第3章 新たな出会い03
サフィーはリサを家に送る際、彼女からドントルが自身に賞金を懸けたことを聞いた。
「……なるほど、だから最近私を狙う人間がいたのですね」
「そう、だから悪いことは言わなけど……貴方も自分のお家の森に帰った方がいいわ。今回ばかりは運が良かったけれど……いつ捕まって、ドントルのコレクションにされちゃうか分からないわ……」
リサはサフィーの首に優しく捕まりながらそう諭した。
「確かに、私が自由でいるにはそれが正しい選択なのかもしれませんね。だけど、私には使命があるんです!」
サフィーは胸を張りながらそう言った。
「使命……?ユニコーンに使命が……?」
「えぇ!春を取り戻すんです!」
「春を……?」
目を丸くするリサにサフィーはことのあらましを語った。リサは当初は信じられない様子だったが、ふと頷いて納得した。
「……なるほど……それは大変ですね……」
「え?信じてくれるんですか!?」
「えぇ、だってユニコーンが実在してるんだもの……それに今の冬は何かおかしいとは思っていたんです……まだ秋なのにいきなり雪が降り出したんですから……」
リサは俯きながらそう呟く。
「やはりそうなのですね……一刻も早く解決しないとみんな凍え死んでしまうわ!」
「でも貴方一人で、霜の王を倒せるの……?」
「えっ?……っとそれは……?」
思いがけない質問にサフィーは言葉を詰まらせる。
「もしかして、何も考えずに一人で突撃するつもりだったの?」
「あはは……それは……」
サフィーは冷や汗をかく。思えば、自分は早く霜の王を何とかしないととばかり考えて、その方法については何も考えていなかったのだ。
「流石にそれは無茶なんじゃない?さっき話してた不死鳥さんにも協力してもらった方が……」
「それがですね……彼女は何処にいるかも分からないし……」
「だったらせめて一緒に戦ってくれる仲間を見つけた方が良いと思うわ」
「仲間……ですか……でしたら貴方が……」
「私!?私は無理よ……非力だし、心も弱いし……。貴方の力にはなれないわ……」
「そうですか……残念です……」
「そうしょんぼりしないで、貴方にはきっと良い仲間が出来る筈。確証はないけれど……そんな気がするわ」
リサはそう言ってサフィーを励ましたが、当の本人は自分に仲間を作ることが出来るのか不安だった。何せ彼女はアリトンと出会うまでは、碌に誰かと喋ったこともなければ出会ったことすらなかった。そんな自分が誰かに話しかけ、霜の王討伐に協力してもらうよう求めるということは、かなりの無理難題にも思えた。
「……そうだといいですね……」
サフィーは小さく応えた。
リサを家まで送り届け、自身の事は内緒にしておくと約束させて、サフィーは再び北に走り出した。走る中で彼女はあれこれ思案した後、自分と同じユニコーンに協力を要請することに決めた。同じ種族ならば、話も多少通じるだろうと考えたのだ。サフィー
サフィーにとってユニコーン探しは容易いものだった。豊かな森の奥へ進めば自ずと彼らは見つかる筈だ。サフィーは早速まだ雪に埋もれず緑が残っている森を見つけた。そこに角を翳すと、すぐさま同族の気配を感じ取ることが出来た。
「ちょっとお邪魔しますね」
サフィーはそう言うと、森の深部へ臆せず駆けていった。人間が同じ真似をすれば、すぐさま迷子になるが、ユニコーンが森で迷うことなどなかった。
「ユニコーンさ~ん!私の仲間のユニコーンさ~ん!私はサフィーと言いま~す!ちょっとお時間よろしいですか~!大事なお話があるんですぅ~」
しかし返事は返ってこない。
「もしかして眠っているのかしら?」
サフィーはさらに森の奥へと進みながら声をかけ続けた。だが終ぞ返事が返ってくることはなかった。
「どうしてかしら……?ここまで森奥に進んでるなら、声は届いている筈なのに……」
サフィーは首を傾げる。ここまで来ても返事も返ってこないのならば、この森にはユニコーンはいなかったことになる。だが、先程感じ取った感触は、確かに自分と同じユニコーンのものだった。
「う~ん……ここまでしても見つからないならダメね……。他の森を当たってみるしかないわね……」
サフィーが諦めて森を出ようとしたその時、彼女の耳にうめき声が届いた。
「うっ……うぁ……」
人間の、それもかなり弱っている者だった。
「大変!誰かがこの森で遭難しちゃってるみたいだわ!」
サフィーは慌てて声の主の元へと駆けていった。




