先輩から悪意が聞こえない
心の声が聞こえる後輩。
けど、全て聞こえる訳じゃなく。
今日は元日ですが、話は昨日、大みそかです。
「ま、待ちました?」
「うん? いい、や?
か…」
「か?」
「何でもないよ。
僕も今来た所なんだ」
か、可愛い…!
大みそかの神社。
昼間だからか、参拝客は少ない。
1人もいなかったら、よかったんだけど。
てか。うん。
後輩(高1)の女子が、可愛い…!
格好が、いつもよりももっと清楚で、神社てこともあって、本当に可愛いです、ありがとうございます神様!
「先輩?」
いっそ、巫女姿に。
「先輩…?」
おっと、怒らせてしまったようだ。
「ごめんね。変な欲を考えて」
「いえ、私こそ、先輩の欲を勝手に聞いて、すみません」
気まずい。
「じゃ、じゃあ、行こっか」
「そ、そうですね」
「ここの神社は、明治に活躍した偉人が奉られているらしいね」
「そうなんですか?」
「その偉人がいなかったら今の日本はなかった、とか」
「へえ…」
「あ、甘酒。おしるこもあるね」
「本当ですね」
「酒粕は流石に入っていないと思うよ。どう?」
「先輩が、そう願うなら」
「変な欲を出さなくてよかったよ」
「…はあ」
僕はため息を吐く。
楽しんでくれてるかな? この子は。初もうで、じゃなかった、大みそかだから事前参りか。事前参りって言うんだっけ?
いつも、僕は優しくあろうって意識している。
もう、あんなことは嫌だから。
多分、この子は神社が嫌いだ。
✕が、聞こえるから。
神社は、✕のたまり場だから。
優しくありたいってのもあるけど、それよりも、僕はこの子に神社を楽しんでほしい。
別に、僕は神主の息子とかじゃないんだけど、けど、この子には神社を好きになってほしいんだ。
まあ、今の所、空回りだけど。
「お願いしない? 折角来たんだし」
「…そうですね」
なぜか、袖をつままれる。
滅茶苦茶ドキドキする。
「お願い、しようか」
「は、はい」
『この子の超能力が少しでも消えますように』
聞こえてくる、先輩の『欲』が。
私は、周りの人の『欲』が聞こえる。
全ての心の声が聞こえてくる訳じゃない、その人の『欲』だけ。
だから、神社に来たとき、『巫女の姿になってくれないかな』て、先輩の『欲』が聞こえてきた。少し、怒りたくなった、私は。なので睨んじゃった。
「欲が聞こえる! 私は神様みたいだ!」
そう思えるほどポジティブだったら、よかったんだけど。
苦しい、聞こえてくるのが。
だから、この神社が、大嫌いだった。
神社は『欲』のたまり場だから。
ああなりたい、あれが欲しい、あの人がああなってしまいますように。
ぶわっ、て一気に聞こえてきて、吐き気がしていた。
けど、この先輩のおかげで、それは薄まった。
少し、嫌いじゃなくなった。
『さて。甘酒、本当に酒粕が入っていないといいんだけど』
また、聞こえてくる。先輩の、優しい『欲』が。
あーあ。
『この後輩とずっと一緒にいたい』
て、願ってくれないかな? なんて。
先輩は、今、高2。
この優しい、時々いやらしいけど、優しい方の先輩と、恋人になれないものか。
私の『欲』は聞かれない。それは、少しだけ、得だ。
ありがとうございました。
本当、神社って『欲』のたまり場ですよね。
お願い事、おみくじ、お守り、など。
『欲』のない神社はあり得ないってくらい。
しかも、煩悩まみれ。
少しだけだけど好きになってくれたみたいで、よかったです。




