジョンで粗悪ながらも魔石を集められるのだから、新人の訓練にはうってつけだろう。

 そうなればギルド側が今まで以上に積極的に保護してくれるかもしれない。

 

 とにかく今は、魔力集めに加えて人間側にも旨みを多く提供できるようにすることを目標に動くしかない。




挿絵(By みてみん)


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