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新選組やらかし日記

新撰組健康診断騒動 土方歳三はお疲れの模様

作者: 湯好き御幸
掲載日:2026/01/09



健康こそ誠、善意の男 近藤勇の

思い付きにお疲れの土方歳三です。

朝の屯所。

書類の山をようやく片づけた土方の机に、一枚の紙が置かれていた。


嫌な予感しかしない。


題名には、やけに力強い筆跡でこう書かれている。


《局中健康診断のお知らせ》


「……今度は何だ」


低く呟いた背後から、弾むような声がした。


「トシ! 先日やった健康偏差値だがな、どうも客観性に欠けるという声が多くてな!」


「それはあんたも分かってただろう。くしゃみの勢いとか、誠らしさに点数をつけて算出した偏差値に、客観性を求める方が間違いだ」


「いやいや、だから今回は実測だ。ちゃんとした健康診断をやろうじゃないか!」


「近藤さん……俺は今、誠の定義だけで十分疲れてる。後にしてくれ」


そこへ医局の山崎が、帳面を抱えて現れた。


「局長に呼ばれましたが……まさか、また本気ですか」


「もちろんだ! 隊士の健康なくして誠は語れぬ!」


「昨日、町医者に健康証明書を作ってもらいましたよね。それで十分では……」


「病気じゃない=健康、とは限らんだろう?新撰組の身体だ。何度確かめても、し過ぎることはない!」


満面の笑みで言い切る近藤に、土方は深いため息をついた。


大広間には、見たこともない器具が並んでいた。


「へえ、これが診断会場かあ。なんだか近代医療っぽいねえ」

沖田が感心したように言う。


「縄と竹竿のどこが近代だ」


「データさえ取れれば文明だろう。健康こそ誠だ!」


山崎は諦めた顔で帳面を開いた。竹竿で身長を測り、縄で体重を測る――そんな診断である。


「まずは身長測定! 沖田総司、前へ!」


沖田が立つが、竹竿はぐにゃりとしなり、まったく安定しない。


「それ、縄で測る予定じゃなかったか? 無理があるぞ」「うむ……縄か。こっちの方が誠実だな!」


誠実とは何か、誰も分からなかった。


体重測定ではさらに混乱が起きた。


原田の番になると、縄の秤が悲鳴を上げる。

「おい、これ壊れてねぇか!?」「壊れたのはお前の筋肉だ!」


永倉は柔軟測定中、勢い余って畳を裂いた。

「見ろよ副長! 俺、柔らかいだろ!」

 「畳が泣いてるぞ」


「土方さん、体重が……102kg?」「何だ、文句あんのか」

「いえ、筋肉ですね。純度が高い」


「斎藤、血圧が180だぞ」

「問題ない」


どこが問題ないのか、誰も聞かなかった。

測定は最後まで混乱のまま終わり、集計された健康偏差値を見て、近藤は満足そうに頷いた。


「うむ! みんな元気だ! これで誠の健康は安泰だな!」

土方はもう何も言わなかった。


その日の夕方。

裏庭で沖田、原田、永倉、斎藤がお茶を啜っていた。


「今日の診断、面白かったねえ」


「数値もすごかったな。副長の体重が102kgだぞ」


「局長は一回目50kg、二回目60kgだったな」


「合間に菓子を食ったのが原因とか言ってたぞ。」


「……ファジーだな」「俺の血圧は180だった」


「大丈夫なんだろ?」


「土方さんのやる気のなさが出てるよねぇ。

本気になれば、ちゃんとした体重計や血圧計を用意するだろうに」


「ああ、よっぽどウンザリしてるんだろ」


沖田は湯呑みを傾けながら、ぽつりと言った。


「でもさ、本気で健康を考えるなら、労働時間を減らすのが一番なんじゃない?」


しばしの沈黙。


「……うむ」「ワークライフバランス、大事だな」


誠とは、たぶん、そういうことなのだ。


――まあ、あとで土方のところにお茶でも持っていって、肩ぐらい揉んでやるかなあ、などと思いながら。

沖田総司は、のんびりと湯呑みを置いた。


※本作は、前作「健康管理月報」と

ゆるーくつながっているお話です。

よろしければ、覗いていただけたら嬉しいです。

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