反撃
ダイニングルームに付き、ドアを開けると朝食の準備を整えるメイド達の姿があった。
彼らは私を見て驚いた表情を浮かべる。
それを無視して私は中に入った。
するとメイドの一人が私に駆け寄ってき。
「お嬢様、どのようなご用件で⋯⋯⋯」
「朝食を食べに来ただけよ」
「朝食でしたら後ほど⋯⋯⋯⋯」
「冷めた残飯を持ってくるつもり?」
「っ⋯⋯⋯⋯!」
私がそう言うとメイドは動揺し黙り込む。
テーブルには2組分の食事しか置いていない。
私の分は当然のように無しか。
まあ今更どうでもいいわ。
私は料理の置いている席に座る。
暖かいスープに焼きたてのパン。
それに朝から肉料理があるなんて贅沢ね。
いかにも貴族らしい。
私はテーブルに置かれているナイフとフォークを手に取る。
「お嬢様! それは旦那様のお食事です!」
「そう。悪いけど私の分にさせてもらうわ」
あんなジジイにお肉なんて勿体ないもの。
私はナイフで1口サイズにお肉を切り、口に運ぶ。
「美味しい⋯⋯⋯」
柔らかい。それに味付けも完璧だ。
何より暖かい。
それだけでも満足だ。
「―――美味しかったわ。ごちそうさま」
元々父の分だったらしい朝食を平らげた私は席を立つ。
「シェフに言っておいて貰える。今日みたいなちゃんとした料理を私のところにも持ってきてって。残飯なんて持ってきたら許さないともね」
私は怒りの籠った視線をメイド達に向けてそう言った。一瞬にしてダイニングルームの空気は冷める。
我ながら悪女そのものね。
そして私はダイニングルームを出ようとドアを開ける。
ちょうどクソジジイとクソ兄が朝食を食べに来たところだったため鉢合わせになった。
「アセロナ⋯⋯⋯?」
「チッ、何でお前がここにいる」
父親のくせに娘と顔を合わせただけで舌打ちとは⋯⋯⋯⋯毒親極まれりね。
「朝食を食べていただけですが」
「何だその口の利き方は! それに朝食だと? ここにお前の分が用意されているはずないだろ!」
「ええ、ですからお父様の分を食べさせていただきました。その歳で朝からお肉料理は応えると思いましたので」
私はバカにしたような笑みを浮かべてそう言う。
「お前⋯⋯⋯!」
父は顔を真っ赤にして怒る。
お前。娘を呼ぶのに名前を使わないなんてどれほど嫌っているのか。
大人げないわね。
「アセロナ、今の父上に対する態度は看過出来んぞ。ヴィルハートの人間としての規律くらいは守れ。父上に謝罪しろ!」
「謝罪ですか⋯⋯⋯。面白いことを言いますね。それなら先に今まで私に対して浴びせてきた暴言の数々を悔い、謝罪してください?」
「何だと⋯⋯⋯」
「出来ないですよね。自覚もないんですから。もう良いですか? これ以上話すのはお互い気分を害するだけですし」
「⋯⋯⋯お前! その態度が自分の首を絞めるだけだと理解してやっているのか!」
父がそう喚いている横を私はさっと通り過ぎる。後方で「待て!」と父が叫んできたが私は無視をして、すぐさま部屋に戻った。
お腹いっぱいね⋯⋯⋯⋯。
とても幸せな気分だわ。
さてと⋯⋯⋯。
そしたら復讐の準備でも始めましょうか。
どうせまた兄様が私をサンドバッグにするために来るでしょうし。
こっそり魔法の特訓ね。
原作知識はこの頭を入っている訳だし、<花の魔法>にどんな技があるのか私は全部知っている。もちろん兄様が教えてこなかった技もね。
確か魔法は声に出して詠唱をすれば使えるのよね。
「<蔦掌>」
そう唱えると蔦が現れた。
これは今までも使っていたわけだし、慣れたものね。
他には⋯⋯⋯。
と私は自分の部屋でこっそり魔法の特訓をしたり、と2日ほど好き勝手に過ごした。
そんなある時のことだ。
突如、部屋に近づいてくる足音が聞こえてきた。その耳障りな足音からは怒りの感情が読み取れる。
するとバンッ! と乱暴にドアを開けて兄様が入ってきた。
「お兄様、もう少し静かにドアを開けてくれませんか⋯⋯⋯⋯」
「黙れ。今すぐ庭に来い。魔法の特訓をしてやる。ここ2日ほど大目に見てやったがさすがに規律を乱しすぎだ。ついでにその舐めた態度も直してやる」
ついでに、じゃなくてそっちが本当の目的でしょ。分かりやすい。
「⋯⋯⋯わかりました。服を着替えますので先に庭でお待ちください」
「今すぐに、と言っただろ?」
パジャマ姿で戦えというわけ⋯⋯⋯。
めちゃくちゃね。
⋯⋯⋯まあいいわ。
私は兄様について行き、屋敷の外に出た。




