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【連載版】悪役令嬢だと気づいた私は悪に染まりきる  作者: シュミ


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3/22

前世

 その夜、私はまた夢を見た。

 いつもの夢だ。

 でもいつもと少し違った。

 鮮明で、細部まではっきりしていた。

 そして理解した。


 これが私の前世の記憶であることを―――。


「花崎さん。この仕事変わりにやっといてくれる?」

「花崎さん。ごめん、今日急用ができて。残りの仕事片付けておいてくれない?」


 前世の私は花崎 香織(はなさきかおり)という名前だった。

 会社勤めのいわゆるOLだ。

 そんな私は社内で嫌われないようにと周りに気を遣い、優しく振る舞うようにしていた。


 その結果、私は社内で嫌われずに済んだ、のかもしれない。だがその代償として私の仕事量は急激に増えた。皆から仕事を押し付けられるようになったのだ。


 そのせいで毎日家に帰った頃には日付が変わっており、私の精神は徐々にすり減っていた。

 そんな私の心の癒しとなったのがゲームだった。家に帰ってpcを起動した時の幸福感は忘がたい。私はゲームの中でも特に物語形式で行うアドベンチャーゲームやロールプレイングゲームが好きだった。


 色々な種類のゲームをやった。

『聖女の願い』という乙女ゲームもその中の一つだ。


 このゲームは<光の魔法>を受け継ぎ、次代の聖女として産まれてきた主人公エルナ・ミセェルがメインヒーローのユリクス・バルハルト王子を始めとする攻略対象たちと学園を過ごし、仲を深めていくというすごく王道な乙女ゲームだ。


 そんな本作で一番印象的だったのは悪役令嬢として登場したアセロナ・ヴィルハートというキャラ。

 彼女はゲームでこう呼ばれている『誰からも愛されなかった悪役令嬢』と。

 言葉通り彼女は誰からも愛されてはいなかった。婚約者や家族にすら。

 過去の彼女は親から理不尽に怒られ、突き放され、と愛情を貰えない辛い日常を過ごしていた。そんな日々の中で彼女は徐々に精神をすり減らしていき、ついには性格が歪んだ。

 ゲームでは『誰からも愛され、チヤホヤされる主人公』に嫉妬し、アセロナは主人公に陰湿な嫌がらせを始める。

 最終的にそれがユリクス王子にバレて断罪されるという流れだ。

 彼女は最後まで家族に認めてもらいたい、という一心で、ユリクス王子を手放したくなかったというだけだった。

 なのに家族は誰一人として彼女を見なかった。

 彼女の弱さに漬け込んで、道具のように扱うのみ。


 何だかあの頃の私と似ていて、アセロナには酷く感情移入をしてしまった。


「花崎さんてほんと扱いやすいよね」

「分かる〜。適当な理由つけて頼めば何でもやってくれるし、最近はそのおかげで残業しなくて済んでるしね」

「あんた最近押し付け過ぎよ。潰れたらどうするの」

「その時はその時でしょ」


 社内で偶然聞いたそんな会話に私の胸は何だか苦しくなった。


 人とは何かを求めるものだ。

 嫌われたくないとか、認められたいとか。

 だが求めれば求めるほどそれは自分から離れてしまう。時には手放す勇気も必要なのだ。

 弱さを見せれば都合良く利用されるだけ。


 前世の私は何一つ断れなかった。

 この会話も聞かなかった振りをした。

 誰からも嫌われたくない、という弱さが自分を傷つけた。


 結果として限界が来た。


 過労死だ。

 ほんと笑える。

 私の望みは何一つ叶わなかった。

 今思えば、あんな人達に嫌われたくないとか思っていた自分がバカらしい。

 気を遣い過ぎるのも、優しくし過ぎるのも良くない。それはただ自分の弱さを誤魔化しているだけ。


 弱い自分にはもう、うんざりだ。


 そこで夢は途切れ、私は目を覚ます。


「そうだ。私、悪役令嬢だったわね」


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