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春風はユニコーンと共に  作者: 龍川凡流
第4章 北へ向けて
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第4章 北へ向けて03

 北に進めば進む程、吹き荒れる寒風がサフィーとガブリエルに襲い掛かる。二人は身を寄せ合いながら寒さを凌ぎ、ただ前を向いて、少しずつだが進み続けた。


「……ふう……サフィー?大丈夫か。俺は肺が凍り付きそうだが……」


ガブリエルは身を震わせながら、サフィーの方を向いた。


「えぇ、私は何とか……貴方こそ、顔が真っ青ですよ?少し休みましょうか?」


「あぁ、すまない……その言葉に甘えさせてくれ……」


二人は適当な洞穴を見つけて中に入る。そしてサフィーの魔法で焚火に火を点け、がウリエルと共に暖を取った。氷のように冷たくなっていたガブリエルの鎧も、少しずつ温もりを取り戻していった。


「……生き返るな……」


ガブリエルの頬にも少しづつ色が戻っていく。


「ごめんなさい……私の春の加護でもこの寒さでは通用しなくなってきたのかもしれません……」


サフィーは悴んだ蹄を焚火にあてながらそう呟いた。


「初めてです。こんなにも体が震えてしまうのは……これが『凍える』ということなのですね」


「ふっ、幻獣のアンタが俺達下等生物の感覚を味わうことになったってことか」


ガブリエルが少し意地悪そうに微笑む。


「そう自分を卑下しないでくださいよ。私は貴方達のことを下等生物だなんて思っていませんよ。まぁ……あの不死鳥さんは違うかもしれませんが……」


「その不死鳥ってのはどんな奴なんだ?その言い草だと、あまり気持ちの良い性格ではなさそうだが……」


「その推測で間違いありません。何というか……空からみんなを見下しているような方です」


サフィーはきっぱりとそう答えた。


「ハハハ、そうか。じゃあそいつの助けは借りられそうにないな。……やっぱり俺達がやるしかないんだな……」


ガブリエルの顔が険しくなる。霜の王こそが、この終わらない冬を引き起こしている元凶であり、数多のウェンディゴ達を従えていることだけはハッキリとしている。しかしそれ以外の情報は全くと言っていい程無く、彼が他にどのような力を持っており、何を弱点としているかなどは全くの未知数だ。そんな中で一人の人間と一匹のユニコーンで挑むなど、一見負け戦にも思えた。しかし、ガブリエルは決して負けるつもりはなかった。もうすでに敗北は経験した。それも飛び切りの屈辱と悲哀の籠った敗北だ。もうこれ以上、そんなものを重ねる必要などないのだ。


「……俺達はまだ出会って間もないが……それなりに良いコンビになれたと思っている……」


ガブリエルは剣のグリップを握りしめながら、ぼそっとそう呟いた。


「え?ガブリエル?急に何を……?」

 

サフィーは目を丸くする。


「あぁ、すまない。気味の悪いことを言ってしまったな……」


「いえいえ。私だって同じことを思っていました。こういうことを『絆』っていうんですよね。つまり、私達は『友達』ってことです!」


「え?あ、あぁ。多分な」


ガブリエルは綿でも食ったかのような顔でサフィーを見つめる。


「ちょっと!そのビミョーな反応は何ですか!?貴方から言い出したことですよ!」


曖昧な反応をしたガブリエルに不満を覚え、サフィーは頬を膨らませた。


「す、すまない。俺はてっきり自分がアンタにとってそこまで大きな存在だとは思ってもいなかったんだ」

「えっ?どういうことですか?」


「いや……その、俺とアンタが友達ってことは、俺とアンタは対等な関係ってことだろう?いいのか?幻獣としての誇りが傷つかないのか?」


「……うふふ。ガブリエルってば、そんなことを心配していたんですか?」


サフィーはガブリエルの隣に腰を下ろし、ニッコリと微笑む。


「私に言わせれば、幻獣の誇りなんて、貴方達に出会えた喜びに比べたら獣の糞と大差ないものですよ。そんなことを貴方が気にする必要なんて、これっぽっちもないんですからね」


「え?そこまで言ってしまって良いのか?」


「良いですとも!まぁ今の発言をかの不死鳥が聞いていたら、この冬がすぐ終わってしまう程に体を燃やして怒りそうですけれどね」


その刹那、周りの気温が僅かに上がったように感じたが、サフィーはそれを気のせいだと流すことにした。


「とにかく、私と貴方は友達なんです!この堅い繋がりで、共に霜の王を討ち取りましょう!」


サフィーはそう言って前足の蹄を突き出した。


「……あぁ、必ず成し遂げよう」


ガブリエルも拳を握り、その蹄に合わせて突き出した。


(うふふ、アリトンがいたらどんな顔をするのでしょうね……きっと私に新しい友達が出来たと喜んでくれるでしょうね)


サフィーは心の中でそう呟くと、ふと今この場にはいないアリトンの影がガブリエルの後ろに見えたような気がした。彼の顔がどのようなものだったのかは分からなかったが、きっと微笑んでいるだろうとサフィーは思った。

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