父の仕返し
朝。
私はゆっくりと目を覚ます。
眠気は完全に取れており、とても気持ちがいい。ルーナには予定のない日はもう起こさなくていい、と頼んでおいたのだ。
今日は何も予定がないのでいくら寝ていようと誰も文句は言ってこない。
私はグッと伸びをする。
どうもルーナがカーテンだけは明けに来たようで部屋には気持ちの良い朝日が差し込んできている。少し角度が高い気もするけど⋯⋯⋯⋯。
目を覚ましたてだからか、ここ最近色々あったせいか体が動くことを拒否している。
このまま二度寝⋯⋯⋯というのもさすがに寝すぎなのでしないが、しばらくベッドの上でゆっくりしていよう⋯⋯⋯⋯。
―――なんて事が通用しないのが、この家なのよね。
ドタドタと明らかに私の部屋に向かってきている足音。その音から複数人来ている事だけは分かる。
ここ数日は父も兄様も落ち着いていたので、平和だったのだが、どうやらそれも今日で終わりらしい。
まあ、プライドだけで生きているような人間があれだけズタズタにされて何も仕返しがないというのも不自然ではあったのだけど。
私は憂鬱なため息を吐く。
その直後―――バンッ! と部屋のドアが開かれた。
入って来たのは父とこの家の護衛騎士数名だ。
「はぁ〜⋯⋯朝から慌ただしいですね。一体何の用ですか?」
「どれだけ待とうと反省する気のないお前には罰が必要だと思ってな。ここ数日色々準備をしておったのだ」
「それで?」
「お前をしばらく地下牢に監禁する事に決めた。恨んでくれるなよ。こうなったのは全てお前の責任なんだからな。父親に対する態度を改め、反省するまで出すつもりはないぞ」
ここ数日何もしてこなかった事は怪しんでいたけども、まさか私を地下牢に監禁する準備をしていたとは。どこまで執念深いのか。
「反省のためだけに私を地下牢に監禁するなんて、あまりにも暴挙が過ぎのでは?」
貴族家の地下牢は侵入者などの罪人を一時的に監禁する場所として使われることが多い。決して自分の子を反省させるために入れるような場所では無いのだ。もしこの事がバレれば他の貴族家から後ろ指を刺されることになる。
父がしようとしているのはそれほどの行為なのだ。
「道具をどう使おうが私の勝手だ。それで壊れたとしても、それまでのこと。何も問題ないはないであろう? むしろ壊れた方が好都合とも言える」
そう言い勝ち誇った笑みを浮かべる父。
兄様とそっくりな笑み。
まさかこの笑みまで父譲りだなんて⋯⋯⋯⋯。
ほんと呆れるわ。
「さあ、早くベッドから降りろ」
護衛騎士もいる訳だし、下手に暴れるのは悪手ね。ここは大人しく捕まるとしましょう。
反省するつもりなんてないけど。
私はベッドから降りる。
すると護衛騎士が手で私の両腕を拘束してき、自由を奪ってきた。
「この状況で抵抗するほど馬鹿じゃないわよ。自分で歩くからその手を離しなさい」
護衛騎士は父に視線を向ける。
「離してやれ」
気分が良いからか父は憎たらしい笑みを浮かべてそれを了承した。
護衛騎士による拘束は解かれる。
「早く歩け」
私はギロリと父を睨む。
「まだそんな目を私に向けるのか。お前は自分の立場というものをまるで理解していないようだな」
「お父様も私を甘く見すぎではありませんか? きっと後悔する事になりますよ」
すると父は馬鹿にしたような笑みを浮かべ。
「後悔だと? 何も無い地下牢でお前に何が出来るというのだ。強がりも程々にせんと更に自分を苦しめるぞ」
そう言って父は笑う。
「フフフッ。ちゃんと苦しむのが私であればいいですけどね」
私はそう言い歩みを進め、地下牢へと向かった。
※
地下牢は父の言う通り、本当に何もない。
石で作られた正方形の部屋。
窓はないし、床は硬くて冷たい。ベットも布団もなければ、光すらもほとんどなく気味が悪い。
はっきり言って刑務所以下だろう。
「早く中に入ってください」
私は護衛騎士に押され、中に入れられると檻を閉められ錠の落ちる音が響いた。
見張りのためか一人の護衛騎士が檻の前に残る。
この狭さと護衛騎士の存在。
物理的な脱出は不可能に近いし、やめておいた方がいいわね。
なら別の作戦を考える必要があるわ。
地下牢で使えそうなものといっても、そもそもここには何もないわけだし。
すぐには出られそうにないわね。
私に残されているのは魔法くらい。
⋯⋯⋯⋯まっ、それだけあれば十分ね。




