第二話:錆びついた共鳴(レゾナンス)
モノリスの追跡を振り切り、サラの先導で地下水道を突き進むカナタたち。
急ごしらえの包帯を巻いたカナタの右腕からは、いまだに微かな砂が零れ落ちていた。
「……無理はするな。アンタの『心拍数』、さっきから不規則すぎる。デバイスが肉体を喰らってる証拠だ」
サラが冷たく、だがどこか案じるように告げる。
カナタは、胸元で鈍く光る銀色のデバイスを握りしめた。
「……あいつ、レイがあんな姿にされて……俺だけ休んでられるかよ」
「気持ちは分かるがね、死んだら終わり――」
サラの言葉が、異様な「駆動音」にかき消された。
地下水道の先。闇の中から、二つの赤黒い光が浮かび上がる。
ズゥゥゥゥ……。
現れたのは、レイのような騎士型ではない。
重機と生物を無理やり融合させたような、歪な『新世代変異体』。
モノリスが、結晶病の末期患者を「使い捨ての地雷」として改造した、歩く死体だ。
「……くっ、もう追いつかれた!? いや、これは野良の『処分体』か!」
サラがレールガンを構えるが、変異体の咆哮と共に放たれた結晶の棘が、天井を崩落させる。
瓦礫が二人の間を遮り、カナタは怪物と一対一の状況に追い込まれた。
「……逃げろ、サラ! ここは俺が……ッ!」
カナタは再び、デバイスのトリガーを引く。
――キィィィィィィィン!!
全身を走る電流のような激痛。結晶の装甲が形成されるたび、カナタの視界は赤く染まり、心臓が悲鳴を上げる。
『銀の反逆者』、再起動。
「オォォォォォッ!!」
変異体の巨大な爪が、カナタの胸部を叩きつける。
防戦一方。先ほどの変身のダメージが抜けきっていないカナタの動きは鈍い。
「……っ、動け……動けよ、俺の体! あいつを助け出すまで、止まっていい音じゃないんだ……!」
その時、カナタの脳裏に、かつてレイと一緒に弾いた「未完成の曲」のフレーズが流れた。
不器用な自分たちの、バラバラなリズム。
だが、その不協和音こそが、自分たちの「生きている証」だったはずだ。
カナタは、デバイスの出力を限界まで引き上げる『オーバー・チューン』のスイッチに指をかけた。
「聴かせてやるよ……俺の、最期の旋律を!!」
カナタの全身から、眩いほどの銀色の衝撃波が放たれる。
それは変異体の装甲を内側から震わせ、結晶の構造そのものを破壊する「共鳴」の攻撃だった。




